貢献度を上げるレジャーがあるって話
転送管理センターに戻ると、衣装と防具を元の世界へ返した。金貨は、こちらのお金に換金するか、貢献ポイントに加算するかを迫られて、貢献ポイントに加算した。次回はもっと長く中世にとどまれるように、貢献ポイントを積み上げる予定だ。ここに来る前に来ていたラバースーツに着かえる。よく全身にフィットしている。転送センターのチューブを経て外に出る。空気の流れを肌で感じる。わたしたちは、気流の流れを皮膚感覚で捕らえ、気合で気流の流れに乗り、体躯が落下しないように操作することで、空中を漂うことができる。精神力を使うが微々たるものである。ラバースーツは遊泳には関与しない。その日の気分でファッションを変える。
久々に空中を滑空した。気流を全身で受けて操るのは爽快だ。もっとも転移先では制約が多すぎて、能力は使えないことが多いのが難だが。わたしは空中遊泳を存分に楽しんだ。自室へのチューブが夜光虫のように光っている。そこに手を添えて、自室へと舞い降りる。しばらく美容液の入ったタンクで、思う存分羽を伸ばすんだ。そして明日から仕事の日々が始まるのだろう。
──キエミ・リヤ、ッチューフォ・セイレイから通信です。
わたしは奥歯の横を押して了解の合図をし、伸縮自在のビューアを開く。ブロンドの髪に一直線に引かれたラインのようなグラスをかけた女性がこちらをみていた。
「リヤ、お久しぶり、開拓世界のレジャーはどうだった」
「ちょっと期間が短すぎて物足りなかったかな」
「やっぱり貢献ポイントは、多めでないと堪能できないよね」
「今回はお試し旅行ってところだね」
「そこで、いいニュース。貢献ポイントが大量にストックできるミッションがあるんだけど」
「あなたがやればいいんじゃない」ちょっと意地悪くかまをかけてみた。
「やってみたいんだけど、アナログ機器を操作するのが面倒くさいからパス」セイレイは気にせず軽くこたえる。
「やる気ないんでしょ」
「ふはは、ばれたか。でもリヤなら、アナログ機器の操作は得意って言ってたじゃない」
「ちょっと詳しい情報送って、みるから」
わたしはセイレイに頼んで、そのミッションの資料を送ってもらった。
読み進めるうちに、興味がわいてきた。
「また別の異世界に行くことになるけど、今度は地味そうね」
判断を保留した後、全裸になり、タンクにもぐることにした。
美容液が全身を満たす。呼吸に必要な気体は、大きな泡となって定期的に備考に送られてくるシステム。
なので液体の中でも難なく息ができる。
朝になった。タンクから出て、セイレイの資料を改めて熟読する。転移先は2010年代の東洋の小国のようだ。そこで福祉的な就労の手助けをするというのがミッションになる。半分仕事みたいなものだ。中世ハンティングのような派手さはないが、その分
社会的な貢献度は高い。ここでの結果が、開拓世界へのロングバケーションにつながるとおもうとやる気もでる。
わたしは、さっそく申し込むことにして、転移管理センターからの連絡を待つ。その間、今まで来ていた依頼を片付けることにした。
悩み相談は、相変わらず多い。恋愛に関するものが大半を占める。クライアントにスクリーン越しに出合い、話を傾聴して、見合ったアドバイスを送る。大半が話を聞いてもらうだけで満足する。代価と引き換えにより信頼のおける共感を求めているのだろう。スキャニングの必要もなく、経験則を元にした基本的なレクチャーですべてが片付く。
他には経営相談が一件、さすがにこれは恋愛アドバイスと同等では無理なので、直接クライアントに合うことにした。スクリーンでの外見は、背が低く、毛髪を人工的に処理した、人懐っこい笑顔が似合う中年の男性だった。彼は空が飛べるだろうか、質問してみる。滑空は苦手なので、一人乗りのマシンでやってくるという。待ち合わせ場所を、区域内のレストランに指定して、ひとまず先にわたしは飛んだ。滑空していると
円形で青く光る屋上にマシンの駐車スペースを兼ね備えた建物が見えた。わたしはチューブから中に入った。
予定されていたナンバーの一室で待っていると、一時代前のデザインのスーツに身を包んだクライアントがやってきた。名前はバジョー・アヤナ。彼の頭脳をスキャニングでみる。人が良く営業センスもあるが、決断力に欠け、度胸がない。という風に脳内の血流の活動域が色付きで表示される。これをベースに実際の対話の特徴や、経営状態のデーターを元に報告書を作る。
さすがに話し上手なので、外見に似合わず話を飽きさせず、気分を盛り上げてくれた。食材の貝のソテーも洋酒が程よく利いて、舌の上でクリームチーズのようにとろけて消えた。いい時間を過ごさせてもらった。ありがとうアヤナ。
会食を終えて、報告書を作成する。大半を終わらせると、ベッドに横になった。例のミッションもこれぐらいの負荷ならやれそうだ。時代と環境が違うので、多少苦労はあるかもしれない。




