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8話

夜十一時五十分。

 私たちは人気のない方へと歩いた。街の音が少しずつ静かになって、空気が張りつめていく。

 私達は公園のベンチに座っていた。

 隣には、彼。

「……もうすぐだね」

 私が言うと、ウニは小さくうなずいた。

「ああ」

 彼はそう言うと無言で私の手を痛いくらい握りしめてくれた。

 時計の針は、無情なくらい正確だ。

 十分前

 五分前

 

「ねえ」

 私は、彼のほうを見る。胸が苦しくなる。でも、目はそらさなかった。

「最後に、一つだけ聞いてもいい?」

「何?」

「……私のこと、どう思ってた?」

 彼は少し驚いた顔をして、それから、真剣に答えた。

「強い人だと思った」

「え?」

「繊細で、人一倍人を恐れてて、それなのに相手に優しくあろうとして」

 そこで一度、言葉を切る。

「ちゃんと前に進もうとする。僕は、そういうところに惚れた」

 胸が、いっぱいになった。

「……ありがとう」

 その言葉は、震えていなかった。

 私は、ちゃんと立っていた。


 *


 カウントダウンが始まる。

 十

 九

 私は、深く息を吸った。

 ——最後まで、素直でいよう。

「ねえ」

 八

「私ね」

 七

「自分の顔、まだ完璧に好きじゃない」

 六

「でも」

 五

「この顔で笑って、この声で好きって言える私を、嫌いじゃない」

 二

 彼はただゆっくり、うなずいた。

「それでいい」


 零


 ウニの体が、淡く光り始める。手はまだ繋いだままだ。

 あぁなんで去り際までそんなに美しいの?私は顔面コンプで…他人の外見には良くも悪も無関心でいようとしているけれど、ほんとは出会った時からその顔がどタイプで初めから好きだったの。


「自己肯定感、それが、君が受け取ったプレゼントだ」

「……うん」

 私は、泣かなかった。

「メリークリスマス。プレゼントはちゃんと届いたね」

「ありがとう」


 繋いだ手が——解かれる。

 

「次は、自分で掴め」


 

 彼は、光と一緒に消えた。

 


 *(光)


  *

     *    *

   *

    

 *    *   

      *

     *   *

   *

    

  *   

    



 それから、ちょっとして私は病室で目が覚めた。



 

次回最終回です。

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