10話 魔道具の必要性
陽哉失踪事件が起きる二日前、私は彼を理事長室に呼びました。
だるそうに来る彼を見て私は少しめんどくさいなぁと思ってしまったのは内緒です。
「で、なんのよう?」
意外も意外、彼はちゃんと約束を守るタイプのようです。まあ脅し(ミサンガ)の件もあると思いますが…
「さて、どこから話せばいいでしょうか、まず貴方と私は違う世界の人です。」
説明しようとすると案外難しいですわね。
「あーそうですか。はいはい」
なぜ彼はこんなにも興味がなさそうなのでしょうか。
では話の本題に入ることにしましょうか。
「私たちの世界では魔法や魔物そして魔族色んな種族が住んでおり、それはもう平和に暮らしていました。
しかし、ある時、魔族の王魔王と言えばいいのでしょうか?がこの世界地球という存在を発見したのです。
もともと人類と魔族の中はピリピリとした状況で、いつ平和が壊れるかわからない状況でした。そんなある日
魔族なのかそれとも人間なのか知りませんが、向こうの世界にある魔道具をこの地球に流す方法を見つけたのです」
「それがこのミサンガとかなのか?なんで?地球でも支配したいのか?」
意外です、彼は馬鹿なのか頭がいいのか?察しがとてもいいですわね。
「そう、話が早いですわ。その散らばった魔道具の回収のために私はこの世界に転移する方法を見つけ出しました。」
「魔道具でか?」
「いえこれは別の方法です。この世界と異世界を通じる扉を見つけたのです。」
「それがこの扉ヶ丘学園ってこと?まあ扉って時点で変な名前だと思っていたしな」
「ええ、そこまで理解しているならば話が早い。貴方喧嘩得意なのでしょう?」
「俺は負けたことないね」
「そこで貴方は私たちの世界、異世界にいっていただき犯人を突き止めてほしいのです。向こうの世界は今殺伐とした状況のに陥っています。そう魔法適正が少し高い貴方に…」
彼はあくびをしながら話を聞く。
そう思っているのだろうか?
「いいよ」
は?いまなんて。
聞き間違いでしょうか?
「だからいいよって言ってんじゃんはやくとばせよ」
「いやいやいや!そこはちょっとは躊躇するところでしょう?ごねるタイミングでしょう!?」
「どっちみちガッコーなんか行ってるよりそっちのほうが楽しそうだし、喧嘩しようが退学にならねえし、その辺はユルが何とかしてくれるんだろう」
と彼は言い残し足首についたミサンガをぶち破った。
「これが爆発することもどうせ嘘だろう?どんだけ学校に被害が出ると思ってんだ?」
いとも簡単にミサンガをちぎってしまった彼にはやはり適正があるのでしょうか。
というか馬鹿なのかアホなのか…私のハッタリは通じないのでしょうか。
「まあこのミサンガもどうせ位置が分かるとかなんだっぺ。そういう魔道具なんだろ」
「…正解ですわ」
無理やり力で外れるものではないもしかしたら彼は本当に…
「で、何いまからお前と行くの?」
「それはできません私はこの世界の秩序を守るため流れてくる魔道具を回収する作業に当たるので、貴方には一人で行ってもらいます。」
「それでもよろしいのですか」
「だからいいよっていってんじゃんアホかお前」
むきーー腹立ちますわ。この男!察し良すぎだろ!!言葉遣いもあれるわ!!!
「てか魔道具が散らばるとどうなるんだ?」
「適性がないものが無理やり使うと、寿命が奪われ死に至りますわ」
「ぞれをお前だけで探せるのか」
「ええ、魔道具が流れてくるのはこの扉ヶ丘学園だけですから、先ほど言ったようにこの学園は特別なのです」
「てかどうやって魔道具って探すだヨ。人に聞いて回るのか?」
「いいえ私の魔力探知スキルで探していますが今のところ流れてきたのは一個。もう誰がもっているのかを突き止めていますわ。ただし、誰にも見られないように奪うしかありません。」
「さらに魔道具を無理やり使うと心の底にある悪の心が増幅し、この世界の秩序がおかしくなってしまします。」
私は適正がないとね、と続けます。
「お前はなんでそこまでこの世界を守ろうとするんだ?」
「………」
「あっそまあいいやで、いつ行くの?」
「貴方、青山先生の授業中寝てもらえますか」
「いつも寝てるけどな!」
自慢げにいうこの彼はやっぱりドアホですわね。
「なら話が早いですわね、さっそく二日後ミッション結構ですわよ!ってこら!また勝手にティーポッド使ってカップラーメン食べないでくださらないかしら!!!」
-------------------------------------------------------------------------------------------
「ということがありまして遅かれ早かれ彼には私たちの世界に行ってもらうことになっていたのです」
私月羽は二日前の状況を聞いてなんとなく理解した。
でも私囮にされてたってわけで気分があまりよろしくない。
「私のこと囮にしたってことですよね」
「それに関しましては申し訳ございません。彼の教育係と聞いてましたので、そして適正のある貴方にも手伝ってほしかったので。」
「そもそもなぜあの青山先生は魔道具の使い方が分かったのでしょうか?」
「魔術の干渉の強さがなくてもパズルのように一致するときがあります。そのため、使い方が何となくわかったんでしょうね」
ユルさんは理事長室の引き出しを開け黒いミサンガを取り出した。
「これはもう使ものになりません。作成者の魔力も消え去っていますしポイですわ」
と言って、、ユルさんはゴミ箱に捨てた。
何となくもったいないような気がした私もいたが、向こうの世界ではそんなものなのだろう
「で、これから私は何を…」
「本当は貴方にも向こうの世界異世界に行ってほしいのですが、まだ完全ではありません」
「私と訓練しましょう」
「訓練とは?」
「魔力のコントロールです、魔力は実は女性のほうが高いのです。なので私の氷の魔法も魔道具を使っていません。魔道具というものはあくまでも使用者の補助、魔法力の底上げなのですわ」
「貴方のその紅の髪はそうとう訓練すればやっていけますわ」
「ではさっそく放課後またきてくださいな」
と言い残しユルさんのところを後にした。
ハルは生きているそう信じている。奴ならハッタリと卑怯で何とか乗り切ってるだろう。
あたふたしているハルを想像してクスッと私は笑った。
一応第一章終わりです。
次から第二章が始まります。