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八話《誘拐されました》

 前回のあらすじ!

目隠しをされて、手足を拘束されました!


「ええええええええっ⁉︎」


何これ、なんでこんなことになってるの?

僕の平和な日常は?

日常はどこに行ったんだ?

というかさっきからガタガタという音が聞こえるんだけど、もしかして馬車か何かで拉致された?


「お、大人しくして下さい! ショウ君っ!」


うん? 女の子の声が聞こえたんだけど?


「もしかして君が誘拐犯?」

「誘拐犯っ⁉︎ ち、違いますよっ! 私は師匠さんに言われて貴方を連れてきただけです!」


師匠……?

誰だ? 僕の知り合いに、師匠なんて呼ばれるような人はいないと思うけど……。


「その師匠さんが誰かは知らないけど、それでも誘拐は誘拐だよ。七歳の子供を誘拐して何がしたいんだ。僕の家はそこまでお金もちじゃないぜ?」

「さ、さぁ? 私も詳しくは聞かされてないですから……。あ、ショウ君って七歳なんですね。同い年ですっ!」

「へぇ、君も七歳か。七歳から誘拐なんて随分、肝が据わっているようだね」

「だから誘拐じゃありませんよぉぉ」

「なら目隠しをとってくれよ」

「それは無理です! 後少しで着きますから、立っていて下さい」

「手足拘束されて立ってられるか!」

「すいません、間違えましたぁ……。待っていて下さい、です」


それなら良いけど……うーん、後少しで着く、ねぇ。

どこに着くというんだ?


「あ、着きましたよ。ショウ君、さあ、行きましょう!」


僕は首元を掴まれながら、外に出た。

そして目隠しをを外される。


「……眩しいなぁ。もう朝?」

「はい、そうですよ?」


そこで僕は女の子の顔を見た。

女の子もニッコリと笑い、こちらを見る。

髪はサイドテール、目も大きく、笑顔が可愛らしい。

服は少しというか、そこそこボロボロだ。

まるで剣か何かで切り裂かれたようである。


「それで……」

「はい、なんですか?」

「ここ、どこ?」


先ほど、眩しいとは言ったものの、基本的には霧、霧、霧。

霧ばかりである。

全く周りが見えない。


「剣の達人、ガレイハさんの道場ですよっ!」

「ガレイハ……さん?」


剣の達人?

どうしよう。まだ状況が掴めない。


「はい、これが貴方の武器です!」

「武器……?」


そう言って渡されたのは八本の小刀。

え? これをどうしろと?


「すいません、寝ている間に武器の適正検査をしたんですけど……」

「うん、それは良いけど、この状況はな……」


続きは、言えなかった。

目の前ギリギリ、後ほんの少しというか、もう当たっているじゃないかというくらいの距離に剣が勢いよく刺さったのだ。


「はっはー、流石俺様、狙い通りだぜ」


霧から少し覗く崖のようなところの上にいた男はそう言ってすたっと、下に降りた。

嘘だろ……?

この崖、どこからどうみても高層ビルくらいの高さは優にあるぞ。


「お前がぁ、俺様の弟子の息子かよ。はっは、ひょろっちい身体。それでも男かよ」


そう言うこの男、僕にも負けず劣らず、かなり身体は小柄である。

いや、それでもやはり年齢分、身長差は随分はあるけれど。


「あの、貴方は?」


僕は男に尋ねる。


「俺様はぁ、ガレイハ。まぁ、お前に分かりやすく言うと、お前の父親の師匠だぜ。良く覚えておけ」

「僕の父の……? 間違っていたら悪いですけど、貴方まだ十代後半ってところですよね?」

「あん? 十九だが?」

「父さんは三十二歳ですよ? 貴方、本当に父さんの師匠なんですか? 歳が違いすぎるのでは?」

「はっ、俺様は天才なんだよぉ。五歳からお前の父親の師匠になってやってたぜ」


それが本当なら、それは確かに天才だけど……。


「あん? もしかして疑ってやがるのかぁ?」

「え、えぇ。流石に少し」

「はっはー、良いね。疑うのは良いことだぁ。お前、七歳の割には出来るじゃねえか? もしかして……天才か?」

「あはは、天才なんてそんな」


転生しただけなんですよぉ……。


「そりゃあそうだ。お前が天才なら、俺様が大天才になっちまうからなぁ……」

「随分自信家なんですね?」

「本当のことを言ってるだけだぜ? あ、そうだ。何なら試すか? 俺様と、戦おうぜ」

「貴方と戦うメリットがありません」

「あるぜ? 俺様に勝てば、お前は帰れるんだよ。お家になぁ」


……なに?

家に帰れるのか?

イリアと遊ぶ約束もしているし、これは……乗るしかない。


「……わかりました。やりましょう、勝負を」

「良いねぇ」


そして、勝負は始まった。


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