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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第三部

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お姫様とから揚げ定食01

ややのんびりとした通常任務から戻り、家路に就く。

(今回はなんだかんだで実りのある任務になったな)

と思いながらまずは裏庭に向かい、勝手口から台所を訪ねた。

「ただいま帰りました」

「あら。おかえりなさい。お疲れ様でしたね」

「いえ。通常任務でしたので、それほどでもありませんよ」

「そう? それなら良かったわ。すぐに離れでお風呂の準備をさせますね」

「ありがとうございます。今日の夕飯はなんですか?」

「あらまぁ、ユーリったら。ふふっ。今日はカルボナーラよ」

「それは美味そうですね」

「ええ。とってもいいチーズをもらったの」

「わっふ! 僕、あれ、好き!」

「はっはっは。リルはなんでも好きじゃのう」

「だって、ハンナさんのお料理全部美味しいんだもん」

「あら。ありがとう。じゃあ、ユーリはお風呂に入ってきなさい。リルちゃんとマロンちゃんはおやつを用意してあげますからね」

「やった!」

帰還の挨拶を済ませ、いったん離れに戻る。

風呂の準備をしてくれたメイドに軽く礼を言うと、さっそく風呂を使わせてもらった。

どっぷりと湯船に浸かり、

「ふぅ……」

と満足の息を漏らす。

今回も無事に帰ってきたことを思いほっとしながら少し長めに風呂を堪能し、任務の疲れを十分に癒した。

楽な服に着替えて母屋に向かう。

家族のリビングに入ると、マロンとリルが美味しそうなクッキーを食べていた。

「ジャムクッキーか。いいな。私にもひとつくれ」

と言ってクッキーをつまむ。

側にあったティーセットから少し渋くなった紅茶を注ぐと、またほっとひと息吐いた。

そこに学校帰りのノンナがやって来て、

「あ。美味しそうなの食べてる。私にもちょうだい」

と言いすかさずクッキーに手を伸ばす。

「こら。ちゃんと手を洗ったのか?」

と窘めると、

「もう。お母さんみたいなこといわないでよね」

と言われてしまった。

その後ノンナが自室に着替えにいき、再び三人でクッキーをつまむ。

そうこうしているうちにカイゼルさんも帰宅してきたので、みんなして食堂に移動した。

カルボナーラの濃厚な味に家族全員が舌鼓を打つ。

「やっぱりチーズが美味しいと味が違うわね」

「うん。でも、お母さんが作るのならどんなチーズでも美味しくなるんじゃない?」

「そんなことないわよ。やっぱりカルボナーラはチーズが決め手だから」

「そうじゃな。しかし、この濃厚な味わいの中には繊細な仕事のあとがうかがえるぞ?」

「あら。マロンちゃんったらグルメさんみたいなことを言うのね」

「わしは正真正銘のグルメじゃぞ」

「うふふ。そうだったわね」

そんな会話がすこぶる楽しい。

私はみんなと同じく微笑みながら絶品カルボナーラを口に運んだ。

食後。

話題はアナスタシア様訪問の件になる。

「アナスタシア様のご訪問が正式に決まったぞ。三日後だ」

「まぁ。それじゃあ急いで準備しなくちゃいけないわね」

「アナスタシア様はあくまでもいつも通りの我が家の食事をご所望だ。特別な準備はいらないだろう」

「それもそうね」

「ああ。普段通りの我が家の食卓を堪能してもらおう」

「でも、さすがにドレスは着ないとだめよね?」

「まぁ、それはそうだな」

「あはは! それってなんだかおかしくない?」

「ん? どこがだ?」

「だって、みんな正装して食べるのがから揚げ定食なのよ? なんだかとってもおかしいわ」

「ははは。それはそうだな」

「うふふ。言われてみれば妙な感じね。じゃあ私はドレス姿で揚げ物をするってこと?」

「ふっ。それはいかにも珍妙だな。しかし、それも我が家らしくていいのかもしれん」

そう話してみんなが笑い、ひとしきり笑い終えたところで、その日の夕食が終わった。


離れに戻り、リルと戯れる。

「きゃっふ! カルボナーラ美味しかったね!」

「ああ。そうだな」

「また食べたいなぁ」

「きっとまた美味しいチーズが手に入ったら作ってくれるだろう」

「明日がいい!」

「いや。いくらなんでもそれはないだろう。続けざまになったらありがたみが薄くなるぞ?」

「くぅーん。でも、食べたいなぁ」

「ははは。気持ちはわからんでもないな。あの濃厚な味は癖になる」

「そうじゃな。あのまったりとしてもちもちの麺に絡むソースの絶妙なことよ。さすがハンナと言わざるを得んな」

「うー。そんな話してたらお腹空いてきちゃったよぉ」

「おいおい。もう寝る前だからダメだぞ?」

「くぅーん……」

少しうなだれるリルを慰めるように優しく撫で、

「さて。そろそろ寝るか」

と声を掛けた。

「わっふ! 今日はみんな一緒に寝る!」

と言って頭を擦り付けてくるリルに、

「いいぞ」

と答える。

マロンも軽くため息を吐きつつも、どこか楽しそうに、

「仕方ないのう」

と言ってリルに合わせてくれた。

「えへへ。やった!」

そう言って寝室に向かい、同じ布団に入る。

甘えてくるリルを撫でてやりながら、軽く目を閉じると、私は自然と眠りに落ちていった。

そして三日後。

いよいよアナスタシア様訪問の日がやってくる。

と言っても私は午前中で仕事を切り上げ、午後からやってくるアナスタシア様をカイゼルさんと一緒にお迎えするだけなので、あまり緊張することなく詰所に出勤していった。

午前中で仕事を切り上げ、家に帰って簡単に昼食を済ませる。

ハンナさんとノンナはさっそくお茶菓子や夕食の準備に取り掛かるため、さっそく台所に向かっていった。

(本当にドレス姿で調理をするんだな。それはそれで大変そうだ)

と思いつつこちらはのんびりとして待つ。

そして、カイゼルさんが戻ってくるといよいよアナスタシア様を出迎えるべく、正装で玄関に立った。

やがて王室の馬車がゆっくりと近付いてくる。

二頭立ての豪華な馬車を見て、

(あれで旅をしたらさぞかし快適なんだろうな)

と妙なことを考えていると、私たちの目の前で馬車が止まった。

執事のキーナンがすかさず馬車に近寄り、扉を開ける。

私たちは最敬礼でアナスタシア様を迎えた。

「本日は私のわがままをかなえてくださってありがとうございますわ」

にこやかに話しかけてくるアナスタシア様にカイゼル様がかしこまりつつも少し柔らかい表情で、

「とんでもございません。ご訪問くださり光栄に存じます」

と伝える。

「うふふ。楽しみにして参りましたよの」

と微笑むアナスタシア様をさっそく我が家に招き入れると、さっそくリルとマロンが待つサロンへと向かった。

「リルちゃん。マロンちゃん。こんにちは」

「わっふ! アーニャ、こんにちは!」

「うむ。よう来たのう」

「本日はお招きいただきありがとう」

「なに。たいしたもてなしはできんが、ハンナの料理を堪能していくといい」

「ええ。とっても楽しみだわ」

リルとマロンがいることでアナスタシア様が砕けた笑みを浮かべる。

そこへハンナさんとノンナがお茶とお菓子を持って現れ、さっそく挨拶を交わした。

「本日は美味しそうなサクランボが手に入りましたので、フレッシュタルトにいたしました」

「まぁ、とっても美味しそうですわ!」

「お夕飯もありますから食べ過ぎないでくださいましね」

「あら。それは難しい注文だわ」

と軽く冗談を言い合い、和気あいあいとしてお茶の時間が始まる。

私とカイゼルさんは一歩下がった椅子に座り、楽しそうに話す女性陣を微笑ましく眺めた。

最近アナスタシア様がダンスを習い始めたという話に、ハンナさんが、

「私もこの家にお嫁にきたからにはと思ってダンスを習ってみたんですけどね。それがどうにも上手くいかなくて、諦めてしまいましたのよ。先生曰く、このまま続けていたら踏まれ過ぎて足がダメになってしまうということらしかったですわ」

と答えると、ノンナが続き、

「その点で私は完全にお母様の血を受けついでいますわ。だって学校で一番ダンスの成績が悪いんですもの」

と言って笑いを誘う。

そんな楽しいおしゃべりが続いていた時、ふとアナスタシア様が、

「そう言えば、ユーリさん。あのドレスのご本とっても面白かったですわ。ありがとう存じます」

と私に話題を振ってきた。

「それはようございました。たまたま見つけた時に、これはきっとアナスタシア様がお気に召すだろうと思ったので喜んでいただきなによりにございます」

「あら。あれは私のことを思って買ってきてくださったの?」

「ええと、まぁ、そうなるでしょうか?」

「うふふ。嬉しいですわ」

「恐れ入ります」

「あのご本には昔の流行もたくさん紹介されておりましたけど、今見てみると斬新なものもあって、ついつい夢中で見てしまいましたの。おかげで王宮の衣裳部屋から古いドレスをいくつも出してきてもらうことになったんですのよ」

「それほど気に入っていただけたのですね。たまたま発見できて大変ようございました」

「ええ。またユーリさんに素敵な贈り物をもらってしまいましたわね。私お礼がしたいのですけど、ユーリさんはどんなものがお好きなのかしら?」

「どうぞ、お気になさらないでください。私は食べることと剣術以外にとんと趣味のない無味乾燥な男ですから、とりわけほしい物というのがないのです」

「そうなんですの? でもそれは寂しいですわね。ああ、そうですわ! でしたら代わりにリルちゃんとマロンちゃんに贈り物をいたします。リルちゃん、マロンちゃん、なにがいい?」

「うーん。食べ物じゃなくって?」

「うむ。この場合そうなるじゃろうな。ちなみにわしはなんでも構わんぞ」

「あら。それじゃあ何を選んでいいかわかりませんわね……」

「ははは。この子達も私同様食い意地しか張ってませんからね」

「まぁ、ユーリ様ったら。でも本当に困ってしまいますわね……」

本当に悩ましげな表情で考え込むアナスタシア様にハンナさんが助け舟を出す。

「それなら、いっそのこと手ずからクッキーなどをお作りなってお贈りになってはいかがです? よろしければご一緒にお作りしましょう。きっと楽しいですわよ」

それを聞いたアナスタシア様はパッと目を輝かせて、

「それは素敵ね! 是非、そうしましょう」

と言ったが、すぐに少しうつむき、

「ああ、でも私料理なんてやったことがないから心配ですわ。大丈夫かしら?」

とハンナさんに上目遣いの視線を送った。

「大丈夫ですわ。私もご一緒しますし、失敗してもよいのです。心のこもったものならきっとみんな喜んで食べてくれますよ」

「そうですの? では、私、挑戦してみたいです!」

「ええ。是非ご一緒しましょう」

「うふふ。楽しみですわ。いつにいたしましょう?」

「そうですね。私はいつでもかまいませんけど、王宮のお台所を借りられるかどうかの確認がいりますから、その辺りは少し打ち合わせみますわ」

「よろしくお願いいたしましてよ?」

「ええ。もちろんでございます」

そんな話でアナスタシア様とハンナさんが一緒にクッキーを作ることが決まる。

すると、そこにメイド長のミリーがなにやら声をかけてきた。


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