7話
クリスマス当日の朝は、静かだった。
街は昨日よりも浮かれているはずなのに、私の部屋には不思議な落ち着きがあった。
朝食を食べにリビングに向かう。ウニがいるから流石に寝癖のまま顔を合わせるのは恥ずかしいから準備に時間がかかって食べ始めるのは最後だった。
寝起きライオンキングだからとてもじゃないけど彼氏になんて見せられない!
「おはよウニ」
その声を聞いた瞬間、私は分かってしまった。
——今日だ。
クリスマス
「おはよう」
……自分で言い出してなんだけど、そのネタもしかしてちょっと気に入ったの?
「まだ話していなかったことがあるんだけどちょっといいかな?」
私は窓の外を見る。ちょっと感傷的になって目を合わせると泣きそうだ。
白い雲が、ゆっくり流れていた。
「うん」
なんだろ話って?
「この世界は実は君の夢の中なんだ」
「夢……?」どういうこと?
「君はサンタへ手紙を書いた後、階段から滑り落ちて、頭を強打、今もまだ意識が戻らない。今は本当は病室にいるんだよ」
え、
「そんな、じゃああなたもほんとは存在しないの?」
他に聞かなければいけないことはあった気もするが気になるのはこれだ。これまでの全てが全て私が作り出した夢なんて…
私は彼のほうを向く。
「それは君の感じ方次第かな?僕はそんな君にプレゼントを渡すために、サンタクロースに作られたんだ。」
「君の手紙、読んだ時…彼氏がほしい、って」
「……うん」
「でも、本当の願いは違った」
彼は静かに言う。
「君は、自分を嫌いじゃなくなりたかった。
誰かに選ばれる価値があるって、知りたかった」
私は何も言えなかった。だって、それは——その通りだったから。
「だから僕は、君の“彼氏役”として作られた」
(役、なんだ……)
「君はちゃんと人を惹きつける。君は君の本心を僕じゃなくていいから、きちんと誰かに伝えられるようになって欲しい」
——僕じゃなくていい。
その言葉が、グサグサ胸に刺さる
彼は一歩近づく。
「たとえ彼氏役でも、いや、だからこそ僕では君の本当の彼氏になれない。でも嘘じゃないから」
強い目で、まっすぐに。
「君と笑った時間も、思ったこと全てが本物だ」
その言葉に、涙がにじんだ。
「でも……」
私は、声を絞り出す。
「今日が終わったら、本当にいなくなるんでしょ?」
「ああ」
「それが、サンタのルールだ。
大丈夫。君もじきに目が覚めるよ。」
しばらく沈黙が流れる。
思考が乱れる。
深呼吸をした。
「……ねえ」
「ん?」
「最後まで、彼氏でいて」
それでも最後に残った考えは素直な願いだった。
彼は驚いた顔をして、それから、笑った。
「当たり前だろ」
そう言って、私の頭を軽くなでる。少しむず痒い。
「中途半端は嫌いだ」
胸が、あたたかくなった。
*
夕方。
イルミネーションが灯る街を、私たちは並んで歩いた。
「こういうの、憧れてたんだ、彼氏と、歩くの」
「それならよかった」
ウニは微笑みながらそう言った。
人混みの中で、手が触れた。羽より軽いボディタッチ……いやわざとだけどね。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼は何も言わず、ぎゅっと手を握り締めてくれた。
それだけで、十分だった。
これが夢だなんて信じられない。
夜空に、星が瞬き始める。
タイムリミットは、もうすぐ。
でも私は、不思議と落ち着いていた。
だって——
私はもう、自分の気持ちを、ちゃんと伝えられるから。




