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十七歳:チョコレート

今回は、本編と同じ世界観です。

「おまたせ、ふうちゃん」

「……うん」


 ふうちゃんの十七歳の誕生日。今年は、去年とは違ってチョコレートケーキに挑戦しました。といっても、スポンジや生クリームにチョコレートを混ぜただけなのですが。


「……やっぱりちょっと、大きい」

「ご、ごめんね。二人前のケーキって作るの難しくて……」

「……そう」


 ふうちゃんの分と、わたしの分を取り分けて、二人揃っていただきます。


 ……こんな生活が、ずっと続いてくれたらいいのにな。


 好きな人と一緒に起きて。

 好きな人にご飯を作って。

 好きな人に、それを食べてもらって。

 好きな人の顔を見て。


 わたしは、ずっとずっと、ふうちゃんのそばにいたい。


 ……でも、ふうちゃんはそう思ってないんだろうなぁ……。


 わたしを騙しているんだって罪の意識に襲われていて……。いつか、その気持ちが溢れだして、ふうちゃんがわたしのもとから離れてしまうことが、わたしは怖い。その「いつか」なんて、ずっと来なければいいのに。


 ……でも、このままだと、その「いつか」は必ずやってくる。


 ねえ、ふうちゃん。

 わたしは、騙されてなんかいないんだよ?

 自分の意思で、ふうちゃんのそばにいるって決めたの。

 だから、ふうちゃんはなにも気負う必要はないんだよ?


 わたし、知ってるよ。

 ふうちゃんは、すごく優しい子なんだってこと。

 いつもわたしに気を遣ってて。言葉を選んで。人のことを考えているから、いつも悩んでいて、苦しんでいて。

 そんなふうちゃんのことを守りたい。支えたい。寄り添いたい。そう思ったから、わたしは「あの日」告白したの。


 いつもお姉さんにつっかかっていくのだって、お姉さんなら、自分が全力で憎しみをぶつけても大丈夫だってわかってるから、あんなに感情を吐き出せるんだよね。


 お姉さんを……信頼しているから。


 こうしてふうちゃんの数少ないわがままに付き合っていられて嬉しいけれど……もう少しだけでもいいから、わたしにも無表情以外の顔を見せてほしいな。お姉さんに嫉妬してしまいそう。


 はやく、気づいてくれないかな……。


 ふうちゃんは、わたしにとってかけがえのない大切な人なんだってことに。

心はミルキー、事態はビター。そんなチョコレートの生活。

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