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「ご予算にもよりますが、肉体的、精神的、経済的、社会的な復讐シナリオをご用意できます。復讐の相手は旦那さんだけでなく浮気相手その他も選べます。人気のコースをいくつかあげますと……闇夜で裸族にもみくちゃにされる、コーヒーに塩、パンツに穴、髪の毛にガム」


「それが人気ですの?」


(まるで子供の悪戯だ)


 サラは軽やかな笑声をあげた。


「裏切る者は裏切られる。浮気相手に裏切らせるのも大人気です。美男美女の役者を雇うので、お金はかかりますがね。あと人気なのは事故に見せかけて……まあ言わなくてもおわかりでしょう」


「なんて物騒なんでしょう。おかげで気分がよくなりましたわ。でも復讐をするなら自力でやりますわ。そのほうが絶対楽しいもの」


「それは頼もしい」


「私は夫を憎んでいるわけではないの。復讐は望みません」


「憎んでいるわけではないって? それは寛大だ。では俺をわざわざ呼んだのは、単なる暇つぶしかい?」


 便利屋は松葉のような前髪の間からサラを睨んだ。


「好奇心ですわ。気分を害されたのならごめんなさい。それと相談をしたくて。弁護士さんにはやんわりと受け流されたのだけど。私、取るものも取りあえず邸を出てきてしまったの。着替えもないしお金もない。正直、夫の顔を見たくないので、戻りたくもありませんの。だから、人生経験豊富そうな便利屋さん、相談にのっていただけません?」


「金がないだって。おいおい、勘弁してくれ。報酬のために汗水流して働いたことのない人間は困るぜ。金がないなら……そいつを売るってのはどうだ?」


 便利屋はダチョウを顎で指した。

 サラの手の中で、握りしめていた詩集がメリメリと嫌な音を立てる。


「お金に困ってるからって自分の子供を売る親がいますか!」


 サラの剣幕に気圧されたのか、便利屋は仰け反って肩をすくめた。


「失礼」


「離婚が成立したら多少はお金が手に入るでしょう。トールさんは親切にも報酬は後払いでいいとおっしゃってくださいました。わざわざ来てくださったんだもの、便利屋さんには相談のお礼としてお支払いいたしますわ。今すぐではありませんけれど」


「トールが後払いでいいと言ってるなら、俺もそれでいいや。あいつは昔っから目端がきくからな」


「あら、便利屋さんはトールさんと古いつきあいなんですの?」


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