8 翼の告白
お待たせいたしました。
「やっぱり、ぶっさいくだよ、君」
やっと泣き止んだ僕に、翼は笑いながらそう言った。
「……うるさい」
「はいはい、調子出てきたみたいだね」
翼がティッシュをボックスごと差し出してきたので、僕は何枚かティッシュを抜き出すと思いっきり鼻をかんだ。
「……すっきりしたろ?」
「……うん」
「で? 比沙子さんには言うの? 好きだって」
翼のその言葉に、胸がチクリと痛む。
「……今更だろ。姉さんを、困らせるつもりはない」
「言えば、キリがついてもっとすっきりするかもよ?」
「それは僕の話であって、姉さんは絶対に困る。それだけはしたくない」
「……だから、早く玉砕しろって言ったのに」
その言葉に、ああ、こいつは全部知ってたんだなって思った。
「……でも、たとえそうだとしても、姉さんが僕に応えてくれるわけじゃないだろ。どのみち困らせるだけだったとしたら、僕はこれでいい」
たとえ。気持ちを伝えることはできなかったとしても。
「……本当に、君って比沙子さん好きだよね」
「僕は何度も言うけど」
「はいはい、シスコンじゃないんだろう?」
翼は可笑しそうにわらった。
「でも、今後はほどほどにしないとね? シスコンになっちゃうよ?」
弟でいる覚悟をしたんだろ? と翼に念をおされる。
「……こんなの、普通の姉弟の領分だ」
「いや、ないから」
ぱたぱたと翼が手を振る。
どこか生真面目なその表情に、僕も笑いがこぼれる。
すこし前までの絶望的な暗い気分が、翼とこうして話をしていることによって、だんだん浮上してくる気がした。
「うん、だいぶ元気になってきたね」
翼が嬉しそうに笑う。
「……ああ、悪かった」
「ふふ、素直な君なんて、気持ち悪いね」
「……うるさい」
「ああ、そっちのがいいよ。落ち着く」
そう言うと、翼は僕の目もとを指で触れた。
「……だいぶはれちゃったね。明日は戻るかな。せっかくの綺麗な顔が、台無しだ」
「綺麗言うな」
「君も言うじゃないか、イケメンだって」
「お前は喜んでるだろ」
「まあ、嫌ではないけどね」
そう言うと、翼は自分の髪をつまんだ。
「うーん、ちょっと伸ばしてみるかなあ」
「髪をか?」
「うん、だって比沙子さんも長いだろ」
「何でここで姉さんが?」
意味がわからず、僕は首を傾げた。
「うん? だって君、長い髪のが好きなんだろ」
「別に拘りはないけど、何で」
「うん、やっぱり君達姉弟は鈍いな」
「は?」
「まわりでいくらイケメンと騒がれても、やっぱり自分はノーマルだと思うし」
「え?」
「本来の好みは文化祭実行委員長みたいなタイプなんだけど」
「……?」
「うん、やっぱりわからないんだね、君。じゃあ、はっきり言おうか」
翼は、女の子達を虜にするキラキラのイケメンオーラ全開の笑顔を浮かべた。
「……悠斗、私は君のことが好きだよ」
はいそうです、実は翼は女子でした。
一人称入れないように、気をつけてました。
次回、最終回です。




