二十四話《龍人》
龍王神を倒し、僕はエリとともに、ドーグとルーシベアを起こそうとしていた。
が、その時。
「ピー」
そんな声が聞こえた。
龍王神の声だろうか?
いや、違うはずだ。あいつは僕が倒した。
「なんなの? この声」
エリは不安そうに僕に聞く。
「さぁ? でもあっちのほうから聞こえるぜ?」
僕はそう言って声の聞こえるほうを指差す。
そして、指を差して気づいた。
箱がある。
「行ってみるか……」
僕はその箱が気になり、近づくことにした。
一歩一歩慎重に近づいていく。
そして箱の前にたどり着いた。
ダンボール箱…………開けるか!
僕は箱の蓋を開けた。
「ピー」
そこには女の子が入っていた。
小さい……女の子。
だが、ただの女の子ではない。
龍のような翼があり、歯は尖っている。
龍人……?
「ピー、ピー、ピー」
もしかして、さっき倒した龍王神エドネストと人間の子供だったのだろうか?
うーむ、人間の姿は見えないし、親はあの龍王神しかいなかったのかもしれない。
そう考えると、悪いことをした気分だ。
「ショーウー君」
「え? エリ? なんだよ」
「その子供、さっきのドラゴンちゃんの子供なんだよね?」
「う、うん……」
「殺しちゃうの?」
「そ、そんな訳には!」
そんな殺すなんてことは出来ない。
子供なんだぞ?
「なら、どうするの?」
「どうしよう……か」
「でも、そのまま放置してても、いずれは殺されちゃうよ?」
「うぐ……でも、どうすればいいんだ?」
「家族にしたら良いんだよ」
「は?」
家族にしたら……?
「だーかーらー、家族だよ。家族。ショウ君がその子供を引き取ってあげたらいいの」
「引き取るなんてそんな……僕もまだ十一歳だ。お金がない」
「お金ならあるよ。このクエスト。コイン五千枚でしょ?」
「うん、でも山分けすれば一人千と少しくらいだ。少ししか持たない」
「大丈夫、私の分もあげるから」
「え……?」
「多分、ドーグさんもルーシベアさんも事情が分かればくれるよ。あの二人、優しいから」
うん、確かにあの二人は優しい。
馬鹿だが、心は決して馬鹿じゃない。
「まぁでもその分。その五千枚がなくなるまでに、またいい仕事探さないとね!」
「うん……ありがとうエリ」
ということで僕は、龍人を家族にした。
ドーグさんとルーシベアさんが目を覚ましたので、事情を説明すると、ドーグさんもルーシベアさんも自分の分のお金はいらないから、龍人を育ててやれと言った。
全く、本当に優しい人たちだ。
「じゃあ名前を決めようよ」
エリがそう提案した。
「エリはね。ピーちゃんが良いと思うな?」
「適当すぎるだろ、却下だ」
「じゃあじゃあ! ショウ君は何がいいと思うの?」
「えーっと……僕たちのパーティー名から取ったらどうかな?」
「パーティー名……あったの?」
そういえば今朝作ったところだった。
「クレイジーカオス、それが僕たちのパーティー名だよ」
「うーん……じゃあ、クレイオスとか?」
「クレイオスか。良いんじゃないのか?」
ということがあり、僕の新しい家族である龍人の名前は、クレイオスに決定した。
クレイオスをおんぶしながら、とりあえず僕たちは宿に帰ることにした。
そして宿に着き、クレイオスをエリとルーシベアに任せ 、僕はドーグと共に、クエストクリア報酬を受け取りに向かっていた。
「うーむ、俺はなんというか……情けないなぁ」
「ん? どうしたんだよ、ドーグ」
「いや、年下のショウさんが頑張っているのに、俺は気絶してばっかりだ……情けないにもほどがある」
「……気にしなくていいよ、ドーグ。ドーグもそのうち気絶なんてしなくなるさ」
「うむ、そうだな。そうだよな! ならもっとウッドカッターという職業を極めなければ……!」
「いや、木こりは極めなくていいから! とりあえず早く職業を変えろ」
いつまで木こりでいくつもりだ? こいつ。
「変えろ……と言われてもな。何にして良いのかいまいち分からない」
「うーん、そうだなぁ……騎士とか? そのデカい大剣とか使えそうだし」
「騎士……か。うん、いいんじゃないのか?」
「まぁドーグは騎士で良いとしても、ルーシベアとエリもそろそろ考えないといけないな」
「そうだな。帰ったら相談するとしよう」
そんなことを話していると、気づけばもう冒険者ギルドに着いていた。
ということで、僕は行ってくるとドーグに言い、冒険者ギルドに入った。
「え⁉︎ 龍王神を倒したのですか⁉︎」
受付の人は驚きのリアクションを身体と顔を使って過激にしてくれた。
そんなに凄いのか?
「はい。それで報酬を……」
「えーっと……はい。ではこちら、コイン三千枚です」
「大幅減少⁉︎」
五千枚から三千枚だと?
怒ってもいいのか? これ。
「あの、少なくは……」
「ないです」
「いやでも、これ明らかに少なく……」
「ないです」
「いやいや、これ絶対に……!」
「ないです」
くっ……!
「このクエストのもう一つのクリア報酬である冒険者ランクが二ランク上がるというのがありますので、貴方達のパーティー。クレイジーカオスの全員の冒険者ランクが二上がります」
「はぁ……。冒険者ランクというのはどうすれば分かるんですか?」
「何もしていなければFランクなので何もありませんが、Eランク以上は勲章のようなものが与えられますので、それで」
「なるほど」
ということは今回、二ランクアップでFからDになるのか。
うん、良いじゃないか。
「クレイジーカオス様のパーティーメンバーは四人なので、四つのDランク勲章を与えましょう」
「あ、ありがとうございます」
そして僕は五千枚から三千枚に減ったコインと、四つDランク勲章を持ち、外に出た。
「……今度は、どのくらい減らされた?」
外に出ると、ドーグはいきなりそう聞いてきた。
「五千枚から三千枚……だよ」
僕は正直にそう伝える。
「そうか……」
「……うん」
クレイオスのこと、どうやって育てよう……。
僕は悩みながら、ドーグと共に宿に帰った。




