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二十三話《龍王神エドネスト》


 早朝、僕たち四人は宿から出た。

さっそく、クエストを受けに行くのだ。

はぁ……それにしても昨日は大変だった。

宿を探すのに結局、五時間ほどかかってしまったしなぁ……。

その後も、ドーグのいびきのせいで中々寝付けなかったし、寝不足だ。

でも仕方ない。

早朝に行かなければ、早々と良いクエストは消えていくのだ。

眠くても、早起きするしかない。


「龍王神エドネスト?」

「はい」

「それが……今受けられるクエストの中で一番報酬が良いんですか?」


冒険者ギルドに着いた僕は中に入って、受付の人に一番良いクエストを聞いていた。


「はい。コイン五千枚、冒険者ランク二段階昇格などと、報酬に関してはここ一年の中でも最高レベルかと」

「うーん、じゃあそれ。受けてみます」

「では、パーティー名をどうぞ」

「パーティー名?」

「はい、四人以上のパーティーでは必須です」

「うーん……あ、じゃあクレイジーカオスでお願いします」

「クレイジーカオスさんですね。了解しました。では、クエスト頑張ってくださいね」

「はい!」


ということで、僕は外に出て、三人にクエストのことを報告した。

因みに今回のクエストを説明しておくと、今回のクエストは討伐クエスト。

その中でも超大型討伐クエストだ。

この町から少し行ったところにある、洞窟に住む、龍王神エドネストを倒す……というものである。

平均レベル60のパーティーが全滅するほど強いらしいが、まぁ勝てるだろう。

確かドーグもルーシベアも、レベルは50程度だったが、僕もエリも60越え。

さらに、僕に関しては80越えなのだ。


「龍王神……か。強そうだな。装備を整える必要がありそうだな」


ドーグはそんな提案をする。

うーむ、装備……か。

確かに必要そうだ。

ドーグでもたまにはまともなことを言う。

まぁ、僕としては装備よりも前に、職業をどうにかして欲しい。

未だに木こりとは全く困った。

職業によって、ステータスの上がり方は全然違うというのに、もったいないだろう。


「よし、ドーグ。じゃあ装備を買いに行こうか」


僕はドーグに言う。


「そうだな。ではルーシベア。防具屋を案内してくれ」


ドーグ、お前知らないのかよ……よく提案しようと思ったな。


「私も知らないよ」


ルーシベアはそう言って、困った顔をした。

誰も知らないんじゃねえかっ!

あ、そうだ。エリなら!

思ってエリのほうを見る。


「え、エリも……知らないよ」


うん、分かってたよ。

エリは悪くない。

こんな馬鹿なパーティーに入ったのに昨日のうちに道を覚えなかった僕が悪い。

たとえ昨日初めてこの町に、半強制的に連れてこられたとはいえ、道を覚えなかった僕が悪いんだ。

ドーグも、ルーシベアも、エリも、馬鹿だということに気づくのが遅すぎた僕が悪いんだ。

そうだ、そうに決まっている。


「よし、装備屋探しはクエスト後にしよう。龍王神? 大層な名前を付けているけれど、そういう奴に限って弱いに決まっている。多分勝てるよ」

「うーむ、そうだろうか?」


ドーグは疑問そうに腕を組む。


「そうだよ。さあ行こう。まずは洞窟へと出発だぁっ!」


僕は勢いよくそう言って、三人に何かを言わせる間もなく歩き出した。




 洞窟に着いた。

やはり龍王神、なんてものが住んでいるだけあってデカイ洞窟だな。


「こ、こわいね」


エリはそう言って僕の服の裾を掴んだ。


「エリって怖がりなんだな」

「ち、違うの! え、エリは怖がりじゃないもん!」

「ふーん……」


後で後ろから脅かしてやるとしよう。

さて、そんなことを考えつつ、僕たち四人は奥へと進む。

すると、スライムが現れた。


「ひゃっ⁉︎」

「あっ!」

「なっ!」


最初にエリが驚き声を出しながら転び、エリが転んだ勢いで、ルーシベアさんが声を出し転び、それに驚いたドーグが声を出しながら転んだ。


「えぇ…………」


どうしよう。僕のパーティーがスライム一匹に倒されてしまっている……。

ほら、もうなんかスライムも呆れてるよ。

うわ、なんだこいつら……みたいな眼差しで三人を見ている。


「はぁ……ごめんね。スライム」


僕がそう言うと、スライムもなんだか理解してくれたみたいでどこかへ消えていった。


「というか、お前らいつまで倒れているんだよ」


僕は言って三人に近づく。

は……!

こいつら、三人とも気絶してやがる!


「なんだよ……エリとルーシベアは女だか

らまだしも、ドーグ、お前まで情けないぞ」


仕方ない……全員起こすか。

いや、待てよ?

ルーシベアさんが倒れている。

美人でナイスバディの年上銀髪お姉さんのルーシベアさんが倒れているんだぞ?

今から僕が言うのは例え話だけど、例えば、今ならルーシベアさんに何してもバレないんじゃないのか?

まぁ例え話だけど……。


「うん……多少は許してもらえるだろう」


呟いて僕は、ルーシベアさんの胸部…………の上の肩を揺らし、ルーシベアさんを起こす。

駄目だ……僕、チキンすぎる。


「う……ん? あ、あのドロドロのモンスターは?」

「どこかへ行ったよ」

「あのモンスター……一体何者なんだろう? 只者じゃあないんだろうけど」


ただのスライムです。


続いて、僕はエリを起こす。


「あ……おはよう」

「うん、おはようエリ。記憶は大丈夫?」

「うん……あのドロドロのモンスター、何だったんだろう? エリを倒すということは、何か特殊な能力でも……」


ないです。ただのスライムです。


最後にドーグを起こす。


「うーん、すまない。気絶していたか」

「うん、そうだよ」

「それにしても、全く……あのモンスターS級モンスターなんじゃないのか?」


F級です。ただのスライムです。


はぁ……全く、こんなことじゃあ龍王神なんかと会うと、こいつら失禁とかするじゃないのか?

そんなことを思いつつ、三人がしっかり起きたところで、僕たちはまた洞窟の奥へと進みだした。




 ついに、扉が見えた。

洞窟に扉なんて……これは絶対に何かあるだろう。


「いいか? 開けるぞ!」


僕はそう言って扉を開けた。

龍の咆哮が、洞窟中に響き渡る。


「ピー」


龍王神エドネストの声は、そんな可愛らしい声だった。


「ピー」


というか、どこから見ても小さい可愛いドラゴンなんですが……。


「ピュリ?」


か、可愛すぎる!

僕は思わず近づく。


「グルアァァァァァァッ!」


すると、小さかった龍は姿を変え、デカく、とてもつもなくデカくなっていき、そんな咆哮を放った。

くっ……!

やっぱりそこまで甘くないか!


「よし! 行くぞ! エリ、ルーシベア、ドーグ!」


言って後ろを振り向く。

すると、全員立って気絶していた。

……あの可愛い可愛いドラゴンが、急にこんなのになったら、そりゃあ仕方ないかもしれないけどさぁ。


「はぁ……」


溜息をつきながら前を向く。

すると、目の前にはドラゴンの炎があった。

どうやら、僕が後ろを向いている間に放たれたらしい。

因みに、僕のステータスは、


名前……ショウ 

性別……男

レベル……85 ポイント283

筋力値……9950

防御値……9999

魔力……10

魔防……350

俊敏値……9999


魔術

……急激成長(フレイムバースト)

剣術

……龍八刀

スキル

……レベルブーストA

……自然回復A

能力

……『どんなものでも消しゴムに出来る能力』


こんな感じ。

注目して欲しいのは、魔防350……。

炎は魔法扱いなので、つまり僕はこの魔防350でこの炎を受けなければならない。

はい、つまりです。

つまりですね。

僕の人生は、ここで終わりです。

嫌だぁぁぁぁぁぁっ!

そんなことを心の中で叫んだものの、意味はない。

そして、僕は、焼け焦げ、死んだ。


「いやいや、防御はエリに任せてて言ったよ?」


否……!

僕は死ななかった。

僕の目の前に、エリが立って守ってくれたのだ。


「エリ! なんで! 気絶していたんじゃ」

「防御の気配を感じれば起きられるの!」

「防御の気配⁉︎」


それが何かはよく分からないが、とにかく助かった。

エリには感謝しなければ……。


「エリ、ありがとう。じゃあ後は、僕に任せてくれ」

「うん、任せるよ。エリ、防御意外に興味ないし」

「さっぱりしてるなぁ……」


さて、ということでここは一気に片付けるとしよう。

早く倒さないと、エリはまだしも、まだ気絶しているドーグとルーシベアは危険だ。


「刹七…………!」


僕は龍八刀、第七奥義、刹七を使った。


刹七……とは、刹那の速さで七回切る技である。

つまり……!

龍王神エドネストは、七等分になり、死んだ。


「ふぅ……」


僕は、身体についた多量の血を服の袖で吹きながらそんな声を漏らした。


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