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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

我らは人々の為の魔法使い

作者: アクリル板

12月は投稿できなくて申し訳ありませんでした。1月も忙しいので、今月中の更新はこれが最後になりそうですが、どうぞ読んでいってください。

 そう遠くない未来のこと。

 世界は再び、大きな争いに巻き込まれた。

 ある者は祖国のために、ある者は信仰のために、ある者は利益のために、ある者は地位のために。

 それぞれの信念を懸けて命を散らして行った。

 私たちは―――――そのすべてのために戦い、そして敗北し、その全てを失った。

 実におかしな話だ。国と協会、そしてごくわずかな特権階級の魔導師達が強欲なまでに求めたものは、ことごとく消えてしまった。中には、元から存在しないものまであった。

 しかし、()()()()()()()()()()ものは多くあった。敗北の代償からかけ離れるほど多く。

 高度に発達した科学は魔法と変わらない。どこかの科学者が言い放った言葉だ。なら、高度に発達した科学によって生み出されてしまった私たちは、魔法と変わらないのだろうか…








ある冬の日

「早く逃げろ!巻き込まれるぞ!」

 男の野太い声が、大混乱の街に響き渡る。しかしそれが人々に届くよりも先にかき消されてしまう。

 人々は必死になって走った。燃え盛る()()()()から少しでも離れるために。

 街のランドマークでもあったその建物――大きな高層ビル――の名前は『日本魔法協会本部』この国の中でも最高峰の能力(特権階級)の魔導師達が集まる所謂魔導師のメッカだ。

 そんな建物は今、無残に焼け落ちようとしている。かつて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()魔導師達によって。

「おい、また爆発したぞ!どうなってるんだよ!」

「もういやよこんなの!」

 人々の叫びとは裏腹に、ビルは破壊され、周りの建物を巻き込みながら崩壊しようとしていた。


 私たちはこの時を待ち続けていた。崩れ行く魔法協会本部(私の故郷)を見ながら、私の心は歓喜にあふれていた。

「徹底的に破壊しろ。誰一人生かすな。円卓に座っていた連中の死体は確保しろ。それ以外は任せる。」

 私はそう部下に命じた。

「正義は我らにあり。新たな世界のために。」

 そうつぶやくと、自身の演算装置に魔力を注入し、いまだ燃え続ける建物に向け()()()()()

 建物に近づくと、すでに外壁の一部が崩落し、中の構造が露出していた。その構造の間から、未だに抵抗を続ける魔導師を見つけた。

「いい加減諦めろ、糞共が。」

 そう言い放ち、抵抗を続ける魔導師に向けて引き金を引いた。と同時に、体内の魔力が引き金を、グリップを通じ弾丸へ込められ、放たれた。

 空から放たれた()()()が魔導師に命中すると同時に、込められた魔力が、弾丸に刻まれた術式を通じて発現。まわりの建物を巻き込みながら爆ぜた。

「ざまあみやがれ。早く死んでいればもっと楽になったものを。」

 そう言い放ち、さらに残敵を求め、崩れ行く建物のまわりを飛び続けた。

「どうですか隊長、順調…でしょうか?」

「ああ、最高だ。今の時点で15人殺した!円卓の連中の首も頂きたいところだな!」

 部下が少し不安そうな顔で私に聞いてくる。

「お前たちはどうだ、どのくらい殺した?」

「ざ、残存戦力はもうないかと…あと、円卓と思わしき人物も…」

「ほう円卓!なら今すぐそのお顔を拝みにいかなければなあ!」

そう言って私はすぐさま部下たちのもとへ飛んだ。


「被害状況はどうなっている!?」

「ビル内の人間のうち、下の階にいた人々はすでに避難済みです。ですが高層にいた人々は…」

 けたたましく鳴り響く消防、警察車両のサイレン。今まで経験したことのない未曾有の大事件を前に、彼らは茫然と立ち尽くすしかなかった。

「これから、どうなるんでしょうか?」

「さあな。だけど、もうじきこのビルは崩壊する。上を飛んでる連中が誰なのかは結局わからずじまいのままにな。」

「…この事件で、たくさんの人が死にました。それでも、私たちが見ることしかできないのは、とても悔しくて…」

「泣くな。まだ俺たちの仕事は残っているんだ。仕事は仕事だ。最後まで…見届けようじゃないか。」

 ようやく、陸軍のヘリコプターがやってきた。遠くには恐らく陸軍の車列の音も聞こえる。事件はようやく解決の糸口を見つけだしそうだ。多くの傷を残して。


「ああ…本物だ!円卓の連中だ!遂に、遂に討ち取ったぞ!ハハハハハハハハ!」

 ビルの一番上に転がる死体たちを見て、私は心の底から笑った。あの憎き魔法協会の元締めが死んだ。それだけでも笑えるというのに、彼らの死にざまの何たることか!

「ハハハ!素晴らしい!しかし、まだまだ任務を続けたいところだが、どうやら時間が来ているらしい。全力で撤退するぞ。」

 そう言ったそばから、陸軍のヘリコプターのローター音が鳴り響くのが聞こえた。万能の魔導師とは言え、誘導ミサイルには敵わない。今すぐ逃げなければ、せっかくの復讐が台無しになってしまう。

「よし、行くぞ!」

 そう言って、私たちは協会本部を後にした。





 協会本部を襲った魔導師達が撤退してから一時間後、街のランドマークであったビルは、轟音を立てて崩壊した。

 救助隊の懸命な救助活動の末、僅かに十数人が救出された。

 後日出されたレポートによると、死者は四百人近く、負傷者は千人弱にのぼるとされる。

 その後、この事件の裏には魔法協会と対立していた日本軍産企業連盟の援助のもと行われたとされるが、このことを知るものは居なかった。かつての特権的な魔導師と、その一族を除いて。

 事件は解決された。さらなる復讐と、そして憎悪を生みだして。協会を排除することで、魔法産業で圧倒的優位に立った企業連による、「人々の為の魔法使い」を生み出して。

一応、銃と魔法の杖と世界観は繋がっているつもりです。あの作品は書き直そうと思っているので、今回は試しにその書き直し予定の一部を書きました。

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