6 姉の告白
所謂この回は起承転結の転でしょうか。
姉が、その文化祭実行委員長と付き合うことになったと報告してきたのは、それからすぐのことだった。
「あのね、私のこと、前からずっと好きだったんだって」
僕の方が、もっとずっと前から好きだった。
「告白されて、びっくりしたけど、嬉しかったの」
その言葉は、いつか僕がもらうはずのものだったのに。
「まだお父さんやお母さんには恥ずかしくて言えないけど、ゆんちゃんにはどうしても報告しておきたくて……」
姉は、恥ずかしそうに頬を染め、照れたように笑いながら言った。
「だって、ゆんちゃんは、私の大事な弟だもの」
弟なんかじゃない。
僕の方がずっと前から好きだった。
僕の方が、ずっと姉さんのことを想ってる。
そんな奴より、僕の方が。
ずっと。
「姉さん……」
「なあに? ゆんちゃん」
「……………………良かったね」
やっとのことで絞り出した声は、それだけを紡いだ。
姉は、花綻ぶようなとても綺麗な笑みを浮かべた。
ちょっと出かけてくる、と言い置いて、僕は家を出た。
姉と同じ家の中にいることが、どうしても耐えられなかった。
空はどんよりと曇り空だった。
まるで今の僕の心を反映しているかのようだった。
どれくらい、どこを歩いたかわからない。
気がついたら、土砂降りの雨になっていた。
周囲には誰もいなかった。
ふと、涙がこぼれた。
次から次へと溢れだしてくる。
それは、次から次へと降ってくる大量の雨の水と一緒に、僕の身体を伝わり、地面へと吸い込まれていく。
姉さん。
姉さん。
ずっと、好きだった。
ずっと、好きだったのに。
哀しい。
苦しい。
辛い。
涙が止まらない。
今、はじめて思った。
どうして、姉さんは僕の姉さんなんだろう。
姉として、はじめて目の前に現れた、姉さん。
そうでなければ、今僕と姉さんは、別の形で一緒にいられただろうか。
姉さんが、姉さんでなかればよかったのに。
姉さん、姉さん。
僕の、姉さん。
…………比沙子。
あなたが、ずっと、とても、好きだった。
次回は明日更新。




