坂上妖怪屋敷7
さて、智也さんが学校に向かった事ですし、こちらも行動を開始しましょう。
「紫苑」
「あのー」
「どうしたんです、早く智也さんを追いかけて……」
「いえ、それはいいんですけど」
「なら、どうして動かないのですか?」
「もう、門閉まってますし。智也さんの同意がないともう開きませんし」
「しまったああああッ!? わ、私としたことがっ!
落ち着け。落ち着け私! さんてんいちよんいちごーきゅうにぃ……ああ、先がわからない!!」
「素数を数えようとしたんだろうけど、それは円周率ですよ」
ああ、なんということでしょう。
智也さんからニオイを消す事だけを考えていて、数百年以上暮らしたこの屋敷の仕組みを忘れてた!!
我ながら情けない。
「どうしましょうか」
「どうしましょう」
「んなもん、塀を乗り越えていきゃあいいじゃねえか。それより、俺の分の朝飯は?」
今、朝食を食べに来た椿折がすごくいい事言ったような気がする。
「椿折、今なんて?」
「んあ? ああ、ウチの塀が人間に登れねぇほど高いってのは知ってるが、妖怪の俺達なら、飛び越えられねぇ高さじゃねえだろ。だから飛び越えりゃいいって言ったんだが……なんか問題でもあったか? それよかメシまだ?」
そうだ。その手があった!
「紫苑、壁を飛び越えなさい!!」
「あの、私運動苦手で……」
「いいから飛べよ、このトリガーハッピー!!」
「否定する要素はないけど、酷い言い方ですね!」
といいつつ、紫苑は助走をつけるため……え、なんでクラウチングじゃないの?
ていうかその構えは小学校低学年のかけっこでやるような構えですよね。
「ていうか、遅ッ! あの子絶対持久走やらせると一人だけ孤立するタイプの子だ!!」
「鈴鹿さん、紫苑さんが跳ぶ体勢に!」
「死なばもろとも――――――――!!」
何かを道連れにする気だぁああああああ!?
べちん
「……」
「……」
ところがどっこい。
道連れもなにも、小石に蹴躓いて顔から地面にダイブ。
ええ、それはもうきれーにパタンと倒れましたとも。棒倒しの棒がごとくきれーに。
何これ。期待はずれにもほどがある。
こういう時は、壁に激突くらいするのがセオリーでしょうよ。
「いたい……」
そりゃあ顔面から地面に突っ込めばね。
「私が悪かった。じゃあ次」
「なんか凄く軽く流されたッ!?」
「次、といわれましても……椿折くらいしか」
「んなことよか、メシを食わせろおおおお!!」
椿折がキレた。が、無視。
今は智也さんからするあの、イヤなニオイの原因を突き止めるほうが先だ。
「燐ノ介さんは?」
「無理ですね。紫苑さんほど影薄くありませんから」
「酷ッ!」
「それもそうですね、じゃあやっぱり椿折に任せましょうか」
「ねえ、何か言って! ていうか四面楚歌!?」
なんか四字熟語の使い方を間違えて――――ないのか?
とにかく紫苑の心が折れかけてる。ていうか、もう涙目になってる。いい加減可哀想になってきた。
「紫苑、よく頑張ってくれましたね」
「鈴鹿さ――――」
「でも、役に立たないので下がっててください」
「うわあああああああああああああああん!!」
本気で泣き出した!?
な、なんで!?
「いや、今のは鈴鹿が悪いだろ」
「今回ばかりは椿折に同意しますね」
「え、私が悪いんですか!?」
『その通り』
二人同時に言い切られた。
「とにかく、メシ」
「あーうー。はあ、仕方ないですね。朝食にしましょう」
と、言っても燐ノ介さんや紫苑はもうとっくに食べ終えてるんですけどね。
「あー、そうだ。さっき飛び越えりゃいいつったけどよ。
どのみちこの屋敷って結界張られてて、外からも中からも門を使わねぇと出入りできねぇんじゃねえか?」
『……あ』




