社交界にはもう出たくないわ。(後編)
王族お気に入りの平民は狙われ易いみたいです。
……どう追い返そうかなぁ。
良し、アレで行くか。
「何?」
「デリア殿下は、言っておられたわ。」
「何をです?」
「理想の令嬢についてです。」
「……それは?」
良し、食いついたわ!
「2人が並んだ時、令嬢の目線が自分の喉辺りが良い、と。」
「え?」
「また、身分なら侯爵家が良い、と。」
「ええ?」
「また、外見で言えば細身が良い、と。」
「えええ!」
「また、お顔は綺麗系が良い、と。」
「う……」
「また、纏う空気は凛とした者が良い、と。」
「うう……」
「また、弱き者を守る慈悲を持つ者が良い、と。」
「はう……」
「また……」
「……も、もう、良いですから。」
「では、最後に1つ。『既に女神は我が手に。』と、言っておられましたわ。」
「はうぅ……きゅぅ。」
「リリカーナ様! お気を確かに!」
取り巻き令嬢達がリリカーナ嬢を運んで去って行ったわ。
……勝ったわ!
これぞ、誉め殺しよ!
……でも、聞いた内容の1割も言えてないけどね。
身体中の糖分を吐いたから、逆に甘い物が欲しいわね。
「はい、サラ。」
「アーク。」
「適当に選んで来た。」
そう言いながら、アークは私が欲しい物を持って来てくれたのね。
「ありがとう、アーク。」
「どういたしまして。」
まあ、良かったわ。
場合に因っては、周り中が聞いている状態で罵倒されるって、流れの冒険者も言っていたし、本当に良かったわ。
「リンもセレスも静かね。」
「サラ~。私達が参加する意味が有ると思う?」
「……無いわね。」
「サラ様。セリアだけでも来ると思っていましたが来ませんね。」
「ああ。セリアはまだ特定の相手が決まって無いのよ。だから……」
「貴族の令息が群がって此方に来られないのですね。」
「そう言う事。 ……ちょっとお花を摘んでくるわ。」
ふぅ。
さて、この後はどうしようかしら?
「君がサラディアナ=レイアースか?」
「そうですが、どちら様で?」
「僕は、ヘルンダル伯爵の次男ドキユンナだ。」
「それでご用件は? まあ、大した用件だと思えないけどね。」
「何!」
「なんせ、この様な場所で待ち構えているのだから。」
「くっ、平民如きが生意気な。」
「おい! もう言いだろう、ドキユンナ?」
「どういう事?」
「お前、エルセリアと仲が良いらしいな。」
ああ。
私を利用してセリアに近付こうとしているのね。
それにしても、この国の貴族の者が、この国の王女を呼び捨てにするなんて、まともな教育を受けていないわね。
「へへ。お前の身体を教育して、エルセリアに近付ける様にして貰うぞ。」
「おい! オレにも廻せよ。」
「ああ。僕が済んだ後だぞ。」
この人……、いや、コイツらは、国王の話を聞いていないの?
私は、貴族令嬢じゃなくて、平民ではあるけど冒険者なのよ!
「たっぷり可愛がってやるぜ。」
「はぁ、有罪。」
「は? 何を……」
「ぎ、ぐはぁ!」
「ぐふぅ!」
「はい、終わり。」
流れの冒険者に最初に教わったのは、魔法でも剣術でも無く、体術なのよね。
だから、こんなフォークより重たい物は持った事が無い様な、こんな馬鹿共なら、ドレスを着た私でも充分だわ。
あら、騒ぎを聞きつけて、警備兵が来たわ。
後片付けを任せて私はアーク達の所に戻りましょうか。
勿論、警備兵には、コイツらがセリアを呼び捨てにしていた事も密告したわ。
「遅かったな、サラ。」
「ちょっと、貴族の令息に声を掛けられたの。」
「そうか。」
「妬ける?」
「全然。」
「つまらないわね。」
「サラがそんな安物に惹かれる訳が無いからな。」
「そうだけど~。」
「はいはい。サラもアークもイチャイチャしない。」
「分かったわ、セレス。」
そんな事を話していると、イケメン、高身長な貴族令息が1人で来たわ。
「初めまして。私はアーザゼール伯爵の長男メタトーロです。」
「初めまして。サラディアナ=レイアースです。」
この後、取るに足らない雑談が続いたけど、何かの拍子にメタトーロの持っていたグラスが手から離れ、私のドレスにグラスの中身が掛かった。
「申し訳ありません。直ぐに対処しないと大変な事になります。」
「大丈夫です。このドレスは……」
バチィ!
「きゃ。」
「え?」
「……はぁ。どうしてこうも連続で起きるかな。」
「何を言って……ぎ、ぎゃあ! 何をするのですか! 手を離してください。」
私は今、先程まで話していた貴族令息を床に叩き付け取り抑えている。
周りは色々と言っているが、無視した。
何故なら、私が抑えているのは、重罪を犯した者だから。
騒ぎを聞きつけて、警備兵が来た。
あら、婦女暴行犯を連行した人だわ。
この警備兵もまた貴女ですか、という顔をしているけど、私は悪くないわ。
私が原因だけど……
「今度は何があったのですか?」
「この男が、洗脳か魅了系のスキルか魔法、もしくは魔道具を使ったわ!」
「何!」
「私はそんな物は使っていない。私は、彼女のドレスを汚した事への謝罪と対処をしただけだ。」
「こう言ってますが?」
「このドレスは確かに普通のお店で作って貰ったけど、このドレスには、幾つかの耐性を付与して貰っているのよ。最も強く耐性の付与を掛けているのが、『洗脳と魅了』よ。」
私がこう言うと周りは更に騒がしくしていた。
「な! 嘘だ! こんな平民にそんな付与が出来る金を持っている訳が無い!」
「貴方はこの国の歴史を学んでいないの?」
「どういう事だ?」
「改めてもう1度自己紹介するわ。私は、『サラディアナ=レイアース』よ。『レイアース』という名前に聞き覚えが無いのかしら?」
周りも、「何処かで?」とか、「聞いた事がある?」とか言っている中で、「あっ!」と言う声が上がり、「スタンピードからこの国を救った英雄の中の召喚士の名前だ!」と言い、周りも「そうだ!」と思い出しているみたいね。
「そうよ。私は、レオンハールとレイチェルの娘、サラディアナ=レイアースよ! だから、付与もその英雄にして貰ったの。」
私がそう言うと、諦めたのか、貴族令息は大人しく連行されていった。
翌日
「サラ、ごめんなさい。」
「全くよ、セリア。」
「私に群がる連中が私を離してくれなかったのよ。」
「お陰様で、貴族令嬢が味わう修羅場を幾つも経験したわ。」
「本当にごめんなさい。」
「社交界にはもう出たくないわ。」
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この世界では、洗脳や魅了の魔法や魔道具を使える、所持するだけで、貴族なら本人は爵位、身分返上の上、使えない様にして鉱山労働送り。




