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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第二部

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庭師とマンティコア04

思いっきり魔力を込めた一刀をマンティコアに叩き込む。

反対側からはカイゼルさんも同じような攻撃を繰り出していた。

そこにまたラッツさんの矢が降り注ぐ。

マンティコアがまた咆哮を上げた。

(効いている。しかし、浅いのか)

そんな感想を持ちつつ、続けざまに次の一刀を出そうとする。

しかし、そこで横から妙な気配を感じた。

すかさず退く私に代わってコーエンさんが飛び込んでくる。

どうやら尻尾の攻撃がきていたらしい。

サソリのようないかにも毒々しい尻尾の攻撃をコーエンさんが受け止める。

「いったん退け! 魔法、来るぞ!」

短い指示にうなずき、いったん退く。

するとまたマンティコアが咆哮し、大きな火魔法を放ってきた。

ノルドさんが受け止めるが、かなり押されてしまう。

その隙を突いてカイゼルさんが渾身の一刀を放った。

「グオォォッ!」

初めてマンティコアが痛そうな声を上げる。

私はまた攻め込んで追撃しようとしたが、マンティコアはすかさず上空に逃げた。

「今のは効いたみたいっす! 動きが鈍りました」

そう言いつつラッツさんがまた魔法の矢を放つ。

無数に飛んでいく魔法の矢を受け、マンティコアはいかにも嫌そうな声を上げた。

「徹底して翼を狙え! 嫌がって襲ってくるはずだ」

ノルドさんから指示が飛び、ラッツさんが「おう!」と答える。

ラッツさんの矢がマンティコアの右の翼に集中する。

マンティコアは明らかにそれを嫌がって左に旋回した。

「続けろ!」

その指示でラッツさんがさらに狙いを絞って攻撃していく。

すると先にしびれを切らしたのはマンティコアの方だった。

また咆哮しながらこちらに降下してくる。

私は先に前に出てノルドさんとコーエンさんがその突進を止める瞬間を狙った。

思惑通り動きの止まったマンティコアに一太刀浴びせかける。

詰まったような手応えがあり、マンティコアの皮膚がさっと切れた。

(いった!)

ようやく攻撃が通ったことにほっとしつつさっと身を引く。

すると予想通り尻尾の攻撃がきた。

今度は余裕をもってかわし、ついでとばかりに尻尾を斬りつける。

「カキン!」と乾いた音がして尻尾の一部がはじけ飛んだ。

(意外と硬いんだな)

と呑気なことを思いつつ一歩踏み込んでまたマンティコアに一撃を加える。

先程付けた傷をなぞるように刀を滑らせると、今度はざっくりと皮膚が切れた。

「よっしゃ! たたみかけろ!」

ノルドさんの指示でラッツさんが矢の雨を降らせる。

マンティコアは嫌がってまた上空に飛び上がろうとしたが、翼を広げた瞬間、その右の翼に魔法の矢が集中して降り注いだ。

どうやらラッツさんはこの瞬間を狙っていたらしい。

「よっしゃ!」

という声が上がる。

マンティコアが一瞬ふらつき、その隙を逃さずカイゼルさんが一太刀入れる。

カイゼルさんの一刀がどうやらマンティコアの腱の辺りを傷つけたらしい。

マンティコアがつんのめるように体勢を崩す。

私はその隙を逃すまいと思いっきり右の翼を斬りつけた。

翼は体よりも若干柔らかく出来ていたらしい。

その皮膜がざっくり切り裂かれ、その皮膜を支えていた部分にまで傷がつく。

「グオォォッ!」

今度こそマンティコアが確実に苦悶の声を上げる。

そこからは熾烈な地上戦が始まった。

振り回される尻尾から放たれる毒を避けつつ、マンティコアの体を削っていく。

時々放たれる魔法はノルドさんとコーエンさんがしっかりと受け止めてくれた。

その合間を縫うようにラッツさんが魔法の矢でしっかり牽制し、また私とカイゼルさんが、体を削りにいくという攻撃が続く。

そんな戦いが一時間近く続いただろうか?

そろそろラッツさんの魔法が限界を迎え、ノルドさんとコーエンさんもきつそうにし始めたころ。

ふらつくマンティコアの隙を狙ってカイゼルさんが、

「ぬおぉっ!」

という気合の声と共にマンティコアの尻尾を両断してみせた。

そこで一気に趨勢が決まる。

ノルドさんとコーエンさんが最後の力を振り絞るようにしてマンティコアの動きを止めると、私は全身の魔力を刀に注ぎ、渾身の一刀を放った。

刀から一気に魔力が放出される。

その魔力は一筋の光となってマンティコアの首に吸い込まれていった。

マンティコアの首がゆっくりと落ちていくのを見て戦いが終わったことを知る。

私は冷静に一歩下がりマンティコアの巨体が倒れてくるのを避けた。

ドサッというよりもドシンと音がしてマンティコアの巨体が横たわる。

ゆっくりと息を吐き、刀を納める私のそばにカイゼルさんがゆっくりと歩み寄ってきた。

「強くなったな……」

そう言うカイゼルさんの顔はどこまでも優しく慈愛に満ちている。

私は少し照れながらも、まっすぐにカイゼルさんを見つめ、

「ありがとうございます」

と微笑んで応えた。

ノルドさん、ラッツさん、コーエンさんも側に来て、

「よくやった」

「ああ。すげぇもん見せてもらったぜ」

「まったくだ。お疲れさん」

と声を掛けてくれる。

私はみんなと硬い握手をかわし、

「ありがとうございました」

とお礼の言葉を述べた。

「さて。素材の回収は後にしてとりあえずお茶にしようぜ。疲れてしょうがねぇ」

「そうっすね。なんか甘い物ありますか?」

「おう。キャラメルナッツがあるぞ」

「少しください。もう、魔力が限界っす」

「ああ。今回はけっこうこき使っちまったな」

「ほんとっすよ」

と話すノルドさんとラッツさんに続き、少し離れた木陰でお茶の用意を始める。

お茶の用意をしながらミントキャンディーがあったのを思い出したのでお茶請けにみんなに配った。

「スッとしてて美味ぇな。どこで買ったんだ?」

「エメルシスの市場です」

「ほう。あの国にもこんなに美味いものがあるんだな」

「はい。自然の味を生かした料理が多い国ですから、こういうのは意外と美味いんですよ」

と言いつつミントの爽やかな味と紅茶を楽しむ。

私の横ではリルとマロンがおやつ欲しさにやってきて、

「ユーリ、かっこよかったよ!」

「うむ。最後のは良かったが、あれくらいいつでもできるようにならんといかんぞ」

とそれぞれに戦いの感想を言ってきた。

「ああ。これからも精進するよ」

と苦笑いで答え、マロンの頭を軽く撫でる。

それを見ていたリルが羨ましそうにしていたので、リルの頭もワシャワシャと撫でてあげた。

「今日はハムエッグ丼にしましょう。なんとなくガッツリ食べたい気分なんで」

私がそう言うと、まっさきにカイゼルさんが、

「いいな」

と反応してくる。

他のみんなも口々に賛成の声を上げてくれたので、私は微笑みながらハムエッグ丼の材料を取り出した。

「じゃあ、ユーリが飯を作ってる間にあらかたのバラしをやっとくぞ。本格的な解体作業は明日にするから、もうひと頑張りしてくれ」

そういってノルドさんが腰を上げる。

「どれ。私も手伝おう」

と言ってカイゼルさんも立ち上がると、みんなして倒したばかりのマンティコアの方に歩いていった。

それを笑顔で見送り、米を炊き始める。

野菜スープも作り、ハムエッグを焼き始めると、私の腹がついにこらえきれなくなって鳴った。

そんな私の横でリルが、

「僕、ご飯いっぱいがいいな!」

と言って甘えてくる。

私はそんなリルを撫でてやりながら、

「今日は全員大盛りだろうな」

と微笑みながらそう言った。

ゆったりとした早春の風に乗ってどこかから花びらが迷い込んでくる。

花びらはリルの頭の上に舞い降りた。

(春だねぇ……)

のんびり思いつつ、リルの頭の上についた花びらを取ってあげる。

また私に甘えて頭をこすりつけてくるリルを撫でてあげつつ、私は米の炊け具合をみた。

ほんのり香ばしい香りと甘さが混ざって私の鼻腔をくすぐってくる。

つやつやとして美味しそうな米を見ていると、また私の腹が鳴った。

「そろそろできますよ!」

とみんなに声を掛ける。

「おう!」

と答えるみんなの声を聞き、私はそれぞれの丼にご飯をよそい始めた。

赤く輝く西日に照らされ、輝くご飯にハムエッグをドンと乗せ、ソースをたっぷりかける。

そこへみんなが戻ってきた。

「お。美味そうだな」

「そうそう。仕事の後はこういうのなんすよ!」

「違いねぇ」

「ユーリの飯にハズレはないからな」

「ほれ。そろったら早よ食うぞ」

「わっふ!」

みんなそろったところで、「いただきます」の声を揃える。

ついさっきまで血なまぐさかった戦場に笑顔の花が咲いた。

(やっぱり飯は大切なものなんだな)

そう思って頬を緩める。

そんな私の元にまたどこかから花びらが舞い込んできた。

(春だねぇ……)

再びそう思って丼飯を大きなひと口で頬張る。

甘く香ばしい米とソースの味が私の口の中を幸せでいっぱいにしてくれた。

みんなも同じように幸せそうな顔をしている。

私はそれを見て心から感謝の念を抱いた。


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