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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第三部

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庭師と氾濫01

無事世界樹関連のことが終わり、通常業務に戻る。

私はまず、武器屋のゴードンさんの店に向かった。

私の刀と防具を見て、眉をひそめるゴードンさんに、

「すまん。さすがに竜が相手だったからな。刀に気を配る余裕がなかった。しかし、あの防御術式は効いたよ。あれがなければ今頃丸焼きになっているところだった」

と言い訳をするとゴードンさんは軽くため息を吐き、

「竜の鱗一枚と皮の一部を使っていいってことになったらしいぜ。それで新しい防具を作ってやる。一か月くらい待ちな。その間はこのおんぼろで頑張るこったな。刀の方は五日くれ。昔使ってたのがあるだろうから当面の間はそれでなんとかしな」

とややぶっきらぼうに言ってきた。

「すまん。助かる。どうせこれから通常通りの任務になるだろうから、防具と刀はまとめて取りにくるよ。すまんがよろしく頼む」

「おう任せときな。しかし、竜とはなぁ」

「ああ。私も驚いた」

「驚いた、で済ませるあたりがいかにも天才ユーリ様だな」

「バカを言わないでくれ。本当に肝を冷やしたんだからな」

「へっ。まぁいいさ。しばらくの間は無理せずやってくれよ」

「ありがとう。了解した」

そんな言葉を交わしゴードンさんの店を辞する。

そして詰所に顔を出すと、受付のエリカさんから、

「書類は机の上に置いておきましたからね」

と笑顔で告げられた。

どっさりと積まれた書類を見て、げんなりしつつも懸命に取り組む。

さすがに長期間留守にしていただけあって、書類は溜まりに溜まっていた。

(これは三日やそこらじゃ終わらんぞ。下手したら十日くらいかかりそうだ……)

と思っていたが、ラッツさんをはじめとするみんなが助けてくれたので、なんとか五日ほどで書類を片付け終える。

そして、私は再び、森へと向かった。

なんだか懐かしくも新鮮な気持ちで森を歩く。

二日ほど歩くとさっそくゴブリンの集団に出くわした。

(相変わらずどこにでも湧いてくるな……)

そんなことを思いつつ、群れの中心めがけて突っ込んでいく。

すれ違いざまに何匹かのゴブリンを斬ると群れの中央に出た。

周りを取り囲み一斉に襲ってくるゴブリンを引き付けられるだけ引き付ける。

そして私はくるりと回りながら刀を一閃し、風魔法を放った。

その場にいた全てのゴブリンが両断される。

私は静かに刀を納めると、マロンにコツを教えてもらった風魔法を使い、ゴブリンの死骸を積み上げた。

簡単な火魔法でゴブリンを焼く。

ゴブリンの山はあっという間に灰になり、そこから小指の先ほどの魔石を取り出していった。

そんな作業が終わり、さらに奥を目指す。

時折、薬草の群生地を見て回ったが、目立った異常は無かった。

ほっとして進むこと、さらに二日。

森の中層に入る。

そこでも相変わらず出てくるゴブリンやオークの集団を難なく倒し、数日かけて森の様子を丹念に観察、記録していった。

やがて、森の奥地の手前まで来たところで野営をする。

いつも通り簡単に準備をし、リゾットを食べてゆっくりしていると、周辺に妙な気配を感じた。

(虎? いや、豹かもしれん。まったく、厄介な)

と思いつつ、その場で魔力を練り始める。

やがて、気配の主がゆっくり動いたのを感じ、私はおもむろに立ち上がった。

「ぐわっ」と押し寄せてくる殺気に応じ、魔力を放つ。

すると、私の後方でドサッと音がした。

(豹だったか……)

そんな感想を持ちつつ、後始末をする。

(魔法とは本当に便利なものだな。ずいぶん使い方にも慣れてきたが、やはりどこかしっくりこない。やはり私は剣に生きるのが正解なんだろう)

そう思って私は古い相棒の柄をポンポンと叩き、「ふっ」と笑みをこぼした。

翌日からは奥地に入る。

魔獣さえいなければ美しい苔むした森を進み、小さな沢のせせらぎを見つけたところで昼にした。

ショートパスタを茹で、ハンナさん特製クリームスープの素でスープパスタを作って食べる。

ほっとひと息吐く食事に和んでいると、遠くから「ギャーギャー」と喚く声が聞こえてきた。

急いで飯を終え、慌てて声がした方に向かう。

木々の間を駆け、岩を飛び越えやっと森を抜けると、そこにはゴブリンの集団を狩るサイクロプスの群れがいた。

(サイクロプスが二十? それにゴブリンは五百をくだらんぞ。なんでこんなことになっている? サイクロプスがゴブリンを狩るなんて聞いたことがない)

そう思いつつ、刀を抜き戦場に躍り出る。

私は夢中で刀を振り、広い草原を走り回った。

やがて、軽く息を切らしつつ周りを見る。

周辺に動く気配はなく、ただ魔獣の屍が累々と転がっていた。

(これはいかん。なにかがおかしい)

そう感じてその場を処理し始める。

そして、なんとか処理を終えると、私は急いでさらに奥に向かった。

どう見てもミノタウロスの群れが大移動したような痕跡を見つける。

(十なんてもんじゃない。正確に数えられないほどの大群が移動しているな。これはすぐに追わねば!)

そう感じて痕跡を追っていくと、夕暮れに染まる平原でミノタウロスが三十ほどいるのを発見した。

急いで駆け出し群れに追いすがる。

そして、目の前にいた個体を袈裟懸けの一刀で仕留めたのを合図に戦闘が始まった。

どこを目指していたのか知らないが、ミノタウロスの大群がこちらに向きを変え、襲いかかってくる。

(ちっ。こんな時にかぎって装備がそろっていないとは……)

そう思いつつも私は次から次に襲いかかってくるミノタウロスを倒していった。

とっぷりと日が暮れ、ようやく戦闘が終わる。

私は緊急用の灯りの魔道具を出し、辺りを照らした。

その日は処理を諦め、適当な木陰で体を休める。

そして、翌日。

夜が明けるのを待って、さっそくその場の処理を終わらせた。

(これは急がねば)

そう思い、帰路に就く。

(いかん。妙な胸騒ぎがする。ゴードンさんには少し無理を言うが、刀と防具の完成を急いでもらおう。それがなくちゃこの事態には対応できん)

そう考えながら急ぐ私の目の前に、今度は熊が現れた。

五メートルほどの熊が三頭、こちらに突進してくる。

たしかに熊は凶暴だが、普段は単独で行動し、集団で襲いかかってくることなどない魔獣だ。

私はさらに違和感を強めつつも、その熊に対峙した。

猛烈な勢いで突進し、爪を突き立ててくるのをひらりと飛んでかわす。

空中で体を捻り風魔法を放つと、熊の背中にざっくりと切れ目が入った。

着地してすぐ襲い掛かってきた爪をかわす。

そして私は冷静に踏み込み刀を一閃した。

ざっくりと腹を割られた熊が倒れる。

私は少し退いてそれを避けると最後の一匹に向かっていった。

突進してくる熊の攻撃をかわし、すれ違いざまに足を斬る。

熊は突進の勢いのまま転がり、大きな木にぶつかった。

バキッと音がして木に亀裂が入る。

私は素早く熊に駆け寄ると素早くトドメを刺した。

バキバキっと音を立て、木がゆっくりと倒れていく。

私は慎重にそれを避け、熊の死骸に近づいていった。

(なにか異変があるかもしれない)

と思って観察するが、外部に目立った異常はない。

だが、その目は死してなお凶暴に輝き私を睨みつけてきているようだった。

(何らかの理由で凶暴化しているのは間違いなさそうだな。これはいよいよ……)

そんなことを思い熊の死骸に鋭い視線を送る。

私は急いで熊の死骸を焼くと、再び急ぎ足で森の出口へと向かっていった。

やっとの思いで森を出てまずは宿の女将に、

「森で異常があるようだから、住民は絶対に森に入らないように周知してくれ」

と伝言し、馬にまたがる。

その日のうちに次の宿場町に到着すると、私は夜通し走って朝方王都の門をくぐった。


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