十九歳:ロール【悲劇的アナザーワールド(もしも「あの男」の「家族」にされていたら)】
今回は、最悪の展開を迎えたパラレルワールドのお話です。
「……おまたせ」
「うん」
巨大な、それも大量のロールケーキを持ってきたのは、お姉ちゃん。
今日は、わたしの十九歳の誕生日。お姉ちゃん達がお祝いの料理やケーキを作って、「家族」のみんなが、わたしの誕生日を祝ってくれている。
「それにしてもお姉ちゃん。体の具合、大丈夫?」
「……今のところは、大丈夫だ。つわりも、おさまってきたしな……」
「……元気に、生まれてくるといいね」
「ああ。……でも、それに関してはお前の方が先輩だろ?」
「……そうだね」
そう呟いてわたしが見つめた先は、ベランダの向こうにある庭。照明で照らされて明るくなっているそこでは、二ヶ月前にわたしが産んだ三つ子の姉妹が、墨子や江川智恵をはじめとした星花女子のみんなにあやしてもらっている。
「……それもこれも、あのとき楓を見つけられたおかげだ。だからこうやって、なぜか名前を変えていた茜と明日菜を除いた星花女子学園の職員と生徒全員を『家族』に迎え入れて、邑や麻子とも再会できたんだからな」
「……お父さん。……あれ、お母さんは?」
「今、風呂に入ってる。もうすぐ、こっちに来るぞ」
「……そっか」
……どうして、いままで知らなかったんだろう。お父さんと「一緒になる」と、こんなに気持ちがいいことに。はじめからこうしていれば、みんな幸せになれたのに。
墨子を幸せにしてくれたのは、お父さんだった。
そして、わたしをシガラミから解放してくれたのも。
「お父さん、お姉ちゃん。わたし……今、とても幸せ」
この幸福な世界に、満面の笑みを浮かべずにはいられなかった。
本編のあのとき、楓ちゃんが緒久間先生に救出されなかった世界→楓ちゃんがあの男に「ひどいこと」をされる→あの男の虜にされてしまった楓ちゃんが家の住所を漏らす→麻子さんと邑先生が捕まる→星花女子学園にあの男が乗り込む→楓ちゃん達は「幸せ」になる→作者と読者は嘆き叫ぶ。ほんと最悪。




