4話
結局あの後堪えきれなくて泣き出してしまった。けれどウニは無言でハンカチを渡してくれた…このほくろみたいな刺繍はもしかして…
ウニ(海洋生物)?
「寒い?」
体育の時間マフラーを直してくれたり。(ちょっと今はいらないかな…これから持久走だから、それよりもそのコートで走る気?)
「それ、無理しなくていい」
私がクラスの雑用を引き受けすぎると、はっきり止めてくれたり。(ありがとう、でも佐々木君を常に雑用要員として連れ回すのやめな)
少し変わったところをあるけれど優しい。
迷いがない。
その態度に、少し戸惑うけど、どこか安心していた。
*
放課後、クラスでちょっとしたトラブルがあった。
「え、あのポスターまだ終わってないの?」
実行委員の子が、困った顔をする。
「ごめん、私やるって言ったのに……」
オドオドした様子の実行委員の子に対して相手の子は少しイライラしている
どうやら少し揉めそうな雰囲気だ。
「私が今日中に仕上げようか?ほら私美術部だし、ポスターなら部活の間にできるよ!」
反射的に自分で言ってから、しまった、と思った。
本当は、彼とすぐに帰る約束をしていたのだ。しかもポスターのサイズが大きめだからかなり時間がかかりそう。
「それ、二人でやろう」
彼が、きっぱり言った。
「え?」
「彼女一人に押しつけるの、おかしいだろ」
教室が一瞬、静かになる。
彼は周りを見渡してから、続けた。
「手伝える人、いるなら一緒にやろう。いないなら、僕達2人がやる」
その言い方は、ただ、当たり前のことを当たり前に言っているだけ。
「……じゃあ、手伝うよ」
結局、揉めてた2人と佐々木君と他に何人か残ってくれて、作業はすぐに終わった。
私は、胸の奥がじんとするのを感じていた。
*
帰り道。
「さっきは、ありがとう」
私が言うと、彼は肩をすくめた。
「君があそこで言い出すのははじめから分かってたから」
「……そんなに分かりやすい?」
「うん」
即答だった。
私は苦笑する。
「おせっかいはしないように気をつけてるんだけど、できることはやらないとダメだって結局いつも面倒なこと引き受けちゃうんだよね」
彼は歩みを止め、私の前に立った。
「それで、君が疲れるなら意味ない。優しいのはいい。でも、自分を削る必要はない」
私は、何も言えなくなった。
叱られているわけじゃないのに、胸がいっぱいになった。
「君はさ」
彼は、少しだけ視線を和らげた。
「もっと大事にされていい」
その言葉に深く心臓が脈打った。
*
家の前に私は立ち止まった。
「ねえ」
「ん?」
言おうか迷って、でも——今日は、言いたかった。
「私、前より……少しだけ、楽」
彼は驚いた顔をして、それからふっと笑った。
「それなら、よかった」
私は、勇気を出して続ける。
「隣にいてくれて、ありがとう」言えた。
彼は一瞬黙ってから、はっきり言った。
「当たり前」
そして、今までどこか飄々としていた彼が初めて少し照れながら付け足した。
「君の彼氏なんだから」
期間限定だと分かっている。
でも——
好きだなぁ、ほんとに。
空を見上げると、夕焼けの中に、うっすらと星が浮かんでいた。
一緒にいられるのはあと二日




