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天使のスキル

愛は、与えるものなのか。

それとも、受け取るものなのか。


堕天使エルは、

なおきのために“天界規模”の力を使います。


でも、なおきの願いは

たぶんもっと単純で。


これは、

愛エネルギー全開放のあとに、

お腹が鳴る話


そして人差し指をくいっと立て、いたずらっぽく笑った。


「じゃあ、ちょっとこっち来て」


引っ張るでもなく、数歩先で立ち止まり振り返る。その表情は妙に自信満々だ。


「さっきのお礼。なおきがわたしにしてくれたみたいに……今度は、わたしがなおきを幸せにしてあげる」


そう言うと、目を閉じ、胸の前で両手をぎゅっと握る。


「なにしてるの?」


「しーっ……今、すっごい集中してるから。動かないで」


声は真剣そのもの。


次の瞬間。


ふわり、と優しい風が巻き起こった。


それはただの風ではない。

花の蜜のように甘く、春の日だまりのように温かい香りを含んだ風だ。


床に置いてあった雑誌がぱらぱらとめくれ、カーテンがふわりと揺れる。


エルの髪が光をまとったように淡く輝いた。


風は次第に強まり、なおきの周囲をぐるりと包み込む。


まるで、見えない羽毛布団に抱きしめられているような感覚。


胸の奥までじんわりと温かくなり、疲れや緊張がするすると溶けていく。


「……どう?」


ゆっくりと目を開く。


「これが、【天使のハグ】の力。痛みも疲れも、不安も寂しさも……ぜーんぶ浄化する、愛の全力放出モード」


「フフッ!」


なぜか最後だけ少し誇らしげだ。


「すごい……なんだこれ。愛に包まれてるって、こういう感じか? うまく言えないけど……」


エルは満足げに微笑む。


「それが、愛。わたしの全部。なおきへの気持ち」


風はゆっくりと消えていく。


けれど、体の奥に残る温かさは消えない。


「ちゃんと伝わった?」


「うん、伝わった。でも……僕、こんなに返せるかな」


きょとん、と首を傾げる。


「返すとか、いらないよ」


少しだけ唇を尖らせる。


「わたしがしたいからしてるの。なおきに笑ってほしいから、魔法も使うし、甘えるの」


「正確には魔法っていうか、精霊の力なんだけどね、天使の場合は」と付け加えた


袖をきゅっと掴む。


「だから、何も考えなくていい。ただ受け取って」


「僕わがままだからさ、もっと要求しちゃうかもだよ」


その瞬間、エルの目がきらりと輝いた。


「わがまま!? いいよ!」


ぐっと身を乗り出す。


「むしろ大歓迎! なんでも言って! 天界規模で叶えるから!」


「スケールでかいなー」


うっとりとした表情で続ける。


「なおきのわがまま、聞くの楽しみだなぁ。どんなお願いかな。永遠の愛とか? 一生そばにいてとか?」


なおきは少し考えてから、ぽりぽりと頬をかいた。


「まずは……お腹空かない?」


沈黙。


「……ごはん?」


神秘の余韻が、音を立てて崩れた。


「ちょっと待って? 今わたし、愛エネルギー全開放したんだけど?」


「うん、すごかった!」


「もっとこう、“君なしじゃ生きられない”とかないの!?」


「もちろんいないとダメだけど……お腹減ってると集中できないタイプで」


エル、がくり。


「なおきはもう少し気を使えるといいと思うよ」


なおきは真顔で言う。

「でもさ、一緒にご飯食べるって、けっこう幸せじゃない?」


ぱちぱち、と瞬きをする。


数秒後。


「……それは、ちょっとズルいな」


頬をふくらませながらも、袖を離さない。



最後まで読んでくださってありがとうございます。


どれだけ大きな力を持っていても、

最後に欲しくなるのは、

隣にいる誰かと食べるごはんだったりします。


エルの「全部」と、

なおきの「一緒に」。


ふたりの距離は、

派手な奇跡よりも、

こういう時間で少しずつ近づいていくのかもしれません。


今回も読んでいただきありがとうございました!!

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