第二王子、目標を決める(仮)
俺はトラックに轢かれて死んでいた。
確かその日は雨が降り、信号を待っていたはずだった。
後ろの女子高生たちがキャイキャイとはしゃいでおり、うるさいなあとは思いつつ、信号が青になるまで待っていた。
だがドン、と後ろから押された。
「あっ…」
という女子高生の声。
なんというか、まあ。運はなかったし、人が沢山いるのにも関わらず、過度にはしゃぎすぎた女子高生も悪い。
突然とび出てしまったし、路面が濡れていたし。当然ながらトラックは停められるはずもなく、あっという間に轢かれた。
ああ、これで転生したら面白いのになあ、とどこか他人事に思いながら、俺は意識を一瞬で失った。
─どうもその考えはシャレにならないと、教えられた。
おはよう、俺。おはよう、知らない人。
ここはどこだろうか。俺は奇跡的に生きていたのだろうか。でもどう見たってここは病院ではないし、知らない人…というかとても日本人では無い見た目の女性が笑顔で語りかける。
「かあさま、おめでとうございます…!」
「ありがとう、アル。この子が、貴方の弟よ」
「弟…!」
どうやら俺は死んだらしい。多分あの様子だと俺は即死っぽい。さっき運がないとは言ったがまじであの女子高生許さん。
俺はそこまで性格は良くない。むしろ悪いと言っても過言ではない。
まだ未クリアのゲームも、漫画も、課題もあったのに。
ああ、スマホの履歴というか本体ごと吹っ飛んでくれただろうか。吹っ飛んでくれたら嬉しい。消えなかったらまじで恨む。
というか二人とも顔面偏差値高いな。これだけ顔面偏差値高いと俺の顔面偏差値はさぞかし高いだろう。
そして祝福ムードの中水を差すようで悪いが、父親どうした。仕事中か。それとも…いや、勝手に殺すのはやめよう。
「かあさま、名前は決まっているのですか?」
「そうね…」
お、名前か。なんか随分と金持ちっぽいし、仰々しい名前がつきそうだな。
「ベルフェロード・ヴァン・バルデアだ」
「とうさま!」
やっと父親来たな。うわ、髭が立派なこと。
名前も仰々しいし金持ちかな。うん、金があるのはいいことだ。
…父の手が頭にのせられる。何をしているのだろうか。
「やはり勇者の適性はアルの方が高いか」
「貴方…」
「…恒例通り、アルは次期国王に。ベルは…ふむ、成長して適性次第で決めよう」
「………」
王子だった。しかしこの父親、反応が薄い。
まるで興味が失せたかのように、すぐに出ていかれた。
空気が重い。この家庭、というか王族というのは複雑で、面倒くさい。それに、父親になったとはいえ、あの言い草はとてもムカつく。
今に見ていろ、俺は今から騎士団があるなら騎士団長になってやる。この国で一番、強いやつになってやる。
「あうあう、あー!」
「あらあら、ふふ…」
まあまあ、見てなさいお二人共。
今は赤子の声で元気だしなさい。勇者パーティでいうアタッカーになってあげるから、な。
とりあえずあのオヤジムカつくのでまず見返すことから始めようか。