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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第三部

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庭師と合同軍事演習01

晩餐会の翌日を準備と会合にあて、その翌日、隊ごとに森に出発する。

私たち以外は全体を二つに分け、それぞれノルドさんとコーエンさんが指揮を執ることになっていた。

私はエメローラさん、ジーラッドさんと共に森に向かっていく。

二頭立てのやや大きな馬車に乗り、いつも通り一日半かけて森の入り口の村に着くと、軽く宿で休憩を取ってさっそく森に入っていった。

最初の野営地に着き、食事にする。

二人に料理はどうかと聞くと、どちらもそれなりにできるということだったので、食事の用意は交代で担当することにした。

「じゃあ初日は俺が担当するぜ。ドワーフ名物マーボー丼を作ってやるよ。まぁ、野営だから豆腐じゃなくナスだが、食いごたえ満点だぜ。ああ、エルフさんに合わせて辛さは抑えめに作ってやるから心配すんなよ」

「あら。それは楽しみですわ。ドワーフ流の辛い味付けは初めて食べた時は衝撃的だったけど、妙に癖になるから、不思議なものよね」

「ああ。確かにあれには妙な中毒性がある」

「ははは。じゃあ期待に応えて美味しいのを作らないとな」

そう言って手際よく調理を始めたジーラッドさんを見て安心しながら設営を始める。

設営は簡単に終わり、私はみんなの分のお茶を淹れ始めた。

やがて、料理が完成しみんなで食べる。

「辛っ! けっこう刺激的なのね」

「そうか? 子供用の甘口で作ったつもりだったんだが」

「ああ。前にゴルディアスで食ったやつよりずいぶん控えめだな。ピリ辛と言ったところだろうか」

「やっぱりそこは三者三様なのね。味の好みの調整は意外と重要なのかもしれませんわ」

「そうだな。戦闘中の食料は大切だ。兵站にも影響してくるし、そこは上手いこと調整させよう」

「そういう細かいことが分かっただけでも収穫だったな。辛さは後から調節できるように辛みの強いソースを作ったらどうだろうか?」

「あら。それはいいですわね。エルフの料理でもほんのちょっと辛みが欲しい時があるから、そういう時にも使えそう」

「帰ったらさっそくハンナさんに相談してみるか」

「おお。食の神が作る辛いソースか。それは期待できるな」

そんな話をしながら食事を進め、私はもう一度食後のお茶を淹れた。

「この緑茶っていうのはいいな。脂っこいものを食べた後の口がすっきりする」

「ええ。エルフの料理にも合うから、徐々に広まり始めているところなんですよ」

「そうだったんだな。これもハンナさんの発明品らしい」

「本当にハンナさんは食の神なのね」

「ああ。本当に偉大な人だ。ゴルディアスの料理もあの人の影響でかなり美味くなったからな」

「やはりあの人は人類の宝だ」

「うふふ。ユーリ君ってば大袈裟ね」

「ははは。でも、あながち間違っちゃぁいねぇ」

また食の話になり、それぞれが笑顔を見せる。

私は密かに、

(やはりここでもハンナさんの魔法は絶大な効果をもたらしてくれているな)

と思いつつ微笑みながらお茶をすすった。

翌日は先を急ぐ。

三人とも慣れているだけあって、その日の夕方には森の中層の入り口までたどり着いた。

「さて、この辺りからは魔獣がわんさと出てくる。最初はオークやゴブリンが中心だろうから、軽く肩慣らしに相手をしてみよう」

「おうよ」

「楽しみですわ」

軽くこれからの地域についての情報を共有したところで野営の準備に取り掛かる。

今日はエメローラさんが料理を担当してくれることになった。

「今日は団長特製ピザにしますね。騎士団の中で結構評判がいいんですよ」

というエメローラさんに、ジーラッドさんが、

「ピザってどうやって焼くんだ? 窯でもこしらえるのか?」

と率直な疑問を投げかける。

私も野営でピザとなると炭を熾し、フライパンの上下を満遍なく熱して作るくらいの方法しか知らなかったので、興味津々でエメローラさんの答えを待った。

そんな私たちを見てエメローラさんがやや得意げにニコッと笑い、

「エルフは魔法が得意ですからね」

と言ってくる。

私もジーラッドさんもよくわからないという表情でお互いに見つめ合い、軽く首をひねった。

ともかく料理はエメローラさんに任せ、テントを設営する。

設営が終わってエメローラさんの方を見ると、ちょうど生地を広げ終わり、具をのせている所だった。

「具はサラミとチーズとピーマンで、トマトソースにしましたよ」

そう楽しそうに言ってエメローラさんがピザをフライパンに乗せる。

(やはり炭で上下から熱するのだろうか?)

と思っているとエメローラさんは何気なくフライパンに手をかざしなんと火魔法を放った。

(え!?)

と思う私の目の前でその魔法の火がフライパンを包み込むように回り出す。

それはまるでオーブンのような感じで、こちらにもほんのりと熱が伝わってきた。

「すげぇな……。どんだけ緻密な魔力制御してんだよ」

とジーラッドさんが感嘆の声を上げる。

「うふふ。これができるのはエルフでも限られた人だけなんですよ」

とややドヤ顔で言うエメローラさんに、私は苦笑いを返した。

(帰ったらマロンに話してやろう。きっとマロンならこれを再現してくれるはずだ)

そんなことを思っているとあっという間にピザが焼き上がる。

「生地はまだあるので、足りなかったらお代わりも焼きますからね」

と言ってくれるエメローラさんに感謝しつつ、私たちはその出来立てのピザにかじりついた。

「あふっ! いや、しかし、こいつは美味ぇな。さすがだぜ」

「あら。ありがとう存じますわ」

「いや。本当にたいしたものだ。帰ったらさっそくマロンに頼んで真似してもらおうと思っているよ」

「うふふ。神獣様に真似していただけるなんて光栄ですわ」

そんな話をしながら食べているとあっという間に一枚目のピザがなくなる。

エメローラさんはまたピザを焼いてくれながら、

「意外と神経を使うので、一度に焼けるのは十枚くらいが限界ですわね」

とサラッとすごいことを言った。

(本当にすごいな)

と感心しつつお代わりも美味しくいただく。

そして私は、

(さて。明日は私の番か。何を作ればいいだろうか?)

と思いつつ、満腹になったお腹をさすりながら体を休めた。

交代で眠って迎えた朝。

さっそく森の中層に踏み込んでいく。

するとさっそく五十ほどのゴブリンの集団に遭遇した。

「肩慣らしにはちょうどいいな。おそらくこのメンツなら一人でも簡単に殲滅できるだろうが、ここは連携を図る練習だと思って一匹ずつ丁寧に相手をしていこう。私が前衛になるから、ジーラッドさんは背中を頼む。エメローラさんは魔法で援護してくれ」

「了解だ」

「ええ。一般的にはその形が一番多くなりそうですし、そうしましょうね」

ややのんびりした感じで作戦を決め、さっそく戦闘態勢に入る。

「じゃあまず俺が突っ込むぜ」

と言ってジーラッドさんが盾を手にゴブリンの群れに突っ込んでいった。

一斉に襲いかかってきたゴブリンをジーラッドさんの盾が軽く蹴散らす。

私は態勢の崩れたゴブリンを一匹ずつ丁寧に斬っていった。

そこに後方から魔法の矢が一本ずつ飛んでくる。

その狙いは的確で、ゴブリンが再び群れて襲い掛かってくるのを見事に防いでくれていた。

やがて戦いが終わる。

「はっはっは! 初めてにしてはいい感じだったな」

「ああ。思ったよりも円滑に連携できていた」

「でもまだお互いに遠慮があるって感じかしら?」

「そうだな。それは部隊でも同じだろうから、帰ったら反省が必要になるだろうよ」

「ええ。そうですわね。お互いに反省点を持ち帰ってさらに訓練を積みましょう」

「おうよ」

そう話して握手を交わし、私たちはさらに森の奥を目指していった。


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