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【完結】鬼ごっこ/執着系クズ(年下)×平凡(年上)  作者: ハタセ
鬼ごっこ/執着系クズ(年下)×平凡(年上)
6/6

#6[ 完 ]


 【side:木田】


 由羅が消えた。


 中学の卒業と同時に忽然と俺の前から姿を眩ませたのだ。


 予兆はあった。

 12月も過ぎる頃から勉強に集中したいと言い俺と会う機会も激減した。

 でもメールとかは返事もしてくれてたから俺はそれで良しとした。

 由羅を信じていたわけじゃない。

 嫌われているのだって気付いていたし、俺の事なんて微塵も好きじゃない事だって知っている。

 それでも由羅は俺の恋人になってくれた。

 それが建前上でも、何でもよかった。

 由羅と俺との仲に名前を付けれた事、それだけでも嬉しかったから。

 形だけの恋人。

 俺の恋人。

 世界で一番愛してる人。


 でもいつか俺の前から消えるんだろうなとは予想していた。

 その時期さえも分かっていた。

 だから由羅に気付かれないために、由羅に気付かせないために

 俺は由羅の言う事を従順に聞いたのだ。

 俺を騙そうとしている由羅。

 離れるために俺と付き合うことを決めた由羅。

 かわいいと思った。


 俺から逃げれるわけないのにね。


 今頃、由羅は上手いこと逃げ切ったと思っているのだろう。

 でも残念。

 由羅の行動は全部筒抜けだったよ。

 あの当時の由羅の担任ってさ、女だったんだよね。

 教師って守秘義務があるはずなんだけど、あの女さ、ベッドの中でペラペラ話してくれたんだよね由羅の事。

 内緒よ、絶対に他に教えちゃダメよ、木田くんだけ特別なんだからとクスクスと笑いながら。

 由羅の受験する学校全部聞いちゃった。

 相良行くって真っ赤な嘘。まぁ知ってたけどね。

 行く気も無いのに俺を騙すために付いた嘘。

 あの時もかわいいって思った。

 本当の志望校に無事に合格出来たみたいで安心したよ。

 北海道でも無かったから、あの時聞いた高校も嘘だったって気付いたよ。

 面と向かっておめでとうって言いたかったのに、俺に気付かれるのが嫌で

 卒業まで一回も俺に会わなかったよね。

 メールでのらりくらりと躱して、相良合格したよとか嘘までついて。

 だから俺もおめでとうって嘘を付いてあげた。


 これで俺が相良に行くと安心出来たでしょ?

 ほんと、由羅は可愛い。


 そこから由羅は携帯番号も変えて寮に入る為に家も出て完璧に姿を消した。


 寂しくなかったわけじゃない。

 でも俺は待つだけだから。

 由羅がまたこの手の中に、腕の中に納まる日が近い内に訪れるって分かっていたから。

 だから我慢できたよ。偉いでしょ?


 今俺も受験生で受験シーズン真っ只中。

 由羅と同じ高校行くために猛勉強中。

 まぁ俺の今の成績なら余裕で入れるって言われてるけど、

 俺はね、新入生代表になりたいの。

 それで壇上に上がって、一番に由羅の視界に入りたい。

 どの新入生よりも早く由羅に俺の事を気付いて欲しいから。

 驚くかな?驚くよね。だって由羅は逃げ切れたって安心し切ってるでしょ?

 一年間も音信不通でもう俺から逃げ切れたんだって…もう解放されたんだって。

 ごめんね

 俺は、由羅を手放す気なんてこれっぽっちもないよ。

 形だけの恋人。

 でも自然消滅なんて絶対にあり得ないから。

 俺が由羅を好きな限り、この関係に消滅なんてあり得ない。

 由羅は知らないだろうけど、俺は小学生の時から由羅の事を知ってたんだ。

 一目惚れだった。

 その当時小6だった由羅は同級生と一緒にサッカーをしていて凄く楽しそうにしていた。

 俺はそれをずっと図書室から眺めていた。

 誰かと慣れ合うのが嫌いで、俺は冷めた目でそれをずっと見ていた。

 予冷のチャイムが鳴って由羅たちが校庭から引き上げてくる。

 俺も教室に帰ろうと窓を閉めようとしたら由羅と目が合った。

 逸らせなかった。

 由羅も目が合ってしまった事にバツが悪そうにしていたけど

 すぐにニカッと笑って駆けだして行ってしまった。

 その時から、俺は由羅に恋に落ちたのだ。

 あの時由羅は笑った。

 その場で目を逸らす事も出来ないから不器用ながらに笑って

 それでその場を濁したのかもしれないけど

 確かに由羅は俺に笑いかけてくれた。


 あの時から俺は由羅の事で頭がいっぱいになった。

 どうしても自分のモノにしたいと強く思った。

 陳腐な言い方をしてもいいのなら、運命だとすら感じたのだ。

 この人と出会うために今自分はここにいるのだと。

 だから中学に上がった時は由羅にすぐに声をかけようと思った。

 だけど、失敗した。

 その頃には由羅には由羅のコミュニティがあって、俺はそこに入れなかった。

 つまるところ、上下関係。

 中学校は小学校よりも上下関係が厳しくなる。

 1つしか違わないのに先輩だからと一線を引かれる。


 由羅と話してみたくても教室さえも近づけない雰囲気だった。


 だから俺は一年をかけて自分を変えた。


 学年でもトップの成績を目指して

 運動も努力した。見た目も野暮ったく見られないために。

 そして一番は人脈作り。

 人と慣れ合うのが嫌い。それでも俺は人と関わるようにした。

 それもこれも全て由羅に近付く為。

 そのおかげで気付いたらクラスの所謂カーストトップと呼ばれるような立ち位置になっていた。


 二年に進級し、誰の前に出ても恥ずかしくない自分になれたと俺は自信もついていた。

 今なら由羅に声をかけられると思ったのだ。


『由羅先輩、好きになっちゃったんで俺と付き合って?』


 三年越しの思い。でもそんなの由羅には関係ないから

 俺はあくまでも軽いノリでそう告げた。

 由羅を前にするだけで死ぬほど緊張した。

 たとえ断られようともまたアタックすればいい。

 由羅がこっちを向いてくれるまでは何度だって好きだと伝えようと思った。

 でも…



『嫌だ』



 たった一言。

 あれほど聞きたかった声は俺を拒絶するたったそれだけだった。

 一気に何かが崩れる音がした。


 そこから先は由羅はずっと教室から出てきてはくれなかった。

 俺が何度会いに行っても。

 一学年下と言うだけで教室にさえ入らせて貰えない。

 たった一つだけの歳の差がこんなにも由羅と自分を隔てる壁になるのかと絶望した。


「木田~なんか最近お前3年の教室ばっか行ってね?」

「あー!そうだよ!俺らと遊ぶのもほっぽってさ!なに?3年に可愛い子でもいんのー?」

「マジかよ!超見てぇ!紹介してよ~」


 また今日も由羅は教室から出てきてくれなかったと落胆しながら自分の教室に帰ったら

 俺の周りを囲むようにチャラついた奴らが集まって来た。


「別に…」

「えー?本当に?」

「……ただちょっと、イラつく相手がいるだけ」


 本当に些細な失言だった。

 ずっと由羅に無視をされ続けて、教室に帰るとこいつらの相手をさせられて

 俺の精神は摩耗していたのだろう。

 もう疲れていた。

 由羅と話せない。由羅が俺を見ない。俺を無視する由羅が憎い。由羅由羅由羅…


「おっ?なになに?下剋上しちゃう感じ?」

「先輩に手を出すのかよ!ゲスだね~」

「いいじゃん!楽しそうじゃね!?たかが一歳差でデカい面されてんの俺も腹立ってたしさ!」

「……たかが一歳差…」


 その言葉に酷くそそられた。


 そうだ、一歳差だけでどうしてここまで由羅から拒絶されなくてはいけない?

 なんで年下ってだけで無視をされ続けなきゃいけない?

 もう限界だった。

 由羅に見てもらえるなら、何でもしよう。

 どうせ普通に会いに行ったところでまた拒絶されるだけなのだから。

 それならば、由羅の心に深い傷を付けて、そして俺がその傷を舐めて、最後に癒してあげればいい。

 由羅を救えるのは俺だけなのだと由羅に気付かせればいい。

 由羅が最後に縋るのは俺しか居ないように仕向ければいい。


「いいな…それ」


 俺のその一言で、全てが始まった。


 ごめんね由羅。

 俺は由羅を沢山傷つけた。

 分かってて傷つけた。

 だから

 癒させて。

 俺だけに。


「…はいでは、えー次に新入生代表の挨拶に移りたいと思います。新入生代表は前へ!」

「はい」


 席を立ち、壇上へと続く階段を上る。


 教壇の前へ来てマイクを近付ける。


 顔上げて前を見据えた。


 由羅、俺ここまで来たよ?

 由羅を追ってここまで来たんだ。

 本気だってもう分かったよね?

 長かったけど、一年我慢したよ。由羅に会えなくても狂わずに…この時をずっと待ってた。

 だから、そんな顔しないで。もう鬼ごっこは終わりにしよう。

 俺からは逃げられないってこと、理解した?


 ねぇ由羅。



 ほら、つかまえた。



 END

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