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作者: 拒食


彼を理解することは、私にはついぞ叶わなかったのである。

彼がいない今、私は彼の偶像を追うばかり。蒙昧鬱屈とした世の中を意味もなく唯だひたすらに、つれづれなるままに過ごしている。


"彼は何を思っていたのだろう"


それが私の心の底からくる疑問となっていたのは、つい最近のことだった。はじめは簡単な出会いだった、しかしそれは私に鬱屈とした、未来にあえぐ青年の心を鏡写しに伝えるものにしか見えなかった。彼は凛々しい顔立ちをして、様相を伺おうとしてもその頑強な顔にひれ伏すーただそれだけのことしか道筋を見せてはくれない。その顔は泣いていたのだろうか? 知る由もないことである。


彼は見た目より、心が強くはなかったのかもしれない。自分をメヂアのヴェールにくるんで本性は闇の中に消えていった、個人というものが全く見えない彼は彼が彼たる所以をメヂアに求めることで人生を送っていたのではないかとすら考えられる。メヂアとは、不可解なもので。人間個性を虚飾に塗れたものにするだけで、ある一定の評価は得られるようなものなのである。俳優は監督の傀儡になることで生きながらえるように。


私は彼を探しに北に行こうとした、しかし北は灰色のヴェールに収まり湖面には何も映らなかった。そう、彼の投影しようとしたものではない偶像さえ、私には姿を見せようとはしなかったのである。私の前に現れてはくれなかった北に、何を思っていたのだろう。


焔はなぜかうも盛るのであろう。元手がなくなれば散るということがわかっていようものなのに。なぜ人は焔に何かを思い、美しいとすら思えるのだろう。バラのようなものなのだろうか。そしてなぜ、人は焔に救いを求めるのだろう。


つらつらと書いたこれは、私の思いそのものである。

自身を訓戒し彼という偶像を追う或る人間を戒めるものである。

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