表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/33

キラキラの海とヤキモチの風

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は、三人で過ごす「夏の海」です。初めて人の目線で見る海、はしゃぐミニエルとエル、そして相変わらず巻き込まれるなおきの日常(?)を、コメディ多めで描いてみました。


きらきらした海、潮風、かき氷に焼きとうもろこし。そして、ちょっとだけ独占欲強めなお姉ちゃん天使も添えております。


楽しくて、騒がしくて、でも最後は少しだけやさしい――そんな夏の一日を、ゆるっと楽しんでいただけたら嬉しいです。

電車を降りた瞬間、潮の匂いがふわっと鼻をくすぐった。


「しおのにおい!!」


ミニエルがぴょんと跳ねる。


坂を下りた先――


視界いっぱいに、青。


空と海の境界が溶け合って、きらきらと光っている。


白い雲。

まぶしい太陽。

風に揺れるヤシの影。


波打ち際まで走った二人が、同時に叫んだ。


「ひろーーーい!!」


人の目線から初めて見る海。


寄せては返す波に、きゃあきゃあと逃げたり追いかけたり。


水面に反射した光が、エルとミニエルの金色の髪に跳ねる。


「……空が、落ちてきたみたい」



次の瞬間。


ざばぁっ!


「冷たい!!!」


テンション爆上がり。


ミニエルは波に突撃、エルは負けじと水をかけ返す。


金色の髪に水滴が光る


「なおきも来なさいよ!」


「はーい」


今日の夏が、始まった。


砂浜に寝転んだり、プカプカ浮いて漂う女の子達とは違い、飛び込んだり潜ったり大騒ぎなミニエルとエル


海水浴とはこう言う物なのか!となおきは思った



ひとしきり遊んだあと、三人で海の家へ。


かき氷を前に、ミニエルの目が本気。


「これ山?」


「いちご味だよ」


ミニエル、勢いよくかき込んだ!


「頭キーーーン!!」



エルは焼きとうもろこしを両手で持っている。


じゅわ、と醤油の香ばしい匂い。


「これ……ずるい」


「何が?」


「美味しすぎる」


頬を緩めながら、少しずつかじる。


汗ばんだ肌、潮風と、甘い氷と、とうもろこしの匂い。


三人とも、笑いっぱなしだった。



波打ち際に戻った3人、パラソルの中でお喋りしていると



そのとき。


「ねぇ、お兄さん一人〜?」


振り向くと、水着姿のスタイル抜群なお姉さん。


距離が、近い。


「よかったら一緒に泳がない?」


腕に指先が触れた…


空気が変わる。


「一人じゃないんだけど」


エルの声は、やけに落ち着いていた。


次の瞬間。


お姉さんの足元の砂が、なぜかじんわり熱くなる。


「あっつ!?!」


ぴょん、と飛び退く。


さらに、日差しが一点集中。


「今日、日差し強くない?」


「熱っつ!!頭皮火傷した!!」


なぜかサングラスが曇る。


「何これ、前見えない」


波がちょうど腰まで来る。


ざぶんっ。


「きゃっ!」


「……自然現象よ?」


エルはにっこり笑う。


目は笑っていない。


ミニエルは拍手。


「お姉ちゃん本気モード!」


お姉さんは「ごめんね」と言いながら首をかしげて去っていった。


なおきは小さく息をつく。


「やりすぎでしょ」


エルは頬をぷくっとさせて


「やってないわ」


潮風が、少し強く吹いた。



さらに追撃。


「え、東雲直希くん?」


振り向くと、高校でパン争奪の時のあの先輩だった!!


「久しぶり!夏休みだから会えなくて寂しかったんだから!あっ、日焼け止め塗ってあげよっか?」


距離、近い(二回目)。


「い、いや大丈夫で――」


「背中、自分じゃ無理でしょ?」


と言って日焼け止めのキャップを開く‥



風が止まる


先輩の手が、なおきの背中へ近づく。



あと五センチ。


――つるっ。


「え?」


オイルのチューブが、なぜか手からすぽんと抜け落ちる。


「え、ちゃんと持ってたよね?」


もう一度。


ゆっくり、慎重に


「ぶわっ」


突風。


「ちょ、目に砂入った!」


その間に、なおきの背中にひんやりとした感触。


完璧に塗られている。エルだ!



耳元で、甘い声。


「触らせるわけないでしょ」


ぞくっとする。


「なおきは、私が管理するんだから」


「言い方!!」


ミニエルはニコニコ。


ついでに風で帽子をヒョイと吹き飛ばし、コロコロとしばらく転がした


「え?何これ、待ってよ!!直希くん、とりあえずまたね」


先輩は不思議そうに去っていった!



「お姉ちゃん怒ると風つよいねー」


エルはぷいっと横を向く。


「エルなんかありがとう!」


少しだけ、頬が赤い。



そのあと浮き輪で浮かんで、3人波に揺られてぼーっとしたり、ミニエルを肩車して深いところへ行ったり、あっという間に時間が過ぎた



夕方。


太陽が傾き、海がオレンジ色に染まる。


さっきまで騒がしかった波も、どこかやわらかい。


三人並んで座る。


エルが足をぱたぱたさせながら、海を見つめる。


「ねぇ」


「ん?」


「今日、楽しかった」


真っ直ぐな声。


「なんか、体も心も、あったかい」


「暑いけどね!!」


「そういうことではないんだけどね」



ミニエルが両手を広げる。


「海、きらきらだったね!」


沈みかけの太陽が、水平線を金色に縁取る。


エルがぽつりと言う。


「見てるだけじゃ、わからなかったなぁ、これは!」


「何が?」


「海って、こんなに気持ち良くて楽しかった!」


そっと、なおきの手を握る。


「来れてよかった」


ミニエルは砂に絵を描いたり消したりしている


潮風が、三人の髪を揺らす。


夏の海は、騒がしくて、眩しくて、少し甘い。


「‥ねえねえ、なおきさぁ、女の人にモテすぎだよねー」


ゾワッ!


なぜか、一瞬なおきの首から背中にかけて悪寒が走った‥


ミニエルさん、そう言うことは言わないでね!


「あはは」


「お姉ちゃんの顔見てーー」


僕は見れなかった‥


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


はしゃぐミニエルと、さりげなく(しっかり)守りに入るエル、そして振り回されるなおきの、いつも通りで少し特別な夏の一日でした。


楽しいだけじゃなく、「来れてよかった」と思える時間の温度が少しでも伝わっていたら嬉しいです。


これからも三人のやさしくて賑やかな日常を、見守っていただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ