夏の終わり
日常。
猫になりたい。
縁側で、揺れるカーテンを視線で見つめながら、窓から入ってくる生ぬるい風を感じて、私はそう思った。
体を起こし、カーテン越しに見えていた塀の上にいる猫は、大きなあくびをしている。
どこかへ行く途中なのか、猫はひらりと塀から飛び降りるとどこかへと行ってしまう。
私はそれをじっと見つめながら、大きくため息をついて床へごろんともう一度寝っ転がった。
外からはセミの鳴き声が聞こえ、汗が自分の額から流れ落ちるのを感じた。
節電。
もうすぐ夏が終わるだろうから、暑さは和らいできたようには思う。ただ、まだやはり夏は夏で、これが夏の終わりだというのなら、どうして汗が流れ落ちるのか。
天井を見上げていると、木目が人の顔のように見えてくる。
いったい何人いるのだろうかと、顔に見える木目を数えてみるが、暑いものはやはり暑い。
「あっつい」
体を起き上がらせて、縁側の窓を閉めてエアコンのリモコンを探すけれど、見当たらずに少しいらいらとしながら探し、見つけ出すと、スイッチを入れた。
冷蔵庫からアイスを取り出し、ソファに腰掛けながらアイスを食べる。
すぐに食べ終わってしまうから、もう一つ食べたいと思うものの、私はお腹をさすってアイスのごみをゴミ箱に入れる。
テレビをつけると、面白い番組もなく、スマホへと視線を向けるが、私はスマホは机の上に転がして、また縁側にごろりと横になった。
涼しい。
天井を見上げると、先ほどの顔に見えた木目がどこか楽しげであった。
「にゃー」
視線を外へと向けると、また塀の上に猫がいた。ただ、今度は二匹いた。
可愛いななんてことを考えていると、どうやらフラれたらしく、一匹の猫に威嚇され、そして顔をひっかかれてから逃げられた。
その時、その猫と視線が合った気がした。
「……猫じゃなくて良かった」
涼しい部屋の中、瞼を閉じる。
遠くから聞こえる蝉の声を、心地よく感じた。
夏も、もう終わりですね。