表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/33

膝の上の天使と屋上ランチ

いつも読んでいただきありがとうございます!


ついに学校編・昼休み回です。約束は15時のはずなのに、待ちきれずに来てしまうダブエル。なおきの平穏な学園生活は、静かに(そして膝から)崩壊していきます。


今回は「膝の上の天使」と「屋上ランチ」のほのぼの+わちゃわちゃ回。三人だけの特別な空間と、少しだけ距離が近づく時間を楽しんでいただけたら嬉しいです

昼休みのチャイムが鳴った瞬間、校内は一気に騒がしくなる。


購買へダッシュする足音。

弁当のふたを開ける音に笑い声。



「なおき?!今日学食行く?!」


同級生が誘ってくれたが…


「今日はやめとく。ごめんねっ!」


「おう!じゃ俺達だけで行くわ」


「また誘って」


んな、何気ないやりとりなのだが…



――そんな中…


なおきの席だけが、異様だった。


右膝にミニエル。

左膝にエル。


完全占拠。


周りから見れば、少し挙動不審な男子が一人座っているだけだが、本人は両足に

堕天使を乗せている。


「……ところでさぁ、僕15時に校門って言ったよね?」


ひそひそ。


「今、12時半なんだけど」


「えへへ、待ちきれなかった!」


「あなたが寂しいかな?って来てあげたのよ」


「来てあげたのよ、じゃない」


このままでは物理的にお昼休みどころではない


「よし。パン二人分買って、屋上行こう」


「屋上!? 行く行く! 高いとこ好き!」


「屋上……人はいないのかしら?」


興味、ありありである。



ーーーーー



購買でパンを買って、ひと気のない階段へ。


「ではお二人、仕事です。屋上の鍵を開けてください」


「仕事」という響きに、二人がにやりと笑う。


「特別よ」


「なおき、見ててねー!」


エルが手を差し出す。


カチャリ。


柔らかい光とともに何もない空間から、古びた真鍮の鍵が現れる。



ガチャリ。


重い金属音が、昼休みの喧騒を切り裂く。


次の瞬間――


扉が、ゆっくりと外へ押し開かれた。


ぶわっ。


光が、溢れ込む。


視界いっぱいに広がる、抜けるような青。


雲ひとつない空が、まるで世界の天井を取り払ったみたいに高く、どこまでも続いている。


黄色い日差しがコンクリートに反射してきらめき、風が一気に三人を包み込んだ。


教室の空気とは違う、

少し乾いていて、少し温かくて、

肌を撫でるたびにくすぐったい風。


ミニエルの髪がふわっと舞い上がる。


「わああああ!!」


声が空に溶ける。


フェンスの向こうには、街が広がっていた。

小さな車、遠くのビル、きらきら光る川。


まるで世界を見下ろしているみたいだ。


エルは一歩、外に出る。


その瞬間、

金色の髪が光を含んで揺れた。


一瞬だけ――


本当に“天使”が空へ帰る直前みたいに見えた。


「……悪くないわね」


けれど彼女は空へは飛ばない。


振り返る。


なおきを見て、ほんの少しだけ微笑む。


「貸し一つよ」


ここは天界じゃない。


でも、


今この瞬間だけは、


三人だけの、特別な場所だった。



「すごーい! ねえ見て! 猫いる!」


ミニエルがフェンスに張り付く。



「天界ではね、こういう“悪いこと”は全部罰だったわ。でも今は……このドキドキも、生きてる証みたいで嫌いじゃない」


難しい話は、ミニエルには届いていない。


「パン食べよー!!」


空気、即回収。



「ハムカツサンド、焼きそばパン、たまごサンド。どれがいい?」


「ハムカツがいい!!」


「……私は焼きそばパンにするわ」


屋上の隅に丸くなって座る。


いただきまーす!!


ミニエル、ハムカツにかぶりつく。


「じゅわーってする!」


エル、上品に焼きそばパン。


「麺とパン……混ざってる……不思議……でも、美味しい」


なおきは気づいていた。


エルの視線が、たまごサンドに向いている事に!


無言で。


ぐい。


たまごサンドを口に押し込む。


「んむっ!? な、なにするのよ!」


もぐ。


……。


もぐ。


耳まで赤い。


「……っ、美味しい、ありがと」


「どういたしまして」


「べ、別に欲しかったわけじゃないから!」


「素直になればいいのに」


「うるさい!!」


「エルも僕にあーんして!」


「は!? なんで私が!?」


完全停止。


真っ赤。


そこへミニエル。


「えー? ミニエルはお兄ちゃんとそういう関係だよ?」


「ど、どういう関係よ!?」


その瞬間。


なおきがエルにぎゅ!


「ひゃっ!?」


ミニエルも2人に突撃。


「ギュー!!」


「ちょ、やめ……くすぐった……!」


抵抗が弱くなり、声も甘くなる。


ついでに頭を撫でられる。


「ん……」


目が、とろん。


「……ずるい」


ぽつり。


なおきが笑う。


「明日も来る?」


「来る!」


「来ないわけないでしょ」


「明日は購買パン争奪戦しよっか」


「ハムカツとピザパンとチョコクロワッサン!」人気の3種ゲットするには過酷な道のりだよ!!


二人同時に、ポキポキと指を鳴らす。


「やったる」


屋上に響く笑い声。


風が三人の髪を揺らす。


――そしてなおきは思う。


明日、購買は戦場になる。


そしてきっと。


僕の膝も、感覚なくなるだろうなぁー


明日も朝から来そうだ、この2人‥

今回も読んでいただきありがとうございました!


見えているのはなおきだけ。だからこそ成立する、膝の上というカオスな昼休みでした。そして屋上という“ちょっとした非日常”で、エルの価値観や心の変化も少しだけ描いてみました。


ミニエルの無邪気さ、エルの照れ、なおきの受け止め方――三人の関係が少しずつ自然になってきた回でもあります。


そして次回は「購買パン争奪戦」開幕です。ハムカツ・ピザパン・チョコクロを巡る、静かなる(?)戦場をお楽しみに!


ブックマークや感想していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ