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二十話《冒険者になろう!》


 目覚めると、おっさんの顔が目の前にあった。


「うわぁっ!」

「目覚めたか、ショウさん」

「え、あ、はい」


えーっと今の状況をまとめよう。

朝起きる。

冒険者にならないかとガレイハさんに言われる。

ガレイハさんに着いて行く。

崖から落とされる。

男に気絶させられる。

そして今。


「あの、ここ……どこですかねえ?」


周りは薄暗くて良く見えないし、本当にここどこだ?


「ここは馬車の中だ。ショウさん」

「馬車?」


ああ、そういえば誘拐された時もこんな乗り心地だった気がする。

周りは目隠ししてたから完全に分からなかったけど。


「手荒な真似をしてすまなかったな。ショウさん。ガレイハさんが、こうでもしないとショウの奴はハルから離れねえとか言うから……」

「え、ガレイハさんの知り合いですか?」

「おーっと、説明が遅れたようだな。俺はドーグ。お前がこれから入るパーティーの仲間だ!」


……?


「ちょっと待ってください、パーティー? あの、つまり……この馬車は」

「ああ、隣国の俺の住んでいる町にある、冒険者ギルドに向かっている」


……まさか、冒険者になるとは言ったがこんなにすぐとは。

まあそりゃあ僕にそのことを言えばハルと分かれたくないとうるさいだろうし、こんな手荒な真似もするよなぁ。

それでも許せないな。ガレイハさん……。

ハルに分かれも言えないなんて寂しすぎる!

うーん、でも仕方ないか。

もうこの状況になったら諦めるしかないと、僕の感が囁いている。

前も早く家に帰りたいと思っていたが、なんだかんだで道場の四年間は楽しかったしな。

ハル……バイバイ。

僕は冒険者になってきます。


「……えーっと、パーティーメンバーは貴方だけなんですか?」

「貴方は辞めてくれ。ドーグで頼む。もちろん、俺の方が年上だからといって、さん付けは無しでな」

「は、はぁ……じゃあドーグ、パーティーメンバーはお前だけなのか?」

「いや、女格闘家が一人いるな」

「え……僕含めても三人じゃないですか。後二人はどうするんですか?」

「現地調達!」

「出来るかぁっ!」


五人でしか迷宮に入れないのに、三人で迷宮に入り、残り二人を迷宮で調達とかもう無茶苦茶じゃないか。

どうしよう……まともかと思ったけどアホっぽい。


「まあパーティーメンバーのことは置いておくとして、ドーグ。お前の職業を教えてくれ」

「ウッドカッターだ」

「ウッドカッター⁉︎」


なんだか強そうだ。


「どういう意味なんだ? ウッドカッターって」

「木こりだ」

「……木こり? ってあの木を切るだけのあの木こり?」

「そうだ」

「ふざけんなっよっ⁈」


木こりってなんだよ!

なんでそんな職業が冒険者に必要なんだよ!


「ふざけていない。それを言うなら女格闘家のほうがふざけている」

「いやいや、ドーグ。女格闘家は格闘家だろ? 木こりの何倍も普通だ」

「いや、女格闘家は格闘家じゃないぞ」

「もうそれ女格闘家じゃないじゃないか……」


ただの女だ。

こいつはなぜ格闘家じゃない女を女格闘家だなんて呼ぶんだ。


「服は格闘家っぽいんだがなぁ……はっはっはっは」


……どうしよう。流石、過疎状態の冒険者ギルドの冒険者。

全く役に立つ気がしない。


「それで……その格闘家風の女の職業はなんですか?」

「コックだ」

「料理作ってろ!」


なんで冒険者になろうとしたんだ、その人。

剣士とか魔法使いとかそういう冒険に役立つ職業の人いないのか?

なんで木こりとかコックなんだよ。

それもう普通の仕事じゃないか。


「とりあえず、冒険者ギルドに着いたら職業を変えませんか? 僕も職業登録しますし」

「うむ……そうだな。俺もロガーをやってみたいと思っていたんだ」

「ロガー?」

「木こりだ」

「木こりから離れろ!」





 まぁ、そんな感じで、僕たちは冒険者ギルドにたどり着いた。


「冒険者ギルドにようこそ」


受付? にいる女性がニコリと笑ってそう言う。

うん、冒険者ギルドって感じだ。

ギルド内にも筋肉質の男や、強そうな女の人がいる。

よし! みんなおかしいのかと思ったら、おかしいのはドーグと女格闘家だけらしい。

良かった良かった。

ここから二人、しっかりと厳選すれば少しはまともなパーティーになるかもしれない。


「おお! ドーグ。なんだ? そのガキは」


すると男の一人が話しかけてきた。


「新入りか?」

「この冒険者ギルドに新入りとは珍しいな」

「さあて、どれほどのものかな?」

「剣士になってくれればありがたいがなぁ」

「くはっ、所詮新人、期待はせぬよ」

「まぁまともな職業ならなんでもいいよな。俺たちの職業、ゴミばかりだし」


そしてその一人の男につられるように、周りの奴らがそんな風に騒ぎ始めた。

というか最後の奴の言葉、聞き逃さなかったぜ?

俺たちの職業ゴミばかり?

まさか、まともそうなこの人たちも、ドーグみたいなふざけた職業ばかりなのか?

ちっ、まぁ良い。

とりあえず冒険者登録だ。


「あの、冒険者登録したいんですが」

「冒険者登録ですね。では希望職業をどうぞ」

「剣士で」

「え?」

「だから剣士で」

「は?」

「剣! 士! で!」

「はぁ?」

「だーかーらー! 剣士!」

「すいません、もしかしてですが剣士と言っているのですか?」

「だからそう言ってるじゃないですか……」


すると、周りから歓声が巻き上がった。

おお! だとか、すごいぞおおお! だとかそんな感じ。


「えーっと、はい。了解しました。では冒険者登録に必要なので、血をお渡しください」

「血……?」

「はい、ステータスを図りますので」

「へえ、血でステータスなんて見れるんだ」

「はい」


なるほど流石、冒険者ギルドがある町だ。

技術は発展しているらしい。

ということで、僕は小刀を一本ホルダーから出し、指の先を少しだけ切って、もらった瓶の中に血を一滴垂らした。

そして手渡す。


「はい、ではステータスの確認は数秒ほどですみますので、しばらくお待ち下さい」

「はい」

「え⁉︎」

「どうかしたのですか?」

「あの、このステータスはいったい……」


ステータスを書いた紙を見せられる。



名前……ショウ 

性別……男

レベル……85 ポイント283

筋力値……9950

防御値……9999

魔力……10

魔防……350

俊敏値……9999


魔術

……急激成長(フレイムバースト)

剣術

……龍八刀

スキル

……レベルブーストA

……自然回復A

能力

……aptdtgmw



二つもステータスカンストしてたらそりゃあ驚かれるよね。




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