表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/91

庭師と会議と晩餐会01

アリエスがやってきた翌日。

さっそく次の任務の準備に取り掛かる。

私が世界樹に選ばれたと聞き、カイゼルさんもノルドさんも驚いてはいたが、

「まぁ、ユーリならやれるだろうさ」

というような感じでわりとあっさり受け入れてくれた。

(謎の信頼感だな)

と苦笑いしつついつものように美味しい食材を中心に市場で品物を買い付ける。

そして準備が整うと、私は森へと出発した。

今回の任務は期限が決まっている。

なにしろ合同軍事演習を兼ねた国際会議が一か月後に始まるから、それまでには帰ってこなくてはいけない。

カイゼルさん曰く、

「主役がいなくちゃ始まらんだろう」

とのことだったので、今回の任務は期限内に出来るだけのことをやってくるといういつもとは少し違う感じの目標が設定されていた。

いつも通り森の入り口にある村に到着し、そこから森に入っていく。

リルはいつも通り楽しそうでマロンはいつも通り退屈そうだ。

そんな二人を見て私はなんとなく微笑ましい気持ちになりつつ、森の中を進んでいった。

三日目。

さっそく現れたゴブリンを軽く始末し、薬草の様子を見る。

目立った異常はなかったが、周囲に鹿の痕跡があったので、それを追っていくことにした。

「それほどの数ではなかったようじゃが、それでも追うのか?」

「ああ。こういうのは少ないうちに手を打っておいた方がいいだろうからな」

「まじめなことよのう」

「ああ。これから長期間留守にするかもしれないから、できるだけのことはやっておきたい」

「まぁ、そうじゃな」

「わっふ! 世界樹に会うの楽しみだね」

「ああ。そうだな」

そんな会話をしながら歩いていると、草地に十匹ほどの鹿の魔獣がいるのを発見する。

群れは小さいが、食欲旺盛なやつらはいつ薬草を食い荒らすかわからない。

そう思いながら私は静かに刀を抜いた。

さっと駆け寄り手前にいた個体の首を斬る。

それで鹿は私の存在に気付き、慌てて防御態勢を取ろうとした。

大きなオスが凶悪な角を振りかざし応戦してくる。

おそらく群れのリーダーなのだろう。

前脚を高々と上げ、ものすごい勢いで振り下ろされてくる角を少し退いてギリギリでかわすと、一気に踏み込んで勝負をつけた。

そこからは固まって守りに入った鹿をただ斬るという作業にとりかかる。

ここまで力の差があるとなんだか少し悪いことをしているような気にもなったが、相手は魔獣であるということを思い出し、冷静に仕事を終わらせた。

「ふぅ……」と息を吐いて刀を鞘に納める。

そんな私の元にマロンを乗せたリルがやってきて、

「ねぇねぇ、鹿のお肉って食べないの?」

と聞いてきた。

「食べてもいいが、不味いぞ?」

「そうなんだ……」

「なぜだろうな? 普通の鹿はちゃんと処理すれば美味しいのに、鹿の魔獣となると途端に不味くなるんだ」

「ということは食ったことがあるのか?」

「ああ。研修期間の時、非常食の確保の仕方として習ったからな」

「それはご愁傷様じゃったな」

「ああ。できれば二度と食いたくない」

そんな話をしつつ鹿の魔獣を処理し、次の目的地に移る。

私たちはその後も、適当に魔獣の相手をしつつ、薬草の群生地を確認して回った。

森に入って十日ほど。

そろそろ帰路に就かねばと考え始めた日の午後。

遠くにワイバーンの群れが飛んでいるのを発見する。

(見てしまったからには対処したいが、追っていくには遠すぎるな。今回は諦めるより仕方ないだろうか)

と思っているとマロンが、

「特別に手伝ってやろう。おびき寄せて地面に落とすところまではやってやるでの。あとは自分でなんとかせいよ」

と申し出てきてくれた。

「助かる」

と答えて少し先に進む。

ちょうどよく開けた草原を見つけたので、そこで、マロンに、

「頼む」

と声を掛け、私はゆっくりと刀を抜いた。

集中して全身に魔力を巡らせていく。

マロンはいかにも面倒くさそうにリルの背中から降りると、軽く伸びをしてから、

「うにゃーん」

とまるで猫のような鳴き声を上げた。

けっこうな魔力が波紋のように広がっていく。

(はたして何をしてんだろうか?)

と思っていると、遠くにいたワイバーンがこちらに近づいてきた。

「ほれ。来たぞ。準備はよいか?」

「おう」

「では落とすぞい」

マロンがそう言うと上空から私たちを狙うようにゆっくりと旋回していたワイバーンがいきなり悲鳴を上げ真っ逆さまに落ちてきた。

一瞬呆気に取られる私にマロンが、

「ほれ。はよせんか」

と声を掛けてくる。

私はハッとして気を取り直し、落ちたワイバーンに向かって駆けていった。

落ちてきたワイバーンをよく見れば翼にいくつか穴が開いている。

(あの距離をあの一瞬で決めたのか……。やはり神獣というのは人間の常識の通じない世界で生きているんだな)

と改めて畏敬の念を持った。

そうこうしている間に次々とワイバーンが落ちてくる。

落ちたワイバーンはジタバタと地面でもがいていたが、やがて態勢を立て直し、こちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。

大きなかぎ爪の突いた翼が大きく振り回される。

私はそれを正面から相手にし、一刀のもとに両断してみせた。

痛そうな叫び声を上げるワイバーンに飛びかかりさらにたたみかける。

いかにも強靭そうな足を斬り、倒れたところで心臓の辺りを一突きした。

そうやってまずは一匹仕留める。

すると後ろで急に魔法の気配が強まった。

慌てて横に転がるようにして逃げる。

パッと起き上がってみると、先ほど私が倒したワイバーンの腹に大きな穴が開いていた。

(危ないところだったな。まさか魔法を使う個体が混じっていたとは……)

そう思いつつ、まずはその魔法を使う個体に狙いを絞る。

私が速度を上げ、斬りかかっていくと、その個体はまた口を大きく開け、魔法を放ってきた。

私も渾身の魔力を刀に込め、その魔法を迎え撃つ。

すると魔法同士が空中でぶつかり合い、ドカンッ! とけっこうな音を立てた。

その衝撃にワイバーンが怯んだ隙を逃さず懐に踏み込む。

私は軽く飛び上がりながらワイバーンの首に狙いをつけると、一刀でそれを両断した。

パッと周囲を見渡すと残りは三匹。

よくよく感じてみるとどの個体も高い魔力を持っている。

どうやらこの群れはどれも魔法を使う個体によって構成されていたようだ。

(ちっ。よりによって厄介なのを……)

そう思いつつも私はまた全身に魔力を循環させ、集中を高めていった。

徐々に研ぎ澄まされていく感覚がワイバーンの魔力の高まりを感じ取る。

私は落ち着いて刀に魔力を回すと、飛んできた魔法を一刀のもとに切り裂いた。

返す刀でこちらも刀から魔力を解き放つ。

ほのかに青白く光る魔力がまるで刃のような形で飛んでいき、ワイバーンの首を落とした。

次に向かう。

また飛んでくる魔法を今度は速さでかわし、ワイバーンの懐に入った。

素早く回転しながら刀を振るう。

ワイバーンの足が切れ落ちた。

痛そうな悲鳴を聞きつつまた首を狙う。

そこへ後ろから翼の攻撃が襲ってきた。

おそらく破れかぶれに放った一撃なのだろう。

私はそれをとっさに身を屈めて避け、その反動を利用して高く飛び上がった。

空中でひらりと一回転し、そのままワイバーンの首めがけて落ちていく。

落下の勢いを借りた一刀は難なくワイバーンの首を落とし、私は最後の一匹に向かっていった。

バタバタと乱暴に振り回される翼の攻撃を正面から迎え撃ち、両方の翼を落とす。

そうなるとワイバーンは何もできず、最後の意地とばかりに魔法を放とうとしてきた。

大きな隙ができ、それを逃さず懐に入る。

そして私は素早く刀を振り下ろすと、そこで勝負が決まった。

「ふぅ……」

軽く息を吐いて、刀を納める。

「わっふ! お疲れ様!」

リルが楽しそうに笑いながらじゃれついてきた。

「ワイバーンのお肉は美味しいから持って帰ってみんなで食べような」

「やった! ワイバーン初めて!」

「ああ、そういえばそうだったな。よし。じゃあ今日は一足先にステーキで味わうか」

「わっふーん!」

喜ぶリルをわしゃわしゃと撫で、マロンに視線を送る。

「ふっ。まぁまぁじゃったぞ」

「ありがとう。おかげで楽させてもらったよ」

「うむ。感謝のしるしに一番いい肉を出せ」

「了解だ」

そう言って、マロンのことも軽く撫でてあげると、私はさっそくワイバーンから肉を切り出す作業にとりかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ