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最強「庭師」ユーリの任務録 ~天才剣士は今日も「日常」を守るために働く~  作者: タツダノキイチ
第二部

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庭師と新しい刀01

季節は秋の初め。

実りの季節に町が浮き立ち始めた頃。

武器屋のゴードンさんがいつものようにふらりと詰所に顔を出してきた。

「おい。一応できたから見に来てくれ。あと、ついでに木刀も作っておいたから、受け取りにきな」

「わかった。すまんが、この書類だけ書かせてくれ。急ぎらしいんだ」

「おう。表でエリカの嬢ちゃんとくっちゃべってらぁ。なるべく急げよ」

「すまん。お茶でも飲んで待っててくれ」

そう言われてすぐ書類の整理に取り掛かる。

書類の内容は単純で例のトレントが残していった素材の回収状況を記す報告書だったが、何しろ森には大量のトレントが炭になって残っている。

どこで、どれだけ取れたかメモを見ながら書き写すだけでもけっこうな時間を取られていた。

なんとか書き終わり事務室を出る。

受付で本当にエリカさんとお茶を飲みながら世間話をしていたゴードンさんに、

「すまん。待たせたな」

と軽く謝ると、ゴードンさんは軽く私を睨み、

「おう。さっさと行くぞ」

と言いさっそく席を立って詰所を出て行った。

「そういうことだから、少し出てくる。書類は机の上にあるから確認しておいてくれ」

「はい。いってらっしゃい」

エリカさんにそう言い残してゴードンさんの後を追う。

道々話す限りではなかなかのものができたようだ。

刀の出来について話すゴードンさんの顔がいつもより少し自慢げに見えた。

ゴードンさんの店に着き、メイベルさんへの挨拶もそこそこに店の裏にあるちょっとした庭に出る。

そこで初めてゴードンさんの手から刀を渡された。

「前のやつより少し重たいはずだ。まぁ、お前さんの力なら問題ないだろう。あと、埋め込んである術式をずいぶん増やしたからな。魔力の通りが全然違うはずだぜ。うちのかかぁが丹念に作ったからなかなかの出来だ。最終的な確認をしたいから軽く振ってみてくれ」

そう言われて刀を鞘から出し、まずはまじまじと見つめる。

黒光りする刀身が印象的なその刀は、なるほどゴードンさんの言う通り、以前とは比べ物にならないほど魔力を持っていかれる感覚があった。

(こいつ、なかなかのじゃじゃ馬だぞ……)

と思いつつ軽く魔力を込め、いつもやっている型通りに振ってみる。

(なるほど、少し重たくなった分、これまでよりも威力のある斬撃が繰り出せそうだ。あとは魔力の操作を誤らないようにしないとな。少し力を込めただけでもとんでもないことになりそうだ……)

そんな感想を抱きつつ、振り返ってゴードンさんを見る。

ゴードンさんはいかにも納得といった感じで、私に、

「どうだ? なかなかだろ?」

とドヤ顔でそう言ってきた。

「ああ。なかなかどうして。とんだじゃじゃ馬だ」

苦笑いでそういう私を見てゴードンさんが、

「はっはっは! なに、お前さんくらいの化け物にはお似合いのじゃじゃ馬さ」

と豪快にそういってさもおかしそうに笑う。

私も釣られて軽く微笑みつつ、

「ありがとう。家宝にするよ」

と応じた。

その後、

「ほれ。おまけの木刀だ。大丈夫だろうとは思うがくれぐれも折らねぇようカイゼルにも言っておいてくれ」

とどこか満足そうな顔をしながら言ってくるゴードンさんからまるで象牙で作りでもしたかのように真っ白な木刀をもらい、なんともほくほくしながら詰所に戻った。

事務室に入り書類の続きを片付ける。

それが終わり、そろそろ帰宅しようかというころになってノルドさんが事務室にやってきた。

「おい、ユーリ。新しい刀ができたらしいな」

「ええ。さきほどもらってきました」

「なるほど。じゃあ試し斬りついでに森に入ってくれ。新入りが中層にある草原地帯でモルフォスの群れを見かけたらしい。経験の無い魔獣だったからその場は退いてきたらしいが、あいつらは放っておくと草を食いつくすからな。そのままにしておくわけにもいかん。けっこうな数がいるらしいから、そうだな……、ラッツ、ライナ。一緒にいってくれ。問題はあるか?」

「ないっす」

「はい。大丈夫です」

「よし。じゃあ決まりだ。三人でたんまり肉を取ってきてくれ」

「了解です」

「おう。よろしく頼むぞ。ああ、肉は帰ってきたら煉瓦亭に卸してくれ。そうすればみんな好きな時にたんまり食いにいけるからな」

「へへへっ。そいつぁいいや」

「ええ。楽しみです」

「まぁ、軽い運動だと思って適当にやってくれ。ついでに奥の様子も確認してこいよ」

「わかりました。なにかあれば対処してきます」

「おう。頼んだぜ」

「はい!」

そんな話で牛の魔獣モルフォスを狩りにいくことが決まる。

私たちは話し合いの結果、明日の昼から森に行くことにし、その日は早々に帰宅させてもらった。

帰宅するとさっそくそのことをみんなに伝える。

「モルフォスのステーキかぁ。いいなぁ」

「ああ。あれは普通の牛肉より脂が甘いからな。王宮でもなかなか食べられない逸品だ」

「役得もありますから、少し持って帰ってきますよ」

「やった! 一番美味しい所をお願いね!」

「ああ。シャトーブリアンをくすねてこよう」

「あらあら。じゃあ、腕に寄りを掛けて焼かないと」

「ふっふっふ。わしらは現地ですき焼きにして食うぞ。醤油と砂糖を忘れずに持っていけよ」

「わっふ! すき焼き大好き! 明日が楽しみだね!」

そんな話をしてその日の夕食も楽しく進んでいった。

食後、カイゼルさんに刀の礼を言い、木刀ができたことを伝える。

「帰ってきたら訓練に付き合え。その木刀の威力を確かめたい。それにエルダートレントで作ったのなら魔力のノリもいいはずだ。通常の刀ほどではないにしろ、それなりの威力があるだろうから、制圧戦の訓練にはちょうどいい。覚悟しておけよ?」

そんなことを言われ、苦笑いで「かしこまりました」と応じるとカイゼルさんはどこか嬉しそうに微笑み、

「ようやくお前と本気で打ち合える日が来たんだな……」

と何とも感慨深げにそう言った。


翌朝。

市場に出向き、食材や調味料を軽く調達する。

いったん家に戻りハンナさんが作ってくれたみんなの分の弁当を受け取ると、明るい笑顔で、

「いってきます」

と告げ、軽い気持ちで詰所へと向かっていった。

「お待たせしました」

「いや。こっちも今来たところだ」

「お肉、楽しみですね!」

「おいおい。飯を食いに行くんじゃないんだ。気を抜くなよ?」

「ははは。砂糖と醤油の準備はしてきました」

「お! ってことはすき焼きか?」

「ええ。マロンからそういう要望が出ています」

「うむ。モルフォスと言えばすき焼きじゃろう。ほれ、さっさと行くぞ」

「ああ。みんなで楽しく美味しいお肉を食べよう」

「わっふ! 楽しみだね!」

そんな話をしてさっそく馬車に乗り込む。

私たちは、ガタゴトと揺れる馬車でハンナさん特製のおにぎりを食べながらのんびりとした気持ちで森へと向かっていった。


翌日の昼過ぎ。

いつもの村に着き、馬車を預けてから森に入っていく。

「なんだかんだでラッツさんと組むのは久しぶりですね」

「そういえばそうだな。モルフォスの前にゴブリンあたりがいたら一度連携の確認をしておくか?」

「そうですね。少し回り道になるかもしれませんが、積極的に探しましょう」

「お二人の連携、ちょっと楽しみです」

「なに。そんなたいそうなもんじゃないさ」

「ああ。いつも俺らがやってる動きがちょっと速くなるだけだからな」

「……それはすごいですね。あれよりさらに速くなるんですか?」

「ああ。ユーリのやつはバカみてぇに速ぇからな。こっちも合わせるのに必死さ」

「それを言うならラッツさんの矢の多さもけっこう大変なんですよ? たくさん飛んでくる矢の位置を予測しながら動かなくちゃいけないんですから」

「……それは本当に見てみたいです」

そんな話をしながら歩いていると、半ば常設になっている野営場所に着いた。

「さて。今日はポトフにしますよ。肉屋でいいベーコンをしこたま仕入れてきましたからね」

「いいな。じゃあこっちはパスタの準備をしておくよ」

「あ。ソースは私が作ります。最近アラビアータの作り方を覚えたんで」

「ほう。小娘もついに料理に目覚めたか」

「えへへ。きっとユーリさんの影響ですね」

「ご飯が美味しいと元気がでるもんね!」

「そうだな。今日も美味しいご飯を食べて明日に備えよう」

「わっふ!」

まるでキャンプにきたような感覚で話し、それぞれが作業に取り掛かる。

ちらりと見たライナの手つきはまだおぼつかないところもあったが、それでも楽しそうに料理をしているのが伝わってきて、なんとも微笑ましい気持ちになった。

楽しく夕食を作り、みんなで談笑しながら食べる。

本当に遊びでキャンプをしにきたような気持ちでみんなが楽しく過ごし、その日の夜は更けていった。


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