ツキハとユルの冒険①
「炎の神よ我が魔力に宿し力を与えよ。インフェ!」
ゴオオオオと音を立て私の手から炎の玉がユルさんに向かって、飛んでいくが、あっさりと炎の玉は氷漬けにされ撃ち落される。
「まだまだ!」
私は炎の初級魔法を連発するが、ユルさんは氷の上をすべるように今度はすべて交わしてしまった。その瞬間に私はユルさんに近づき命中を重視した攻撃を繰り出そうとするが。いつの間にか足元が氷で固められ、滑って尻もちをついてしまう。
「たはぁーまた一発も当てられませんでした。」
「いいえ。芹沢さんは貴方は十分強くなっていますよ。今なら地球上最強といっても過言ではないでしょう」
確かに手から炎を出す人間なと普通に見たことなどない。この状況を見つかったら人体検査などされそうで何となく怖い。私の髪色は生まれた時から赤色だった。赤色が嫌いなわけではないが、小さいころはよく男の子にからかわれたりしたっけ・・・その時助けてくれたのがハルだった。
また今回も助けてもらってしまった。
次は私が助けに行く番だ。と決意しまたユルさんに再戦を申し込むが、拒否られてしまう。
「芹沢さん貴方は十分強くなりました。これなら私の世界に行っても問題ないでしょう。」
「でも急なんで私が魔法を使えるようになったんですか?」
訓練を初めて3日目私はなにも考えず強くなることだけを考えた。放課後毎日ユルさんのところに尋ね、戦闘を繰り返す。最初は炎すら出せなくて、手が輝くだけだった。
「魔法適性がもともとあった芹沢さんは、こないだの魔道具の影響で目覚めたからです。もともと眠っていたものが無理やり起こされたみたいのものですわ。因みに貴方の強さはこの国の戦艦一隻に匹敵する力を既に手に入れています。」
「だとしても、まだまだユルさんにかないませんね」
私は自重気味に笑った。というかそこまで強くなったという実感もあまりないので、何とも言えない。
「ユルでいいですわって言っても聞かないでしょうね。まあいいですわ。今日はもうやめにしましょう。こちらの世界の魔道具は回収し終わりました。次は私たちの世界の犯人を突き止めるのが目標ですわ。」
ユルさんはさらにと付け加える。
「私たち人族はいま魔族と交戦中です。といってもどちらも様子を伺っている状態でいつ戦争が起きるかわかりません。ほかの種族は関与していませんが、交渉次第で人族の協力を煽っています。」
「魔族は悪い人たちなんですか?一応どちらがって別にユルさんを疑っているわけではないですけど。」
「魔族はこの地球を発見し、支配しようとしています。人族でも極秘で地球を見つけました。まあ私と他もろもろですわね。私たちは別に地球を支配しようとは望んではいません。私は、魔道具回収の任務でこちらの世界にきたのですから。」
まあだからと言って、地球の方々と交流するかとしたらしないですけどね。とユルは付け加える。
「で、私はいつ出発するんですか?家族にも連絡をしなくちゃいけないし、それに学校も・・・」
「その辺は私にお任せください。でも本当にいいんですか?別に協力は強制ではありません。まあこちらでは手伝ってもらいましたけど。」
ユルさんは手に魔道具をちらりと見せながら私に問う。
これ以上流れてこないようにする結界を張る魔道具を偶然入手したのだ。
流してる本人がこれを地球に流したと思うと、少し頭がよくないのかなと思ってしまうが・・・ユルさん曰くこれは挑戦状ですわ!といきり立っていたので、まあ良しとした。
「はい、次は私がハルを助ける番ですから。」
「・・・芹沢さんはあの方がお好きなのですか?」
「だ、断じて違います!!ありえないです!下品で卑怯でずる賢くてちょっと顔がいいくらいで調子に乗っているあんな馬鹿好きじゃないです!義理ですよ!義理!」
「そ、そうですか。あの、そんな悪く言わなくても一応彼頑張っていると思いますし。」
「いーえ!どうせどこかの女の子に鼻の下伸ばして、ナンパでもしてるんじゃないですか?」
「芹沢さん。焼きもちやいてるんですの?」
「違います!!!!」
そんなわけない!断じて。あいつにそんな感情抱いたことなんんて一切ない。
「一応二人には仲良くして欲しいですわ」
「なぜですか?」
「ふふふ、機密事項ですわ。」
ユルさんは見た目とはかけ離れた妖艶な笑みを浮かべる。なんかこの人楽しんでないかな?
「では早速ですが、二日後出発です。それまでに準備といっても別にないですわね。」
「ご家族には私の魔法で・・・というかハルヤさんのご両親のこと忘れていましたわ!」
「・・・そこは大丈夫だと思います。ハルはいつも家に帰らないことが日常茶飯事ですから。1、2ケ月いなくなっても別に気にしないと思いますよ。」
「そうなんですの?よくわかりませんね。」
「とりあえずご両親には海外留学として、話を私が通しますね」
「わかりました。」
後日クラスメイトにはユルさんが説明をし、手続きなどはいろいろしてくれた。余談だが青山先生は悪事が完全にばれ、退職という結果になったのだ。
ハルはほぼ学校に来ないので、クラスメイト達は疑問に思わない。
なぜか高良君がロリ神?とか訳の分からないことを呟いていたが、気にしなくて大丈夫だろう。
そして私の家族だが、お父さんが泣きながら嫌だとだだをこねた結果お母さんに引っ張られ、行ってらっしゃいと笑顔で送り出してくれた。まあ海外留学の特待生ということで通してもらっているから、頑張ってということになった。騙しているようで申し訳ないけど、ハルを見つけるため、ユルさんの手伝いをするために心に決めたことだ。ついていくことにする。
出発当日、私はユルさんの理事長室へ向かう。そしてノックをし返事が返ってきたところで扉を開けた。
「ご機嫌よう芹沢さん。いえツキハさんこれから出発の前に替えの理事長を準備しませんとね。」
といったところで光とともに男の人が現れた20代後半くらいだろうか、全身スーツで現れサングラスを外すと、整った顔立ちの青年が誕生した。
「ユル様今日のご機嫌はどうでしょうか?」
青年は跪きユルさんの方を向く。
私は疑問に思い、青年に問いただした。
「あの、すいません失礼ですが貴方は誰なんですか。」
「申し遅れました。私は大賢者ユル様の付き人。レオリオ・クラウスと申します。気軽にレオと呼んでください。ツキハ様貴方のことはユル様から聞いております。この学校の治安は私めが守りますので、ご安心を。」
ユルさんが嫌な目でレオさん?の方を向く。
「派遣されてきたのは、貴方でしたのね。めんどくさいですわ。というか私の素性を勝手にばらさないでくれません?」
「そ、その冷たい目!体の芯から凍ってしまいそうです!ありがとうございます!!」
なるほど、関わってはいけないタイプだろう。
私も一歩後ずさりをした。
「ツ、ツキハ様もなかなかの鋭い目つき、そして勝気な性格と見ました。そしてロリなんということでしょう。ありがとうございます!ありがとうございます!ついでに踏んでいただけだ、フゲェ。」
ユルさんが頭を抱えながらレオさんを気絶させた。
「一応優秀な人材ですが、性格に難ありですから気を付けてくださいね。」
「わ、わかりました。」
怖い、異世界怖い。
こんな人が沢山いたらどうしよう。
「そういえばユルさんの大賢者というのは?」
「・・・まああとで説明しますわ。とにかく行きますわよ。向こうの世界についたら、まずはハルヤが生きているか調べましょう。」
ではというと理事長室に光の扉が浮かび上がり、そこをユルさんと同時に入る。
猛スピードで飛ばしている車のGのようなものを感じながら、次の瞬間。私は見たことのない世界にいた。
中世のヨーロッパを想像させるようなお城その一室にいたのだ。それはユルさんも同様で、なにやら魔術を唱えている。
「ハルヤは生きてますわね、ただだいぶここから東の方に飛ばされたようですわね。まさかウィーネの森とかではないでしょう。だとしたらちょっと緊急事態ですわね。」
「え!?ハルは危険なところにいるんですか!?」
「ま、まあそうと決まったわけではないです。とりあえずハルヤの捜索を先にしますわ。」
私、芹沢月羽は絶対に助ける。今度は借りを返す番だ。そう心に誓った。でもなぜかいまイラっとしたのは何故だろうか?
その時、ハルヤはメロリアに誘惑をされていたということは彼女は知る由もない。
月羽ちゃんとユルちゃんも異世界突入です。
番外編みたいな感じでちょこちょこ入れていこうと思います。