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坂上妖怪屋敷  作者: 銀色オウムガイ
11/17

坂上妖怪屋敷6.5

 智也さんの性格が、これでもかというくらいにネガティブ思考で、歪曲している理由が、智也さんの部屋へ荷物を取りに行って理解できた気がする。

 両親とのすれ違いが原因なら、それは本人達にしか改善できない問題だ。もし、智也さんにその気があっても、相手がそうでないのならば意味がない。

 智也さんの話では、彼の両親は本当に息子に対する興味がないようで、何をやっても文句一つ言わないらしい。完全に、親子の関係が冷め切ってしまっている。こうなると、もう改善なんてできない。

 ならばせめて、なんとかして、彼の性格を改善させていきたい。

 だって、彼は私の愛した人の子孫だから。

 しかし……このくらいの年齢の男の子なんだから、えっちぃ本の一冊くらいもっててもいいようなものなんだけどな。

 ハッ。まさかそういう趣味――――な、わけないか。それなりに私の事を意識しているようですし。健全なる一般男子高校生、といったところですかね。

「楽しそうですね、鈴鹿さん」

「はい。それはもう」

 ただ、一つだけ気に入らない点を除けば。

 智也さんから、知っているニオイがする。

 それも、私の嫌いな類のニオイだ。

 なんとかできないものか……うぅむ。

「あ、あの……鈴鹿さん?」

 直接手を下す、というのもアリですが、それではこの屋敷の存在意義を、根底からチェス盤をひっくり返す――――もとい、ひっくり返すようなもの。

「どうやったら……あの陰陽師のニオイを消せるんでしょうか」

「陰陽師のニオイ、ですか」

「ああ、すいません。ちょっと考え事をしていまして」

 燐ノ介さんと喋っていたのに、その直後にいきなり意識の外に追いやっていた。

 それほど重要な問題なのですよ、これは。

 権利争いで、ロボットとキャラクターの権利はとれたけれど、世界観の権利を勝ち取れなかったので後々のシリーズに出し辛くなってしまった、という問題くらい重要な問題なのです。

 ネタがかなりマニアックなので、どれほどの人がこれを言って理解できるかどうか。

「智也さんから、どうも私達の敵のニオイがするんですよね」

「そうですね……右京さんと左京さんに調べてもらっては?」

「ああ、あの双子はダメです」

「どうしてです? 優秀だと思うのですが……」

「あの双子には無理です」

「だから、どうして――――」


「学校で爪研ぎしたらどうするんですか」


「……あ」

「ね?」

 猫ゆえに、柱見るたび爪を研ぐ。

 お、綺麗にまとまった――――でなくて。とにかく潜入が得意で、それなりに戦闘力もあって、目立たない人材を選ばない、と?

「……」

 目立たない?

「紫苑さんにお願いしましょう」

「鈴鹿さん、今ものすごく失礼なことを考えたでしょ」

「てへっ☆

 ――――いや、ないわ。自分でやってて今ものすごく死にたくなった……」

「だからってそんなに青ざめて身震いしなくても……」




 二〇一〇年六月十八日。

 本日の天気は、晴れ。

 降水確率二十五パーセント。周辺への隕石落下確立十二パーセント――――

「って何だこの新聞!?」

 なんで隕石落下確立なんて書いているの!?

「今朝天狗が持ってきた新聞ですよ」

 と、紫苑さんが僕の読んでいた新聞をそっと取り上げて読み始める。

 天狗め。なんて訳のわからない新聞を。

 ていうか、僕の知ってる天狗のイメージと大分違うんだけどさ。

「えーっと……あらま」

「どうしたんですか?」

「地球上で最強の生命体にセガールが認定ですって」

「セガールが?! え、何、妖怪よりも強いの?」

「ス○ウターで計測したところ、○カウターが壊れるほどの戦闘力が――――」

「何で調べてんだよ!? ていうか、どうしてスカ○ターなんてあるんだよ!?」

「セガール氏は、インタビューに対して「ジャッキーかシュワちゃんかと思ってたよ」と答えた」

「何妖怪の取材に答えてるのセガール!?」

「惜しくもセガールに敗れたジャッキーさんは「いい試合だった。感動した」と答えたと――――」

「それ、日本の総理大臣の名言だからッ!!」

「一方、遅れをとったシュワルツネッガーさんは「アシャルリターン」と答えたと――――」

「そこは、「アイルビーバック」だろ!? なんでそれなの!?」

 なんだこのツッコミどころ満載の新聞は。

「おはよーございま……すぅ」

「ちょっと、朔さん。なんで来た途端に畳に寝転がって寝ようとしてるんですか。

 夜行性なのはわかりますけど、せめて朝食くらい食べてから寝てください!!」

「それもどうかなあ、と思うんだけど。あっ……これは」

 紫苑さんが天狗が持ってきたという、ツッコミどころ満載の新聞を凝視する。

「あの、何かあったんですか?」


「いやあ、たいしたことありませんでした。ただツチノコが捕獲されたっていうだけでして」


「いやいやいやいやいや!! それ大ニュースだから。たいしたことあるから。何その新聞。ふざけた内容ばかりかと思ったら、とんでもないニュースも仕入れてるじゃん」

「そうですか? ツチノコって結構美味しいんですよ? 特にダンボールの中に隠れて食べるのが絶品とか」

 この屋敷の人間は全員ゲーマーかアニオタか、そんなのばっかりだったりするのか?

「あ、そろそろ時間ですよ、智也さん」

 しまった。ツッコミに集中しすぎて朝食食べ切れてない!

 ご飯を一気に口の中に入れ、それを味噌汁で流す。詰まりそうになったが、何とか飲み込み、口にアジの開きを咥える。

「あら、智也さん。学校に行くんですか?」

 今は喋れないので、鈴鹿さんの問に頷いて答える。

「じゃあ門を開けますね。屋敷に戻る時は連絡していただければ、開門の準備はしておきますので」

「あ、はい。お願いします」

 一度アジを口から離し、また咥える。

「いっへふぃふぁふ!」

 今日から、ついに新しい家からの登校が始まる。

 なんだかちょっとワクワクしてきた。

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