表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

四話《俊敏値上がりすぎ問題》


 イリアの叫び声が聞こえた方へ、僕は全力で走り出した。

……毎日走っておいてよかった。

と心から思う。

ちっ、中々見つからない!

しかも、こんなに木だらけだと走りにくい。

どうすればいい?


『能力、使えばどうですか?』

『レイか! それで、能力を使えってどういう意味だよ』

『能力を使って、木を消しゴムにすれば、倒せる分、木より楽でしょう?』

『あ、なるほど』


レイのアドバイス通り、僕はそこらにある木を片っ端から消しゴムにしていき、手で倒していく。

そして、遂にイリアは見つかった。


「ショウ!」


イリアは僕を見てそう叫ぶ。

どうやら二人組の男達に捕まっているらしい。


「あ? またガキかぁ……ぐへへ。今日は良いもんが食えそうだなぁ」


そう言ったのは背が低い小太りの男。

見るからにゲスそうな顔をしている。

仮にゲス豚と呼ぶとしよう。


「あまり食い意地をはるな。今回稼いだ金は貯金するって決めたろ?」


そんな風にゲス豚に言った男は、足長のガリ男。

何日も寝ていないような目の下の隈が特徴的だ。

こいつは爪楊枝と呼ぶとしよう。


「その子を……離してくれないか?」


僕はそう言って、ギロリとイリアを捕まえている方であるゲス豚を睨む。


「あ? なーに言ってんだぁ? ガキぃ。お前らみたいなガキが、俺様に逆らってんじゃねえよ」

「なら仕方ない。僕は容赦はしないほうなんだ…………消しゴムとして永遠を生きろ」


能力を使い、ゲス豚を消しゴムにする。

すると爪楊枝の方が、驚いた顔で消しゴム(ゲス豚)を見た。


「君も消しゴムとして生きるんだ」


その隙を突くように、僕は爪楊枝も消しゴムにする。

そしてイリアを見ると、イリアは、ポカーンと馬鹿みたいに口を開け、二つの消しゴムを交互に見ている。

そりゃあ……まぁ、急に二人の男がどっちも得体の知れない白い物体になったら驚くよなぁ……。


「イリア……?」

「え、あ……ショウ」


そう僕の名前を言ってから、急にイリアは泣き始めた。

わーんわーんと、まるで赤ちゃんみたいに。

まだ七歳だもんな。こんな男達に攫われるなんてトラウマものだ。


「ショウぅ……怖かったよぉ〜」

「よしよし、泣き止んで。イリア」


僕はそう言ってイリアの頭を撫でる。

すると、イリアは嬉しそうに「えへへ」と言ってニコリと笑った。


「全く……イリア? これで懲りたらもう森には入ったらダメだよ?」

「うん、分かったよ。ショウ」

「さーて、暗くならない内に帰ろうか?」

「うん!」


イリアが元気良く返事したところで、僕たちは歩き出した。

それにしても、消しゴム……こんな森の中に放置していいのかな?

まぁ、良いか。

誰も気にしないだろう。



 僕たちは無事村に戻り、分かれた。

もちろん、明日も遊ぶ約束をして……だ。

子供の体力は底知れないもので、毎日でも遊べるのだから凄い。

さて、そろそろ寝る時間だけど、今日は二人の男と戦うという経験をしたので、少しは強くなっているかな……と思い、ステータスを見ることにした。


名前……ショウ 

性別……男

レベル……58 ポイント6500

筋力値……1080

防御値……350

魔力……0

魔防……350

俊敏値……2700


魔術

……なし

剣術

……なし

スキル

……なし

能力

……『どんなものでも消しゴムに出来る能力』


こんな感じだった。

うーむ、俊敏値……凄い上がってるな。

毎日毎日、走ったもんなぁ……。

そういえば、ポイント……6500も溜まっているじゃないか。

どのステータスに振るか迷うなぁ。

まぁ、また今度で良いか。

そう考え、僕は寝ることにした。



「んー……あれ?」


朝起きて、伸びをしていると、目の前に違和感を感じた。

なんか変な文字が浮かんでいる。

あ、そういえばステータス閉じるの忘れていた。

全く、僕としたことがうっかりしているなぁ……。

そして、ステータスを閉じようとした時だった。


「ん⁉︎」


俊敏値……9200


ステータスには、そう書かれていたのだ。

ちょっと……待て?

9200? え? 凄すぎないか?


『凄いなんてものじゃあありませんよ』

『ん? レイか』

『はい。それよりもまさか……ポイントを全部俊敏値に振るとは思っていませんでした』


ポイント?

見てみると、ステータスのポイントが0になっていた。

まさか……寝ている間に全部、俊敏値に振ってしまったのか?

だから、こんな……9200なんて異常な上がり方をしていたのか。


『それで、レイ。凄いなんてもんじゃないって、9200ってそんなに凄いのか?』

『えぇ。一応、ステータスの最大は、9999なんですけど、俊敏値が9000を超えた人なんて、この世界で貴方を含めても、三人しかいないんですよ?』

『へぇ』

『その二人だって、S級……つまり最高ランクの冒険者なんです。貴方は凄いとしか言えません』

『うーん……まあ、レイのおかげなんだけどね』

『あらあら、謙遜なさらず、レベルは自力で上げたのですし、貴方は誇って良いのですよ?』

『いや、まぁ確かにそうだけど……やっぱり、レイのおかげだよ。ありがとうな』


言うとレイは『ふふっ』と少し笑い、『では、また』と通信を切った。


「さて……と、じゃあ、俊敏値9200というのがどんなものかも気になるし、朝のランニング、行くか」


一人そう呟き、僕は外に出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ