二十二話《新しい仲間》
「やっぱり、防御は最強!」なんてことを大声で言った女の子は、二人を助けた後、なぜかずっと立ち止まっていた。
なんで攻撃しないんだ?
「ちょ、ちょっと! そこの君! 助けてよぉっ!」
すると女の子はこちらを向きそんなことを言った。
言われたので僕は急いで走り、近づく。
「えーっと、君、なんで攻撃はしないんだ?」
「え、エリは防御しか出来ないの」
「は?」
そんな訳ないだろ……と思い、僕はステータスを確認する。
名前……エリ
性別……女
レベル……68 ポイント0
筋力値……3
防御値……9999
魔力……3
魔防……9999
俊敏値……3
魔術
……絶対完璧防御壁
……魔力破壊防御壁
剣術
……なし
スキル
……防御力究極上昇S+
……魔防究極上昇S+
……物理攻撃半減
……魔法攻撃半減
能力
……なし
本当に防御しか出来ねえええええっ!
「わかったよ、エリ。とりあえず君は下がっていてくれ。こいつは僕が倒すから」
「え? なんで名前を……」
「あ……いや、勘だよ勘。僕って勘は良い方なんだ」
「そうなんだ」
納得してくれたようだ。
というかさっき自分でも名前言っていたしな。
さて、その後。
僕は攻撃が効かなくて唖然としているエルトルゴドを、一方的に倒した。
クエストをクリアしたので僕は、否、僕たちは今、冒険者ギルドに向かっている。
メンバーは、僕、ドーグ、ルーシベア。
そして……エリだ。
「え、エリは本当に良いよ。ただ二人を守っただけだし……」
「いやいや、エリがいなかったらドーグもルーシベアも死んでいたかもしれない。クエストクリアの報酬はエリも山分けだ」
「うーん……エリは防御が好きなだけなのに」
「なんでそんなに防御が好きなんだ?」
「最強だからだよ」
「最強?」
防御のどこが最強なんだろうか?
「攻撃が全く効かないんだよ? それって最強じゃない」
「うーん、まぁ確かに負けはしないだろうけど……」
ある意味最強なのかもしれないけど……。
「あ、そういえば君って名前なんて言うの?」
「ショウだよ」
「職業は?」
「剣士」
そんな風に淡々と質問に答えていく。
「エリの職業はなんなんだ?」
「狂戦士だよ」
「なんでそこまで自分に合わない職業を選んだ!」
狂戦士と防御って真反対な気がする。
職業詐欺だ。
「あ、そうだ。エリ」
「ん?」
「これは提案なんだけど、良かったら僕たちのパーティーに入ってくれないか?」
「え⁉︎」
「嫌なら良いんだ。でも、エリの防御力はとても役立つと思うんだよ」
「嫌じゃないよ! え? 本当にエリで良いの? エリって本当に防御しか出来ないよ?」
「うん……エリ、僕は君に、パーティーに入って欲しいんだ」
「……わかった。エリ、パーティーに入る!」
そう言って、エリはピョンピョンと跳ねながら喜んでいた。
うん、喜んでもらえると僕も嬉しい。
「えーっと、ドーグとルーシベアもいいよな?」
僕は一応、ドーグとルーシベアに、エリがパーティーに入っていいか聞いてみた。
「いいに決まっている」
「勿論だよ」
ドーグが言い、続いてルーシベアが言った。
うん、この二人なら断らないと思っていた。
「だがなぁ……」
すると、腕を組み、首を傾げながら、ドーグがそんなことを言った。
「だが? 何ですか?」
もしかして、何か問題でもあったのだろうか?
「その子、強いのか? まだ子供だし、モンスターとの戦いは過酷だ。殺されるかもしれないぞ?」
「さっきこの子に守ってもらったのを、もう忘れている⁉︎」
殺されるかもしれないぞ……って、殺されそうになってたのは、お前じゃないか、ドーグさんよ。
こいつのバカさ加減には、いい加減呆れさせられる。
初めて話した時はそんな印象なかったんだけどなぁ……。
冒険者ギルドに着いた。
クエストクリアの報酬を受け取りに行く。
「はい、クエストクリアの報酬ですね」
受付の人はそう言って、コインを八枚取り出した。
「えーっと……これは?」
「クエストクリア報酬です!」
「あの……ちょっと少なく」
「クエストクリア報酬です!」
「クエスト依頼の紙には……」
「クエストクリア報酬です!」
「紙には、十五枚と……」
「クエストクリア報酬です!」
どうしよう……ゲームの世界に入ったみたいだ。
十五枚から八枚って……ここの冒険者ギルド悪徳すぎる。
「わかりました……ありがとうございます」
「またのお小遣いをお待ち……またのお越しをお待ちしております!」
「おい、今お小遣いって!」
「またのお越しをお待ちしております!」
「え?」
「またのお越しをお待ちしております!」
どうやらまたゲームモードになってしまったらしい。
もうこれは諦めるしかあるまい。
はぁ……帰るとしよう。
それに、八枚でも別に良かっただろう。
パーティーメンバーが偶数になったから、二枚ずつでピッタリだ。
冒険者ギルドから出てくると三人が気付いて僕の元へやってくる。
「これが、僕たちの初クエストクリア報酬です」
言って八枚のコインを見せる。
「なんだか少なないか?」
ドーグが言った。
「冒険者ギルドにかなり引かれちゃうみたいで、十五枚から八枚になったんだ」
「なんだと……」
「まぁ……仕方ないよ」
「うーむ、そうだな。気にしていても仕方ない。よし! 今日はもう遅い! 宿に泊まって明日から全力で行くぞ!」
ドーグはそんな風にみんなに呼びかけた。
「おう!」
「そうだね!」
「うん!」
僕、ルーシベア、エリと順に、僕たちはそう答えた。
うん、これならいけるかもしれない。
コックと木こりと狂戦士(防御しか出来ない)がいるようなパーティーだけど、いつか……一流のパーティーに!
「そういえば、宿ってどこにあるんだ?」
ドーグはそう言った。
どうやら、一流のパーティーへの道は、まだまだ長そうである。




