坂上妖怪屋敷1.5
さて、どうなるのでしょうね。彼は。
明日は青い月の夜。月に一度だけ、表と裏の世界が繋がる日。
その夜に紛れ込めるのは、妖怪を信じる者だけ。
「鈴鹿」
「どうされました、田村麻呂様」
「いやあ、彼はどうなったかと思ってね」
「興味はあったみたいです」
「そうか。さすがは私の子孫だな。人ならざる存在に惹かれるようだ」
そう言いながら、物に触れることのできない手で私の頭を撫でてくださる。
それだけで私は万足していた。
本音を言えば、昔のように抱き合って色々なことを語り合いたい。
それでも、彼は人間だから。私と同じ時を生きることが出来なかったから。
「もう私の魂は残り少ない。だが私が居なくなった時、この屋敷を管理する者が必要だ」
「解ってます」
けれど、やっぱり私は割り切れない。
だってそうでしょう。好きな人と二度と会うことが出来なくなるのだ。姿を見るどころか、声を聞くこともできなくなる。そうと解っていながら、この人は私にそれを受け入れろと言うのだ。
解っている。頭では解っていても、心がそれを受け入れる事ができない。
「鈴鹿」
「はい」
「お前と共に過ごした時間、とても楽しかった。願わくば、永遠にその時を過ごしたかった」
「なら……」
何故、鬼にならなかったのですか。
言いかけて、それ以上言葉が出ない。
私は人間である彼に、坂上田村麻呂に惹かれた。人間だから愛する事が出来た。
「明日の夜、もし彼が来なければ」
「来ます」
「む?」
「彼は必ず来ます。だって……」
坂上智也は、坂上田村麻呂に似ているのだから。




