SSSその1 「バス停男女」
漫才みたいな会話をするほど仲がいい
とあるバス停の列に並ぶ、男女の高校生ペアの会話。
「男女交換って、あるじゃない」おもむろに女の子のほうがつぶやいた。
「え、ダンジョン交際」すかさず男のこの方がボケる。
「なんでダンジョンで交際するのよ。外でなさいよ。モンスタかっ。じゃなくて、なにかの拍子に男女の躰と心が入れ替わっちゃうって、よくアニメとかであるじゃない」
「ああ、よくあるね。雷が落ちた拍子に、とか」
「そうそう」
「階段を一緒に転げ落ちた拍子に、とか」
「あるある」
「こうやってバスを待っていたら止まらずバスが突っ込んできたりとか」
「リアルかっ。怖いわっ」
「そして目を覚ますと、ぼくが君で、君が君」
「君二人になっとるわっ。増えてるわっ。ぼくいなくなっとるわっ」
「ごめん、間違えた」
「入れ替わるのよ」
「あそっか。そして目を覚ますよ、『どこ見てんのよ』」
「曲がり角で男の子とぶつかっちゃってパンチラ。よくあるシーンよね――、ってもっとツッコミどころあるでしょ。だから躰が入れ替わってるのよ」
「そしてヒロインが学校の朝礼で転校生を紹介される。なんと、転校してきた少年とは、今朝ぶつかった彼だった。『どこみてんのよ』」
「見てもいいでしょう。紹介されてるでしょう。やりなおすけど、たとえば今日だけでも、わたしとあんたが、入れ替われたらいいのになーって」
「ぼくが君に。ええぇ……」
「なんでそんな嫌な顔しなくても……」
「でも、アニメとか漫画みたいに、ドタバタしないで、ぜったい、案外普通に生活できるよね。男女差あっても、同じ人間なんだし」
「あなた女を嘗めてるでしょう。女の生活って大変なんだからねえ」
「どのあたりが」
「あなた女子トークできるの」
「できるよ」
「じゃあやってみなさいよ」
「今日ぉ、あたしぃ、お兄ちゃんという名のATMから諭吉さん出金しちゃったんだけどぉ」
「女子ちがうわっ。それ悪女よ」
「でも、昨日は、お父さんという名の景品交換所で特殊景品を預けてきましたぁ」
「だから女子ちがうわっ。おっさんよ。そのネタわかったらいろいろ問題よ」
「じゃあ女子トークってどんなのさ」
「えー、まあ、九割悪口かな……」
「怖ぇよ」
「あ、でもでも、残り一割はコイバナだし」
「ああ、やっぱり」
「そうそう。それで、興味ある男子が被って、嫌な空気になって、互いに嫌味・妬みの蔑みあいになって……。ごめん、やっぱ女子トーク十割悪口だわ」
「女子怖ぇー」