2話
登校中、並んで歩く私たちは、どう見ても高校生カップルだったと思う。何せ距離が近い。肩が触れ合うたび顔が赤くなってしまう。
「寒くない?」
「私は平気!」
元気よく答える。
実際、寒さよりも、周りの視線のほうが気になっていた。
彼と一緒にいる私を、クラスメイトはどう見るだろう。
——似合わない、って思われないかな。
そんな考えが浮かびそうになると、私は首を振った。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない!」
自分でも分かるくらい、ちょっと無理をしている。
でも彼は、私をじっと見てから、静かに言った。
「無理に元気出さなくていいよ」
「……え?」
「君、気を遣いすぎるところがある」
一瞬、息が止まった。
「でも、それって優しいってことだから」
彼は続けた。
「自分のこと、後回しにしちゃうくらい」
胸の奥が、きゅっと痛くなった。
誰かに、そんなふうに見てもらえたのは初めてだった。
「……ありがとう」
そう答えるのが精一杯だった。
*
教室に入ると、案の定、視線が集まった。
「誰?」「やば、めっちゃイケメンじゃん」「ほんとだー!」「転校生?」「転校生だよ」「転校生かぁ」「後ろの席一つ余ってるからそこに座りなよ」
家族の時と同じようにみんな制服も着てないコート姿の彼を転校生として当たり前のように受け入れ始めた。
しかしそれでもやはり注目の的で隣にいる私にまで視線が集まり私は内心縮こまりながらもいつものように明るく振る舞った。
私は普段、わりとさっぱりしていると言われる。
悩みがなさそう、とか。明るいね、とか。
でもそれは、多分——そう振る舞っているだけだ。
本当は、人の表情や声色を必要以上に気にしてしまって目立つことが大嫌いだ。
でも彼はこう言った。
「よろしく。この子の彼氏のウニです」
そう言うと、彼は自然に私の隣の席に座った。
一瞬の静寂の後わっと教室が沸く。
私は慌てて、
「ちょ、ちょっと何言って……!」
と言いかけて、止まった。
彼は私を守るみたいに、堂々としていた。
——ああ。
この時間は、期間限定だということ。
クリスマスが終わったら、彼はいなくなる。
分かっているのに——
もう、少しだけ。
もう少しだけ、この時間が続けばいいのに。
私は、そんなわがままを、心の奥にそっと隠した。
席を彼に奪われた隣の席の佐々木君は無言で空いてる一番後ろの席に移動した。




