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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第三部

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庭師と世界樹への旅02

朝で賑わう町を抜け、街道に出る。

軽く速足で進むアリエスに、

「そんなに飛ばして大丈夫か?」

と聞いたが、

「これでも遠慮してるくらいよ」

と返されてしまった。

そんなアリエスの足もあって、その日の夕方前には森の入り口にある村に着く。

そのまま森に入ってもいいかと思ったが、アリエスが、

「これから往復で二か月は旅になるんだから、今日くらいしっかり休んでおきなさい」

と言ってくれたので、その言葉に甘え、その日は宿で休ませてもらった。

翌朝早く。

さっそく森に入っていく。

アリエスは森の中もスイスイと進み、一日で森の中層にまで達してしまった。

「すごいな。さすがユニコーンだ」

と感心する私に、アリエスは、

「本気を出せばもっと速いわよ」

と少しツンとして答えてくる。

私は軽く苦笑いを浮かべつつ、

「ありがとう。私に合わせてくれているんだな」

と礼を言った。

「ふんっ」

とアリエスが興味なさそうに鼻で笑う。

それを見た私は、

(ふっ。素直じゃないな)

と心の中で思いつつ、軽く頬を緩めた。

「見張りは任せてゆっくり眠るがいいぞ」

と言ってくれたマロンの言葉に甘え、ゆったりとした気持ちでリルに背中を預ける。

ふんわりとしたリルの体温に包まれていると、私はいつもよりゆったりとした気持ちになり、ついつい深く眠ってしまった。

翌朝。

少しハッとして目覚める。

私を少しジトッとした目で見てくるアリエスに、

「すまん。つい油断してしまった」

と軽く弁解する。

しかしアリエスは、

「いいのよ。どうせ、大変なのはここからなんだから」

と少し恐ろしいようなことを言ってきた。

「なるほど。ここからは気を引き締めよう」

そう応じて、軽く深呼吸する。

そして、簡単に朝食を済ませると、またアリエスに跨って森の奥を目指していった。

その日のうちに森の最奥に到着する。

軽く設営と夕飯を済ませ、

(ここから先は未知の世界なんだろうな)

と思って構えていると、リルが、

「来たよ! サイクロプスってやつ!」

と言った。

(なっ。いきなり夜襲か!?)

と思い少し焦る私に、

「明かりは大丈夫よ」

とアリエスが声を掛けてくる。

(はて?)

と思っているとアリエスの角の先からまるで灯りの魔道具のような光が飛び出し、辺りを煌々と照らした。

「助かる」

そう言って刀を抜き、サイクロプスを迎え撃つ。

サイクロプスは十匹もいて、それなりに力を使わされたが、なんとかその場を凌ぐことができた。

「この先はずっとこんな感じよ」

と何気なく言ってくるアリエスの言葉に、

「……ははは。そうか」

と苦笑いで答える。

私はこの先の旅を想い、軽くため息を吐きつつもとりあえずお茶を淹れ始めた。


翌朝。

緊張しながら目を覚まし、軽く朝食を済ませて出発する。

アリエスは相変わらずスイスイ進み、やがて高い山の麓に差し掛かった。

「ほう。ここはまたたくさん出そうじゃのう」

とマロンが呑気に怖いことを言ってくる。

私は苦笑いすることしかできなかった。

案の定、途中でリルが、

「ワイバーンの匂いがするよ!」

と言ってくる。

私はさっとアリエスから降り、刀を抜いた。

(単独でワイバーンの群れはちょっときついんだが……)

と思いつつ、相手の様子をうかがう。

すると、六匹ほどいた群れの先頭の個体がいきなり魔法を放ってきた。

「なっ!?」

思わず叫びつつ、その魔法をなんとか撃ち落とす。

それからは恐ろしいほどの持久戦になった。

次々に飛んでくる魔法を弾き、かわし、また弾くということを繰り返しやらされる。

私はそのうち、ワイバーンが降りてきてくれるのを待つしかなかった。

(こちらに飛び道具があれば……)

と思いマロンを見るが、マロンは悠長に丸くなっている。

(なるほど。自分でなんとかしろってか?)

と少し恨めしく思いつつ、ワイバーンが少し高度を下げたところで、思いっきり刀を振った。

解き放った魔力がワイバーンの翼に当たる。

ワイバーンはそのまま地面に落ち、山の斜面に突き刺さった。

それを見た他のワイバーンが怒り狂って一気に魔法を放ってくる。

私はそこで集中力を高め、全身の魔力を刀に集中させた。

恐ろしい勢いで飛んでくる魔法を渾身の刀捌きで次々に撃ち落としていく。

すると、先に折れたのはワイバーンの方だった。

直接爪で攻撃しようと三匹のワイバーンがまとめて襲い掛かってくる。

私はそれをギリギリまで引き付けると、

「ふんっ!」

と気合を入れ、刀を横なぎに一閃した。

三匹の胸に切り傷ができ、地面に叩きつけられる。

そうなればもうこちらのもので、私は素早く駆け出し、縦横無尽に動きながらワイバーンの首を刎ねていった。

その様子を見ていた残り二匹のワイバーンが怒り狂ったように魔法を撃ってくる。

私はまたそれを凌ごうと刀を振ったが、今度は一匹が魔法を連発している隙を狙って一匹が私に爪で襲い掛かってくるという作戦を取られてしまった。

少し焦って転がるように攻撃をかわし、なんとか刀を振る。

しかし、私の放った一刀はワイバーンの爪に弾かれてしまった。

思わず、「ちっ」と舌打ちをして再び刀を構える。

また魔法が襲ってくる。

私はそれをなんとか弾きつつ、爪が襲ってくるのを待ち構えた。

魔法が一瞬止んだと思った瞬間、一匹が猛然と私に突っ込んでくる。

私はその瞬間を「待ってました」と言わんばかりに飛び上がった。

くるりと体を回し、空中でワイバーンに斬りつける。

すると、その一刀でワイバーンの翼が切れ落ちた。

激しく地面に叩きつけられた一匹をとりあえず放置して、空中にいる個体めがけて、魔力を放つ。

その攻撃はするりとかわされてしまったが、挑発する効果は十分にあったらしい。

怒ったワイバーンが、猛然と襲い掛かってくる。

私はその恐ろしい爪をなんとかギリギリでかわし、すれ違いざまに足を両断した。

足を斬られた個体が悲鳴を上げながら地面に叩きつけられる。

私は先に地に落ちた個体の方に向かうと、ジタバタと暴れて攻撃してくるのをするりとかわし、その首を落とした。

最後の一匹はまた飛び上がって襲ってこようとするところを魔力を飛ばし、地面に張り付ける。

その後は、落ち着いて対処すると、ようやくワイバーン討伐が終わった。

「おつかれさま!」

嬉しそうに駆け寄ってくるリルを抱きとめ、軽く撫でてやる。

「ほれ。さっさと肉を取らんか」

と言ってくるマロンに、

「少しは休ませてくれ」

と言うと、マロンは、

「時間をかけ過ぎじゃ」

と軽く文句を言っていた。

「ははは。そのうち魔法を教えてくれ。そうすればもっと早く狩れる」

と冗談を返す。

そんな私にアリエスが近づいて来て、

「そうね。それもいいかもしれないわね」

と言ってきた。

「どういうことだ?」

「どういうもこういうもそういうことよ」

「……?」

「おそらくユーリの弱点は魔法戦に弱いことでしょ? だったら世界樹はそこを補う力を与えるはずよ。確実なことは言えないけど、私ならそうするわ」

「なるほど。それはありがたいが、そんな一瞬で魔法を覚えられるものなのか?」

「世界樹なら不可能ではないはずよ」

「そうか。それはそれで楽しみだな」

「期待しないで待ってなさい」

「ああ。了解だ」

そんな会話を交わし、とりあえずお茶を淹れる。

渋めの緑茶をゆっくりすすると、私は思わず、「ふぅ……」とため息を吐いてしまった。

「ここからはこんなのの連続じゃ。気合を入れろよ」

そう言って私の膝の上に乗ってくるマロンを軽く撫でてやる。

マロンはいつも通り気持ちよさそうに目を閉じ、「くわぁ……」とあくびをして丸くなってしまった。

やがてできるだけの肉を取ったところで夕飯にする。

献立は当然ワイバーンの肉で、私はハンナさん特製の味噌玉を使い、大根と肉の煮込みを作った。

「これ。ごはんが進むね!」

「うむ。即席にしてはいい味をしておる」

「ああ。欲を言えばもっと大根に味をしみ込ませたいところだが、野営だとこれが限界なんだよなぁ」

と言い合う私たちに、アリエスが、

「まったく。あなたたち本当に食いしん坊ね」

と呆れたような視線を送ってくる。

「ああ。それが我が家の家風だからな」

私がそう言うと、アリエスは少しおかしそうな様子で、

「ふっ。そうみたいね」

と言い笑った。


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