6話
水族館からの帰り道、風が冷たくて、白い息がゆっくり消えていく。けど繋がれた手は暖かい。
…明日でこれも終わるんだよね。
「……もしさ」
声が、少し震える。
「クリスマスが終わったら、貴方はどうなるの?」
疑問に思ってたこと。
一説によればサンタクロースの故郷はフィンランドだからそのあたりにウニの故郷があったりして…そしたらクリスマス後も会えるのかもしれないと少し期待していた。
ウニのためならもう私は地球の裏側まで行くつもりだ。英検準二級を舐めるなよ。私は十分グローバルだ。I am global!!
ウニはすぐには答えなかった。
空を見上げ、ゆっくり口を開く。
「僕は、いなくなる。消えるんだ。」
はっきりとした言葉。
「えっ…」想定外のことで頭が回らなかった
「何にでも寿命はあるものさ。僕にだって勿論、それがはじめからわかっている人は少ないけどね」
涙が出そうになって、私は慌てて目を伏せた。私が泣くのは違うと思った。
彼は続けた。
「僕がここにいるのは、君にプレゼントを届けるためだ」
「……?プレゼントはあなた自身でしょ?」
彼は、私の目をまっすぐ見た。
「本当にそうだと思う?」
「え、」どういうこと?
彼はそのまま曖昧な笑顔で黙り込む。
沈黙が続いた
「……嫌だな」
小さく、素直にこぼれた。
彼は驚いたように私を見る。
「いなくなるの、嫌」
声は震えていたけど、逃げなかった。
「期間限定だって分かってるのに、分かってたはずなのに……」
期間限定商品は儚なく、切ないながらもその瞬間しか存在しない特別感で大好きだけど。それがこんなに心を苦しめるなんて思わなかった…
私は、ぎゅっと拳を握る。
「でも、私……」
ここまで言って、息を吸う。
「あなたのこと、好きになっちゃった」
言えた。
初めて、自分から。
告白なんて、ずっと無理だと思ってたのに。
彼は、しばらく黙っていた。
そしてウニは一歩近づいて、私の頭にそっと手を置いた。
「君は、やっぱり素直だな」
その手は温かくて、確かに生きていた。
彼は、優しく、でもはっきり言った。
「好きだって言えた今の君は、もうかつての君じゃない」
私は、涙をこぼしながら笑った。
「……うん」
胸は痛い。
でも、確かに何かが変わっていた。
クリスマスまで、あと一日。
カウントダウンの音が、
静かに、確実に近づいていた。




