アーク様。見ていてくださいね。
侯爵家よりまだ上が有るのにな。
移動中だけど、さぞかし馬車の中では、アークは困り果てているんだろうなぁと思っている。
今は、以前とは違う「餌の要らない猫」を飼っている。
大丈夫かな?
アーク、我慢出来るかなぁ?
「大丈夫よ、サラ。」
「……セレス。」
「アークがあの小娘に靡く訳無いわ。」
「あ、そっちは気にしてないわ。」
「……ご馳走さま。それなら、何を気にしているの?」
「エレンの猛攻に怒りを我慢出来ているのか、にね。」
「ああ。そっちね。」
こうして、アークの忍耐力が保つ内に到着しないかなぁと思いながらセレスと雑談していた。
1時間後、次の目的地の森に到着した。
此処からは、馬車が使えないから徒歩になる。
流石のエレンも先程まで飼っていた猫を捨てる訳にはいかないみたいで、きちんと冒険者系の服に着替えている。
勿論、アークは着替え中は外にいました。
「アーク様。見ていてくださいね。」
「あ、ああ。」
「お疲れ様、アーク。」
「サラ。アレが普通の『貴族令嬢』なんだな。」
「そうね。堕したい男性にはあんな感じよ。」
「俺、初めて貴族の男性を尊敬した。」
アークとそんな事を話しながらの護衛だけど、余分な邪魔は先行組がやっているから、すんなりと目的地に到着した。
そこはある程度は開けていて、奥には洞窟が有って、その出入口で、標的「白銀魔狼」が唸っていて、左後ろ足が罠に掛かっているし、鎖にも繋がっている為に逃げる事も出来ない様ね。
そして、やはり、エレンは嬉々として殴り殺して討伐した上に、少女の涙を流しながら、アークに抱き付く。
「アーク様ぁ。とっても怖かったけど、アーク様が見てるから頑張りましたぁ。」
「あ、ああ。お疲れ。」
「アーク様に言って貰えてとても嬉しいですぅ。」
更に上から目線のドヤ顔で私を睨む。
……アレは、私からアークを「奪ったどー!」って事かしら?
「サラ様、何時まで我慢しないといけませんですの?」
「もう少しの辛抱よ、リン。」
周りは、お嬢様の我が儘から兎に角、早く解放されたいのか、手際良くお片付けをしている。
そして、エレンの湯浴みと身嗜みに掛かった1時間後に、やっと撤収。
王都に到着した私達は、終了の手続きを済ませ、帰宅。
2日後に冒険者ギルドから呼び出しをくらった。
「此方に来る様に言われたのですが?」
「悪いな。ギルドが冒険者の情報を第3者に教える訳にはいかないからな。」
「どういう事です?」
「ある貴族が来られて、サラ達の事を教えろと乗り込んで来てな。結局、『本人達を呼べ!』と言われて仕方なく呼ぶ事になったんだ。」
「分かりました。」
まあ、あの貴族令嬢でしょうね。
「そうか。案内を出そう。」
ギルド職員が私達の前に来て「此方です。」と言われて付いて行くと、2階の応接室に通されて、開けた途端に……
「アーク様。会えなくて寂しかったですぅ。」
「エレンや。会えて嬉しいのは分かるが侯爵令嬢として端ないぞ。」
「はい。お父様。」
「初めまして。侯爵家当主のサイゼシラ=バルア=ヤーナルダだ。」
「Cランク冒険者のサラです。」
「アークです。」
「リンですわ。」
「セレスよ。」
お互いに席に着いた所で侯爵が口を開いた。
「早速、本題に入ろう。先ずは先の護衛の件、ご苦労であった。」
「ありがとうございます。」
「さて。その時、どうやら、娘が其方のアーク殿に思いを寄せているのだ。祝福して欲しい。」
「お断りします。」
「何故だ! 冒険者には過ぎた話だろうが!」
「それでも、お断りします。」
「……そうだな。抜けた穴を補充する必要があるな。金貨1枚くれてやろう。どうだ! これで文句は無いだろう!」
「お金の問題ではありませんから、お断りします。」
「もう良い! アーク殿も、こんな女よりも、我が娘の方が美しい。そして、侯爵家が後ろ楯になるし、薄汚い冒険者なんぞをする必要が無い。どうだ? 賢明なアーク殿なら分かるだろう?」
「そうですぅ。私の方がそこの醜女よりも遥かに美しいですわ。それにあの程度の魔法ではアーク様の足手まといですわ!」
「嫌だね。その女が、サラより美しいだって。目玉に幻の万能薬を使ったらどうだ。多少はマシになるだろうよ。」
「アーク様、酷い。」
「ぬぅぅ。侯爵家を蔑ろにし、更に愛しい我が娘を馬鹿にするなど、もう我慢ならん。我が侯爵家の力で潰してくれるわ!」
「アーク様も、その醜女が汚ならしく穢されれば目が覚めますわよね。」
「……はぁ。」
「どうした? やっと自分の卑しい立場に気付いたのか?」
「いいえ。其方が貴族としての権力を振りかざすのであれば、私も権力を使いましょう。」
「たかが、Cランク冒険者の小娘がどんな権力を持っているのだ?」
「醜女は、どんな時も醜いですわね。」
「私の後ろ楯は、王家と宰相に、王都にいるSランク冒険者の『英雄』達です。」
「馬鹿な! たかが小娘が、直ぐにバレる嘘を言うな!」
「信じる信じないは、其方の自由ですが、事実の場合は、どうなるか分かりますよね?」
「ふん。大きく出たな。『王族』などと。」
「違います。『王家』です。」
「……エレン。一旦帰るぞ。」
「お父様!?」
傲慢で馬鹿な父娘は、冒険者ギルドから立ち去った。
「権力と金でしか判断出来ない馬鹿貴族達は消え去ったわ。」
「どうするんだ、サラ。」
「勿論、誰彼構わずに噛みつく狂犬には首輪と鎖が必要よ。」
早速、私は、この国の王女エルセリア殿下こと、セリアに手紙を送った。
そして、最後にこう綴り締め括る。
「私達の安全が確認出来ないと、安心出来ず貴女達に預けている『宝』を戻さないといけません。」
……と。
2日後に、とある侯爵家から他国の裏の繋がりが発覚して、除籍となり平民に堕された。
本人達は否定しているらしいけど。
私は、そう風の噂で聞いただけ。
ただ、セリアからの手紙には、「狂犬の駆除は終了しました。このまま、『宝』は預かっています。」
……という内容だったわ。
さて、次はどんな冒険が待っているのかな?
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。
作者的な認識
王族→そのまんま
王家→国王の公的な権力・権限込み




