2 旧武丸物語
ブクマ、評価をいただいた方。
感謝しかありません。
意識を失う中で
ぼんやりとした俺の中に
武丸の意識が流れ込んでくる。
それはまるで
彼の今までの人生映画を
みているようだ。
《俺が今、武丸だとして、
本物の武丸はどこに?
意識の中?
いや、
俺が意識を乗っ取ったか??
俺自身の体はどこに?
いや、死んだのか?
ただ、何かに俺の中の何かが
浸食されていくのがわかる。
疑問はたくさんあるが、
今の俺は武丸だ。
なら今は、
この武丸映画に集中しよう》
俺は、蘆名武丸 10歳
時代は、というより
俺の知っている世界とは
似ていて全く違うので
この世界は、になるのかな。
俺の知っている世界の
昭和初期?大正?明治?
いや、もしかしたら
江戸時代ぐらいなのかも?
科学の力も
ないわけではないのだが、
魔法も存在する
ファンタジックな
心をくすぐる世界だ。
でも、魔王なんざいないし
モンスターとかはいない。
動物はいるけど…
そして、この国。
いや、日本はこの世界で
旭の国というらしい。
武丸の知りうる地図だと
まんま日本で、間違いなく
今は東京と横浜の間、
川崎あたりにいるのかな?
ちなみに世界地図も
まんま俺の知ってる物だが
ほぼ、世界の国々と
交流のないこの国では、
それも怪しい。
今はこの国の暦で日照34年
というらしく、世界歴は154年?
世界歴ってなんだ??
どっかに中枢があるのか?
そんな疑問が浮かんだが
なんでもどこかの国が
中枢という場所を乗っ取り、
その時を世界歴元年にしたようだ。
きっと、ローマだろうな?
でも、乗っとる?
あれは、神聖ではないのか?
この旭の国(要は日本)は、
5つの勢力で覇権を争っている。
美好、尼川、木曽、蟹崎、
そしてうちの蘆名だ
父は、蘆名術方王堂水。
母は、士津と呼ばれている。
母の本名を武丸は知らないようだ。
蘆名家の当主であり、
関東上信越から静岡あたりまでを
領土としている。
術方堂という元服名が付くほど
魔術も長けているようだが
剣術もすごいらしく、
鬼神とも呼ばれているらしい。
この世界、
やはり一夫多妻制のようだが
正妻以外には、
ランキング?順位があるらしく、
妻同士の女の戦いもあるらしい。
そして俺は、
正妻(士津)の子で唯一の男子
つまり蘆名の跡取りってわけだ。
ちなみに兄弟は全部で15人。
直系兄弟には姉が1人いる。
兄弟の上下関係もある。
ここでも妻ランキングがものを言う。
なんか、無意味なシステムだが
血統という意味では大事?
そして武丸。
つまり俺のことだが、、
こいつは、
かなりのスペックを持っているにも
かかわらず
全くやる気のない奴のようだ。
天賦の才を持ちながら、
全くそれを鍛えることなく。。
といってもそれは理由があり、
武丸はひとりで悶々としていた。
まぁ戦うというのも
毛嫌いしていたようだが…
俺が武丸になった日も、
父にさんざん怒られ罵られ
自分の殻に閉じこもって
ふさぎ込んでいたようだ。
旭の国の統一を目指す父と、
戦うの毛嫌いする子。
叱咤されるのを恐れて
毎日のように親から逃げる日々。
でも、実力を出せず
どうすることもできない自分。
殻に閉じこもるのも
まぁ、わからなくはない。
そして、ほんとに逃げるように
自分の存在を放棄した。
そんな時、ほんとに偶然に
俺の意識が入ったのかもしれない。
っても父がなぜ、
そこまで武丸に固執したか?
それは、
武丸の持つ本来は圧倒的な才能。
魔術の才能だ。
この世界、
全員が魔力を持ってるし、
魔力量は鍛錬で向上する。
しかし…
その魔力を放出することは、
100人に1人程度。
つまり、
100人に1人ぐらいしか
魔法は使えないという結果。
そして、それを見分けるのが
瞳の色なんだ。
一般的には茶色の瞳。
父のように
火炎が扱えると赤みを帯びた瞳。
しかも通常は片目のどちらかで、
かなり希少な両目持ちは
相当すごい属性魔力を放出できる。
武丸の瞳は漆黒だった。
しかも両目とも。。
漆黒の目は文献レベルに希少な
無属性と言われるもの。
しかも武丸は
常に魔力を体に纏わせていた。
相当量の魔力だ。
魔力量を測る水晶でみると
常人の約300倍、
父の30倍の魔力量を持つ。
まぁ実際は
そんなもんではないのだが。
さらに武丸の場合
体に纏わせてるのではなく
ただ、制御することもできず
溢れでてきた魔力を
垂れ流していただけ。
それを放出と勘違いされてる
なんか、ちぐはぐだ。
それに魔力量の多さも
ある意味、
幼少からのその垂れ流しが
鍛錬?だったのかも。
まぁ、そんなわけで
父、堂水は、
武丸の能力に歓喜したのは
想像がつく。
しかし、
武丸はいつまでたっても
自力で魔力を放出できなかった。
漆黒の瞳は、なにも放出できず、
ただ魔力を垂れ流したのだ。
まぁ、わかる?
想像だが、垂れ流しとはいえ
魔力を常に放出しているため、
いつも魔力の枯渇状態。
だから
武丸はいつもフラフラで
疲れやすいから
すぐに部屋にとじ籠る
だから武芸なんて、
やれるわけがなく、
武家?の嫡子してはNGな
行動しかできないわけだ。
そんな武丸の生活も
10歳にもなると
期待が落胆に変わる。
そうなってくると
武丸の立場は、どんどん悪化し
期待をしていた分
父の多くの叱咤を招く原因とも
言えなくは無かった。
武丸は、葦名家の嫡子としては
全くと言っていいほど
ダメダメな存在だ。
もちろんスペックは
異常に高いのに全く生かせず…
とはいえ、武丸を擁護するなら
武丸は放出の仕方が
全くわからなかったのだ。
魔法は、属性によって
何かと色々変わると言われる。
無属性の武丸にそのやり方を
教えてあげられる人間は
この世に誰もいなかった。
希少というか稀有な属性が
仇となったようだ。
まぁ、
常に魔力枯渇している武丸には
どちらにしても無意味な事
なのかもしれない。
本人が
努力して、見つけるしか
ないのだから。
ここまで読んで頂きましてありがとうございます