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街を破壊しよう


 UAVの残骸が見える場所に辿りついたが、敵影は確認できない。


『錬、今UAVの飛んでた下辺りにいるんだが、敵さんはいないみたいだよ?』

「待ち伏せしてるかもしれんから注意して、辺りを索敵してくれ」

『了解』


 そう言って大助はビルの屋上から降りて、辺りの索敵を開始した。


「あ、言い忘れたが地面には降りるなよ。相手は重量二脚とタンクだから、屋上に上がるのは難しい。屋上を移動しれてば、まず超至近距離で遭遇することもない。だが、地面だとばったり遭遇する危険がある」

『──ちょ、言うの遅いよ!』


 大助が慌てて悲鳴のような声を上げた。

 目の前に重量二脚とタンクが待ち構えており、銃口を大助に向けていた。

 UAVが墜落した近くのビルの一階が一部削れており、そこに二機が潜んでいたのだ。

 

「どうした大助?」

『敵と遭遇。奴らビルに穴掘って、隠れてやがった』


 大助は慌てて回避行動に移る。

 だが、それよりも早くタンクのガトリングガンが火を噴き、連続した弾丸が大助を襲う。


 ──カンカンカンカンカンカン!


 金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き、機体の装甲を激しく削っていく。

 大助のコクピット画面には被弾を警告するアラート音がうるさいぐらいに響いている。

 

『……まじやべぇ』


 タンクと正面から撃ち合ってはいけないと分かっていたのに、その状況に陥ってしまった愚かな自分に、大助は激しく後悔していた。

 大助もマシンガンで応戦するが、ほとんどタンクにダメージを与えていられない。


 タンクの横で重量二脚がアックスを振り上げた。

 アックスの持ち手の先からはチェーンが繋がっており、その反対には鉄球がついている。形状がどことなく鎖鎌に似ている武器だ。

 重量二脚の手からアックスが縦に投擲された。

 大助の逆関節はジャンプで逃げるが、アックスは半円を描くように機体の上から襲い掛かる。


 ──回避できない!


 このままアックスの直撃を喰らって、機体を真っ二つに切断されると、大助は諦め掛けた。

 しかし、大助の持っていたマシンガンがタンクの弾丸を受けて、爆発した。

 空中にいた大助の機体は、爆発の反動で後ろに吹き飛ばされる。

 落ちてきたアックスは、マシンガンを持っていたスカイフレアの右腕を切り落とした。

 

『くそったれ、これでも喰らえ!』


 アックスの直撃を運良く回避出来た大助は、すぐに戦意を回復させ、肩に装備した焼夷爆雷しょういばくらいを散布した。

 辺り一面が一瞬にして火の海になる。タンクと重量二脚は火の荒波に飲まれて、大助の視界から消えた。


「ふう、なんとか助かったー」


 ビルの屋上から火の海を見下ろして一息つく大助。なんとか危機を脱出できたと安心していると、火の中から鉄球が突然、大助に向かって飛び出してきた。

 重量二脚の持っていたアックスの反対側についていた鉄球だ。

 

『マジか! ……ぐああ!?』


 大助は慌てながらもジャンプで避けようとする。しかし回避は間に合わず鉄球は逆関節の右足に直撃する。空中でバンラスを崩し落下するとかと大助は思った。

 だが鉄球はそのまま機体の脚に引っ付いたまま離れない。


 鉄球からは強力な磁力が発生しており、大助の機体を捕まえて逃がさなかった。

 大助は鉄球に繋がれた鎖によって、火の海に引きずり込まれてしまった。

 火の海の中で重量二脚がアックスを持って待ち構えているのが見えた。

 このままさらに鎖を引かれて重量二脚の接近を許してしまったら、今度こそアックスで真っ二つにされる。


 ぐいっと鎖を引かれるが、大助には為す術がない。重量二脚に中量逆関節で綱引きを挑んでも勝ち目はない。

 大助の目に重量二脚がアックスを振り上げた姿が写る。

 今度こそ、回避は不可能。


 ──やられる。


 大助はアックスの餌食になることを覚悟した。


「やらせるかよ!」


 大助を捕まえていた鎖を白い機体が切り裂いた。


『錬! よっしゃ!』


 大助はブースターを思い切り吹かせて、重量二脚のアックスを寸前で回避した。


「よお、大助。待たせたな」


 錬が大助に笑いかけた。


『きっと来てくれると信じてたよ』


 大助は嬉しさのあまり涙目になっていた。


「当たり前だ。俺達はチームなんだから」

『そうだね。でも、錬が姿を見せちゃったから、奇襲は出来なくなったよ。これからどうする?』

「当初の予定通りに敵を分断する」

『どうやって?』

「大助の焼夷爆雷で良い具合にビルが炎上してるだろ? ビルを倒壊させて敵を瓦礫の下敷きにする」


 大助の問いに錬はにやりと笑って答えた。


『……すごいこと考えるね』

「まともにやりあって勝てない時は、地形を利用するのは戦術の基本だ。タンクは今、ビルの中にいるから、まず逃げられない。重量二脚はギリで逃げられる感じだな。よし、そんじゃ、ビルの根元を攻撃して倒壊させるぞ」


 そう言うと錬はビルの屋上からライフルを発射する。大助も背中のミサイルで炎上しているビルを攻撃した。

 重量二脚はこちらの意図を察して、ビルから離れていく。タンクもビルから逃げようとするが、それよりも早くビルは倒壊して下敷きになった。


「よし、分断成功だ。タンクが脱出する前に、二対一で重量二脚をボコるぞ」

『うひょー。ホントにうまくいった。さっすが錬! 頼りになるぅ!』






「ほのか大丈夫?」


 月陽はビルに生き埋めになったほのかに声を掛けた。


『うん、大丈夫。せやけど、抜け出すのにちょっと時間が掛かりそうやなあ』


 ほのかは月陽に心配をかけまいと笑顔で返した。


「そう無事で良かった。ほのかが脱出するまで、私が時間稼ぎするから任せて」

『ごめんな。すぐに脱出するから、あんまり無理せえへんでね』

「大丈夫よ。私のグロリアスはそんなに柔じゃない。ほのかが来るまで持ちこたえて見せるから」

『うん、そやな。私、信じてるから』

「ええ、信じててちょうだい」


 そう言い終えると、月陽はいったんほのかとの通信を終了した。


「さーて、二対一になっちゃったわけだけど、全然負ける気がしないわ。もやし男子が二人揃ったところで、返り討ちにしてあげる」


 月陽はホワイト・レイヴンとスカイフレアを見据えて、笑っていた。

 グロリアスは右手にアックスを持っている。本当は左手にアックスと鎖で繋がっている鉄球を持っていたのだが、鎖を切られてしまったため鉄球は地面に転がっている。

 月陽は空いた左手にハンドガンを装備させ、ビルの屋上から見下ろしてくる二機に向けて発射した。


 ハンドガンからはピンク色の弾が発射される。その弾はビルにぶつかると、びしゃりと破裂して、粘着性の強い液体を周囲にばらまいた。

 グロリアスは重量二脚なので、機動力はない。その機動力の無さを補う為に、敵の機動力を奪ったり、敵を拘束する武器を持つ。そして相手の動きを封じたところに必殺のアックスをたたき込むというのが、基本的な戦闘スタイルになる。


 錬と大助はビルからビルへ移動して、粘着弾を避ける。だが、粘着弾は避けたところで、ビルに広がり、錬達の逃げ場所を少しずつ蝕んでいった。

 錬達は逃げながらも、遠距離から応戦してくる。しかし、その攻撃はグロリアスに致命傷を与えるまでには行かない。グロリアスを倒すには、強力な近接武器でしか無理だと月陽は理解していた。


「さあ、早く掛かって来なさい。その時があなた達の最後よ」


 錬達が近接攻撃を仕掛けてくるのを、月陽はいまかいまかと待ちわびていた。


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