9 僕が姉さんのことを好きなのは、シスコンというわけでは決してなく
本編これで最終です。
その後のことはよく覚えていない。
一日のうちにいろんなことがたくさんあり過ぎて、僕の許容量がオーバーしたんだと思う。
気がついたら、朝になっていた。
翼の家のゲストルームのベッドは、自分の家のものより遥かに寝心地が良くぐっすりだった。
部屋から出ると、無駄にキラキラした翼に「おはよう、よく眠れた?」と声をかけられ、家政婦さんが出してくれたおいしい朝食を食べたら、何だかすべてが夢だった気がしてきた。
だけど、お暇して自分の家へ帰ろうとした時。
「夢じゃないからね」
と翼に言われたことで、現実だと実感した。
「何だか君、スルーしちゃいそうだったからさ」
返答できずににいる僕に、翼は苦笑いでそう言った。
「まあ、比沙子さんのことで手一杯の今言ったのは悪かったよ。でもまあいい機会だと思って。あ、もちろん今返事なんかいらないよ? 無理なのはわかっているからね。君が私のこと友人としてしか見ていないこともわかっているし。……でも」
翼はにっと笑みを口に浮かべて囁いた。
「覚悟していてね? 私もこれから本気でいくことにしたから」
そう言った翼は、イケメンパワー全開のオーラが漂っていた。
僕は思った。
絶対こいつは生れてくる性別間違えた、と。
その後の後日談。
姉さんは少し照れた様子で僕に出来たばかりの彼氏を紹介してくれた。
顔を真っ赤にして、後輩である僕に過ぎるほど丁寧に挨拶してくれたその人は……。
……何と言うか、いい人、だった。
他に言いようもなく、これは、いい人、だ。
並んでいる二人を見て、きっと十年経っても二十年経ってもこうしてほんわかいるんだろうなあ、と僕は思った。
何かがストン、っと落ちてきたような気がした。
これで本当に、気持ちにケリがついた、そんな。
「姉を泣かせたら、僕が許しませんから」
ただ、これだけは譲れないと言った僕に、彼は真剣な顔をして頷いた。
そして「約束する。絶対に幸せにするから」と。
その言葉に、姉は嬉しそうに微笑んだ。
……何だか交際の挨拶ではなくて、結婚の挨拶のようだったけど。
その様子を隣りで見守ってくれていた翼は、よくやったと笑みを浮かべた。
今まで何とも感じなかったその笑顔に、僕は少しどきりとする。
王子様、と呼ばれていても、翼は特段男臭いというわけではない。
中性的な、美形なのだ。
今は男子のような格好をしているからイケメンと言われるが、女子の服を着れば美女と言われてもおかしくない。
格好一つ違えれば、騒ぐのは女子から男子へといとも簡単に変わるのだろう。
そんな翼が僕のことを好きだと言う。
翼の告白を受けてから、僕の胸の鼓動は不整脈のように、翼に一挙一動に左右される。
そんな僕を知ってか知らずか、翼はいつもにのように僕をからかうように言った。
「まったく、君ときたら本当に比沙子さんが大好きなんだから」
それに対して僕は応える。
「別に、だって姉さんは僕の姉さんなんだから」
それは、本当に言葉通りの意味で。
だから、僕は心からの笑みを浮かべ、翼に言った。
「弟が、姉を大事に思うのは当たり前のことだろ」
僕が姉さんのことを好きなのは、シスコンというわけでは決してなく、ね?
ただ後2話番外入れます。
比沙子姉さんと翼視点で各1話ずつ。
いましばらくお付き合いお願い致します。




