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幸せとは、なんだろう。
時折、考えてしまう。
ふとした瞬間に聞こえるそれは、いったい何を定義してるのだろうと。
好きなものを食べた時。好きなアニメを見ている時。好きなものに没頭している時。就職が決まった時。お金持ちになった時。恋が実った時。
ただ、それは本当に幸せの一言だけなのか。
純粋な幸せって…。
考えれば考えるほど、馬鹿らしくなって。いつもその考えは放棄している。
…幸せなんて、ない。
そんなものないから、俺の親は死んだ。目の前で、殺された。そして俺は、それをタンスの中から見るしかできなかった。
だけど、俺はまた考える。
幸せとは、なんだろう。
聖栄高等学校附属聖栄中学校。国内有数ともいわれている中高一貫の名門校。別名「ダイヤモンド中学」
…誰だこんなガキみたいな名前つけたのは。
まあいい。ともかく、このダイヤモンド中学は職業適性を見つけ伸ばすことに特化している。
入学すると、適正テストが行われ、適正にあった教育がなされる。
俺__夢原海斗は「アイドル」の適性を下された。こんな根暗のどこにアイドルの適性があるのだろうか。
ともかく、そんなこんなで。この学校で卒業までアイドルを目指し、勉強をすることになった。
そんな生活も早1か月。生活に慣れ始めた休日。
休日も何かあったらいけない、という学校の方針で、休日もこの学校の敷地内で過ごさなきゃいけないので、校内に建てられているゲーセンで暇を潰していた。
「…難しいな」
円形のリズムゲームに想像以上に苦戦していると
「ねぇねぇ。ちょっといい?」
「はい?ってちょっと!」
いきなりやってきた女の人に急に引っ張られた。まだプレイ回数を残した筐体を残し、あえなく俺は外へと連れられて行った。
「ちょ、どこまで行く気ですか?」
「ん~…こんなもんでいっかな」
そういうと彼女は腕を離し、俺のほうを向いた。
モデル顔負けの顔をしていて、走っているときにもなんとなく感じていたが、とんでもなくきれいな体をしている。だけど、服は着崩され、カバンにはゴロゴロとアクセサリーやらちっちゃなぬいぐるみやらがつけられていた。
さっきのフランクな話しかけと言い。ギャルそのものだった。
「ねぇ、もしかして君、一年生?」
「あ、はい…そうですけど…」
「それで、名前は…夢原海斗?」
言葉が詰まった。
唐突に。俺の心の動揺をあぶり出した。
「…どうして…」
「あー!やっぱり!へへ、なんか、照れるなぁ…」
そう言いながら彼女はモジモジとし始めた。
「…とにかく、用があるなら早く行ってください。その後で通報するんで」
「えぇ!ひっどぉ。まあいいや」
彼女は大袈裟なリアクションをしたあと、一枚の紙切れをポッケから取り出し、俺に渡してきた。
「…?これって?」
そう聞くと、彼女はまっすぐと。まるで成功を確信したかのような眼差しで
「婚姻届!結婚しましょ!」
これが本当に最初の。彼女との出会いだった。