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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第二部

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庭師と御前試合02

エルダートレントの木刀を中段に構え、フェルドさんと向き合う。

当然、隙はなかった。

(さて。これは攻めづらいぞ……)

と思い落ち着いて魔力を練っていく。

集中し丹田に魔力を集中させていると、なんとフェルドさんの方から攻めてきた。

猛烈な勢いの突進に少し焦りつつも、その突進の勢いを借り、さっと空中に逃げる。

着地と同時に追撃してくるフェルドさんの斧をギリギリでかわし、さっと距離をとった。

「どうした。攻めてこないのか?」

というわかりやすい挑発に軽く笑みで答える。

私はまた木刀を中段に構えると落ち着いて魔力を練り始めた。

一気に高まった魔力を全身に巡らせ、ひとつ呼吸を整える。

そして私は一気に攻勢に出た。

防がれるとはわかっていたがまずは袈裟懸けに木刀を振り下ろす。

フェルドさんは当然盾でそれを防いできた。

普通ならここで退くところだろうが、あえて踏み込みフェルドさんの胴を狙った。

おそらく速さで勝ったのだろう。

その一撃がフェルドさんの胴を捉えかける。

焦ったフェルドさんは斧でその一撃を防ぎにきた。

(よし。かかった)

そう思って瞬時に木刀を引きつつ腰を落として足払いをかける。

さすがにそれに引っかかるフェルドさんではなかったが、

「おっと……」

と言って大きく体勢を崩した。

地面を這うように踏み込んで下段から鋭い一閃を放つ。

その木刀は確実にフェルドさんの腰の辺りを捉えた。

「カツン……」

木刀が防具に軽く当たった音がして、

「そこまで!」

の声がかかる。

私は木刀を引き、一歩下がるとフェルドさんに向かって一礼した。

「……おいおい。まじか……」

そう言うフェルドさんに苦笑いを見せる。

その苦笑いにフェルドさんも苦笑いを返し一礼すると、そこで試合が終わった。

「……なんだあれは?」

「あれが我が国自慢の天才剣士です」

「いやはや。ああも簡単にドワーフの防御を崩すとは、恐れ入りましたね」

「わっふ! ユーリが勝ったね」

「うむ。当然の結果じゃろうな」

「マロン様のおっしゃった通りになりましたね」

「ああ。あやつの実力ならこんなものじゃろう。ちなみに、まだ本気は出しとらんぞ」

「なっ! あれで本気ではないと?」

「うむ。やつの本気はあんなもんじゃないわい」

「それは……」

「なるほど。さすが神獣様がお認めになっただけのことはありますね」

「ふっ。次の試合が楽しみよのう」

「……ははは。もう結果は見えているようなものですがね」

「じゃあ次はまたエイクですね。エイク! 出番ですよ!」

「はっ!」

エメローラさんの呼びかけにエイクさんが応じて二試合目が始まる。

私はまた闘技場の中央に移動すると、木刀を中段に構え、静かに魔力を練り始めた。

まずは相手を見据えて動かずにいる。

するとやはりエイクさんが先に動いてきた。

鋭い一閃が胴の辺りを通り過ぎていく。

あえてギリギリでかわしたが、その一撃のあとエイクさんは踏み込んで下段から剣を跳ね上げてきた。

またギリギリでかわす。

その後もエイクさんは手を休めることなく攻め続けてきたが、私はそれをあえてギリギリでかわしていった。

十回ほど打ち込みをかわしただろうかというところで、反撃に出る。

鋭い勢いで繰り出されてきた袈裟懸けの一撃をさっと横から出した木刀でスッと滑らせるように受け流し、その流れのままエイクさんの首元に木刀を軽くそわせた。

「そこまで!」

の声に木刀を引き、一歩下がる。

私の目には驚きの表情でこちらを見るエイクさんの姿が映っていた。

「エイク」

というエメローラさんの呼びかけでハッとしたエイクさんが一歩下がって一礼する。

私も礼を返し、緊張を解いた。

「やはりこういう結果になりましたか……」

「うむ。当然じゃな」

「うーん。うちの代表はエイクではなくエメローラにすべきだったかもしれませんね」

「ああ。うちも団長を出すべきだった」

「うちは庭師長を連れてくればいい試合になったかもしれませんね。ただ、今回はいろいろな理由があってユーリを選ばせてもらいました」

「ほう。その理由を聞いても?」

「ええ。いわゆる実績作りというやつです」

「なるほど。ということは?」

「ええ。そのうち時期を見て」

「なるほど。たしかにあの逸材は手元にがっちり収めておきたくなるものです」

「ええ。うちにとって森が生命線なら、それを守る彼もまた然りということです」

「将来が楽しみですな」

「まったくです」

やっと試合が終わったことにほっとして全身の力を抜く。

「いい経験をさせてもらいました」

そう言ってまずエイクさんに握手を求めると、苦笑いで、

「ああ。こちらこそだ」

と言われた。

続いてこちらに近寄ってきたフェルドさんとも握手を交わす。

「いつかうちの団長と勝負してやってくれ。おそらくいい勝負になると思うぜ」

そう言うフェルドさんに軽く苦笑いを返し、

「そういう日が来ればいいですが……」

と答える。

その後は見物していた王族一同に礼をして全てが終わるはずだったが、そこでエメローラさんが、

「大公閣下。お願いがあるんですが、いいですか?」

となにやら急に申し出た。

「なんだい?」

穏やかな微笑みを浮かべながら問い返す大公にエメローラさんが、

「私もユーリさんとやってみたいです」

ととんでもないことを言う。

私はただ驚いてエメローラさんの方を見たが、エメローラさんはいかにも優しげに、

「うふふ」

と微笑みかけてきた。

「マルシウス殿、どうですかな?」

「ユーリさえ良ければ受けましょう」

「では、ユーリ。受けてくれるかい?」

という流れでなんとなくこちらに話が向いてくる。

私はなんとも言えない気持ちで、

「……かしこまりました」

と答えることしかできなかった。

「うふふ。楽しみですわ。よろしくね」

と微笑みながら軽い足取りで闘技場の中央に進んで行くエメローラさんの後を苦笑いでついて行く。

(エイクさんが怪物だと言うんだ。間違いなく強敵だろう。しかし、ここまできたらやるしかない。ここはひとつ腹を括るか……)

そう思って私は軽く息を吐くと、一礼してエメローラさんと向き合った。

「準備はいいですか?」

「いつでもどうぞ」

「では始めます」

そう言ってエメローラさんが剣を抜く。

どうやら得物は細剣のようだ。

その構えを見た瞬間、私は、覚悟を決めなければいけないと直感的に思った。

(カイゼルさんかそれ以上か……)

そう思って木刀を八相に構える。

油断なく魔力を練り一気に集中を高めると、さっそくエメローラさんが動いた。

恐ろしい速度で迫ってくる剣をなんとかいなし、こちらも軽く木刀を出す。

しかし、それはいとも簡単に弾かれ、追撃がやってきた。

(くっ……)

心の中で軽く唸りエメローラさんの剣を弾く。

しかし、エメローラさんは攻撃の手を休めず、次から次に細剣を繰り出してきた。

(このままではじり貧だ……)

そう思って木刀に思いっきり魔力を込める。

そして、エメローラさんが次の攻撃に移ろうとする一瞬の隙をついて渾身の一刀を打ち込んだ。

スッと受け流され、神速というにふさわしい速さで胴を狙われる。

私はとっさの判断でくるりと回ると少し慌てて距離をとった。

「さすがにエメローラが押してますね」

「ええ。これは少し功績作りを焦りすぎたかもしれません」

「ふっ。よく見ておれ。ここからが本番じゃぞ」

「なに? ここから先があるのか?」

「うむ。お互いにな」

「……」


いったん距離をとってさらに魔力を練る。

(隙を見せればやられる……)

そう思って私は集中力を高めていった。

おそらくエメローラさんも同じことを思っているのだろう。

恐ろしい勢いで魔力を増大させている。

私はなんとも恐ろしいものだと思いつつも、負けじと魔力を高めていった。

しばらく睨み合いの展開が続き、エメローラさんが先に動く。

私はそれを受けず、あえて同じように突っ込んでいった。

闘技場の中央で打ち合う展開になる。

神速とあだ名されるほど素早い剣に負けないよう、私も思いっきり速度を上げて対抗した。

やがて私の視界の端がぼんやりとかすみ始める。

私はただ、エメローラさんの動きだけに集中し、その一撃一撃を確実に捉えていった。

そしてだんだんエメローラさんの動きがゆっくりと見えだす。

(ああ、あの状態か……)

そう思った私は、思い切って剣を下段に構えた。

その構えを見てエメローラさんが、踏み込んでくる。

私は素早く突き出されてくる剣をくるくると回りながらギリギリでかわし続けた。

やがてエメローラさんに一瞬の隙ができる。

おそらく攻め疲れだろう。

その隙に私は下段から跳ね上げるような一刀を叩き込んだ。

やや焦って引いたエメローラさんがわずかに体勢を崩す。

私はそこを見逃さず攻勢に出た。

横なぎの一閃から踏み込んで逆袈裟の一刀を放つ。

エメローラさんはそれをギリギリでかわしたが、さらに体勢を崩した。

さらに踏み込んだ袈裟懸けの一刀がエメローラさんの細剣を押す。

私はそこで押し切らず、あえて力を緩めると、スッと腰を落とし横なぎの一閃を放った。

「カツン」と音がして勝負が決まる。

私の木刀は確実にエメローラさんの胴を捉えていた。

「あはは。まいりました」

という声が聞こえて、木刀を引く。

一歩下がって礼をすると、私は今度こそ全身の力を一気に抜いた。

「恐ろしい速さでした」

そう言う私にエメローラさんが、

「速さで後れを取ったのは初めてです」

と苦笑いで言ってくる。

私も苦笑いしながら握手を求めると、エメローラさんはいつも通り「うふふ」と微笑んで手を握り返してきた。


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