新宿デート野郎は蜂と宇宙人と手を繋ぐ その1
【新宿デート野郎は蜂と宇宙人と手を繋ぐ その1】
昨日、白い流れ星が見えたから、僕は三回お星様にお願いしました。この病気が治って、大好きな海に行けますように。
きっと願いは叶わないだろうけど、お父さんとお母さんが大好きだったあの海にいければ、仲直りができると思うんです。
「裕君~。診察の時間だよ」
お医者さんが僕の名前を呼びました。また注射されるのかと思うと少しゆううつでした。けど、ふしぎなことが起こりました。お医者さんが部屋に入ったとき、海の音がひびいたのです。
潮の香りがして、ぼくの心から鮫が現れました。格好いいホオジロザメでした。それは病気を治してくれない悪いお医者さんをそのでっかい口で食べてしまったのです。
鮫が床のなかに潜っていくと、ぶわぁと血が宙に浮いて、続けてお医者さんがプカプカと浮かび上がってきました。
そしたら、元気がわきました。ぼくに少しだけ、生きる力が戻ってきたんです。鮫は増えて2匹になりました。僕はそのとき思いました。
お星様が願いをかなえてくれたんだ。鮫達がみんなを食べれば、ぼくはそれだけ元気になれる。
これが僕の能力なんだ。もう僕は【海の香りがする夢】を見ないで済む。
「ははは……!! もっと食べてきて。鮫さん。皆食べて、僕を治して」
鮫は従いました。ぼくは待つことにしました。
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