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お手並み拝見

 武器屋兼防具屋のオヤジを、腕力でねじ伏せて、自分に相応しい武器と防具をチョイスしようとした。と、その前に、この世界のモンスターについて聞かなければならない。


「この村にはびこってるモンスターって何よ」

「攻撃力はさほどではないが、イライラする相手だ。防御力が割とやっかいで、刀剣は選ばない方がいい」

「というと?」

「刀剣だと滑る恐れがある、弓矢かモーニングスターの方がいいだろう」


 がっかりした。刀剣で敵を切りまくるのがストレス解消に一番いいだろうと考えていたからだ。

しかし、敵に合わせて戦法を変えないと、役に立たない武具ではミッションはクリアできないだろう。

わたしは、手持ちの金貨を出し、普及品と思われる、クロスボウと矢のセットを購入した。


「防具はどれがいいかしら」

「なにせ相手は土まみれだから、汚れを気にしないなら防具はなんでもいいだろう」

と意外なことをおっしゃる。モンスターは強くないのか?

戦闘にスカートでは不利なので、スラックスと皮の鎧を購入した。


「あんたなら、楽勝だろうが、次から次へと出てくるからうんざりするかもしれん。それと体液には気をつけろ」

「ありがとう。仲間はどこで探せるの」

「もう少し中央通りを行くと酒場が数件ある。その中のどこにだって冒険者はいる。ただ女と組もうとする物好きはいないだろう。それ以外なら需要があるが」

わたしは、武器屋を後にした。プライドをへし折られた店主を後にして。


 雑貨店が少なくなり、酔客の歓声とざわめきの変化が、歓楽街に来たことを知らせてくれた。

手近なバーの開き扉を開けると、ぎらついて殺気だった目を向けられたような気がした。

カウンターで、とりあえず、ロックを頼むと、一杯めを半分ほど空ける。周囲を見渡すと殺気だった眼は、好色そうな流し目にすり替えられていた。酔っ払いの甘酸っぱい口臭が鼻につく。


「よぉ。姉ちゃん。俺があっためてやるぜ」

「おあいにく様、体を温めるには運動することにしているの、あなたについて行けるかしら」

色目を向ける、皮の服や、漆黒のマントを身にまとった欲に支配された若僧をよけ、適当にあしらう。


 スキャニングでまともそうな冒険者を探す。一人別種のオーラを放っている男性がいたので、グラス片手に声をかけた。もみあげと髭がつながっている黒い毛髪で眉毛の濃い男だ。


「仲間を探してるんだけど、どう?」

「俺は独りでやるつもりだ」

「仲間がいた方が何かと便利かもよ」

「お嬢さんはそこのステージで踊ってな」とポールダンサーがくるくる回っているスポットを指さす。


「わたしだったらあの棒を捻じり切ってしまうわ」

「力自慢のようだが実戦ではどうかな。ちょっと様子を見てやるから、明朝五時に北の畑の前に来てくれ」

「わかったわ。わたしの本気を見てびびらないでね」

「そちらこそ、怖気づいて逃げるなよ」

「助言ありがとう。わたしはキエミ・リヤ。リヤでいいわ」

「俺はコフ・ウルサスだ。ウルサスって呼んでくれ」

商談が成立して、わたしは宿屋へと戻る。なるべく簡素で宿代の安そうな木造家屋を探して寝床にした。


翌朝、早起きして指定された場所に行ってみると、ウルサスが髭を撫でながら待ち受けていた。


「もうじき、モンスターがやってくる。奴らは早朝の畑をめがけて、多人数で押し寄せる。強くはないが

イラつく攻撃を仕掛けてくる」

「いきなり実戦になるのね」

「リヤが取りこぼした分は俺が始末する」

「あら、ずいぶんな自信ね」

「そのクロスボウ、矢が足りないんじゃないか」

ウルサスは革袋から、まとめた矢を取り出した。

わたしは、相当する金貨を与えると、矢を受け取る。


やがて夜が明け、一番どりが鳴く頃に、モンスターの一群が現れた。

全身が黒く、背は低く、土がこびりついた短い毛に覆われた怪物だった。


「さあお手並み拝見と行こうか」

わたしはクロスボウに矢をセットして、先頭のモンスターの頭を打ちぬいた。

一体は崩れ落ち頭から白い液を噴出して倒れた。

しかし、見た限りでは10体ぐらいいる。

ゆっくりだが柵めがけて押し寄せてきている。


 二矢めを装着して、二体目の頭部を狙う。

プッって音がして、二番目のモンスターを貫いた。

傷口から白い液を噴き出して、崩れ落ちていく。

しかし、まだ数は減らない。距離が縮まる前に全員を倒さないと、柵を乗り越えられてしまう。

護身用として刀剣を装備すべきだったと後悔した。


「大丈夫だ。討ち漏らした敵は俺がまとめてせん滅する」

「あら、まだ私は大丈夫よ」

「口動かす前に仕留めないと、近場に寄ってくるぞ」


 敵数の把握もせずに武器の選択をしたのは、軽々しかったかもしれない。

もうすこし状況把握に力を入れるべきだった。

スキャニングだけでは限度がある。

対話で、情報収集すべきだったと思う。


 柵の前まで黒いモンスターが近づいてきている。敵は五体残っている。矢をつがえる時間に手間取りスピードアップできない。

「そろそろ俺の出番だな」

ウルサスが立ち上がった。




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