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異世界召喚の選択基準

「Yo!カズ!異世界召喚って、ナニ基準でチョイスされてんの?」


 午前1時。時間を全く考えてない相手。やつかと思ったら案の定だった。 

 アメリカの学生寮からテンション全開で語りかけてくる、オタク考察マシンことダニエル・リヴァース。


「知らん。っていうか、作品によって全然違うだろ。」


「ソレな!でも、クラシックなSummon a Her(勇者召喚)oスタイルだと、才能あるとか異能モチとかがデフォじゃん?」


「まあ、召喚された時に特典として付与されるパターンが多いよな。でも、最近は付与されたのがなんだかわからなくてハズレ扱いされた後で工夫して活かす系のほうがウケてる印象ある。」


「テンプレ崩しね、I love that(そういうの、超好き)trope!

でもさー、選ぶ時って条件あるワケでしょ?召喚対象検索エンジン的なモノがあってさ、チカラ:MAX、レア度:UR、容姿:美形とか指定できたり?」


「お前、また変な漫画読んだだろ。」


Read it(読んだし), watched (観たし)it, overanaly(考察もした)zed it! 『対象検索エンジンがバグったら、ナニカが来る』とかマジありえそうでしょ?」


 やれやれ、また始まったか――とは思いつつも、話が面白そうなので聞いてみる。


「For examp(例えばさ)le, 最強だけを検索条件にしたら、召喚されるのって別に人間じゃなくてもよくね?」


「まあ、そうかもな。人間って指定がなけりゃ、対象は広い。」


「でしょ?だったら――超巨大な怪獣とか来てもおかしくないわけよ。ほら、どっかの怪獣王とか外なる神様みたいなヤツ。」


「そんなもんこの世界にいねーよ。」


「でもパラレルワールド的なとこに繋がってたら?召喚エンジンって基本時空の壁突破してるもんだろうし。」


「いやそりゃそうなんだが。雑すぎるだろ、そのシステム……」


「この世界限定にしてもオーストラリアの砂漠で使われてるような無人超大型重機が召喚されるとかもアリじゃね?アレなら街の一つや二つ潰せるぞ!」


「最強っていうより、制御不能じゃねーか……だいたいそういうのは魔力とかなんかのリソースが足りないって設定されてるだろ。」


「じゃあ、人間サイズに限定するとして、liquid-me(液体金属)talでできた殺人アンドロイドとか。フツーの人間よりよっぽど強いヨ。」


「お前またターミ○ーター見ただろ……」


「1.2見てどれに分岐させるかで次見るのを決めるのって神の視点でたのしくない?」


「ねーよ」


「でもさ、あれ外見は完全に人間じゃん?召喚陣が人型かどうかだけで判断してるシステムだったら、スルーで通るよな?」


「『人間に見えます』→Yes→召喚成功って、ザルすぎだろ。」


「ザルにしかできないだろ。正直なところ俺から見たらHow can (どうやって)they tell(人間かどうか) who's hum(見分けてるのか)an? が全くわからない。そもそも人間の定義って曖昧じゃね?それにAIとか義体とか、境界線ゆるいの多いじゃん。」


「人間とは何か、か。哲学はやめとけ。アレは本気になると一般生活簡単に踏み外すからな。」


「よくわかってる。ヤツのことだろ。最後にインドでヒッピーしてるところまでは連絡来てたけどいまなにやってるのかなあ。」


「元気でいるといいが……」


思わず共通の別の知人を思い出してしまった。


「That asid(それはそれとして)e, だったら、意思も姿も持たないけど最強なものまで範囲広げたら――」


「……嫌な予感しかしない。」


Virus(ウイルス)とか、来ちゃうんじゃね?」


「……は?」


「見た目も声もないけど、致死率100%、感染力MAX、空気感染アリ。潜伏期間は余裕の2週間。召喚陣はちゃんと光ったけど、誰も現れなかった――ってさ。」


「……それ、召喚っていうか災厄だろ。」


「But you kn(でもさ)ow?異世界サイドは『What?Noth(なぜ何も)ingcame out(出てこない)?』ってフリーズしてんの。んで時間空けて調べて次の策をどうしようかってしてるうちに、多分召喚したときに一番近くにいた召喚術者が倒れて――

 で、数日後には王都まるごと壊滅。住民は『呪いだ!』とか叫びながら逃げ惑うけど、もう誰にも止められない。」


「やめろ。笑えない。」


「異世界って基本No防疫だし、飛沫感染とか概念があるかも怪しいじゃないか。」


「いやでも、治療魔法とかあるだろ。万能じゃなくても、毒とか病気にはある程度効くはず。」


「そこだよ。

 仮にもこいつは異世界転生したHero(勇者様)として召喚されてんだぜ?」


「……まあそうだな。検索エンジンに引っかかったんだから。」


「そう。下手すると、召喚特典で魔法への耐性とか持ってんの。最強認定だから俺らの世界では認識できないけど元々ついてたのかもしれない。

 あらゆる浄化を弾く、魔法無効のウイルス。――もう、勇者っぽくない?」


「勇者っていうか、もはやラスボスだろそれ……」


「それどころか、魔法に反応して活性化するタイプかも。

 治癒魔法を使うほど症状が悪化するって、超絶嫌がらせ仕様。」


「やめろ、そういう設定どこかの二次創作で読んだ記憶ある……」


「でさ、ウイルスとかの概念が存在する世界ならワンチャン対策されるかもしれんけど――

 そうじゃない場合、The ritua(儀式が)l failed(失敗した).ってことにされるよな?」


「まあ……召喚陣光ったのに誰も現れなかったら、そうなるか。」


「そう。で、国中が絶望のムードになるわけよ。

 だって、勇者召喚って最後の切り札じゃん?それが空振りだった時点で、もう完全に詰んでる。」


「……まあ、基本そこまで追い詰められてからの召喚だもんな。」


「召喚は失敗した。それでも、敵――テンプレの魔族でいいか。は、すぐそこまで迫ってる。

 だったらもう、I guess I ha(自棄になるしか)ve no choi(ないじゃん)ce but to go reckless.この一戦に人類の未来がかかっている!ってさ。

 全軍動員して、突撃準備だ!って盛り上がって――」


「……その間に?」


「バタバタと、倒れ始める。咳き込み、発熱、意識混濁。誰も理由がわからないまま、軍も民も崩れていく。

 気づいた時にはもう止めようがない。Nothing le(人類)ft of mank(全滅)ind.」


「……自業自得って言っていいのかな。」


「そして魔族側は――なぜか無傷。

 たぶん代謝構造が違うとか、そもそも感染対象外だったんだろうな。

 だから、人類だけが勝手に滅びたのを見て、めっちゃ困惑してるはず。」


「ポカーン、だな。」


「……Wait a seco(いや、待てよ)nd.」


「ん?」


「一応、召喚って魔族へのCountermea(対抗手段)sureとして起動してるはずじゃん?

 ってことは、検索エンジン側も魔族に効くものを選んでる可能性、あるよな?」


「……その発想はなかった。」


「でしょ?

 だから、最初に倒れたのは人類だけかもしれんけど――

 その死体に触れたり、食ったりした魔族側に、ゆっくり感染が拡がっていってさ……」


「おいおいおい、実体のある魔族すらも壊滅ってことか?」


「いや、召喚特典で非実体系にも有効になってるかもしれん。

 精神生命体系の上位魔族まで全滅。

 『The Soul Dev(魂喰いの王)ourer』とか名乗ってたやつが、喰った直後に物理的に崩壊とかさ。めっちゃ効いてる。」


「ちょっと待て。転生特典は後付け便利設定じゃねえぞコラ。」


「えー?異世界チート特典のContextual (文脈的)optimiz(最適化)ationってやつだよ?ユーザーの世界観に合わせてバフ調整されるんだって!」


「だからそれが後付けって言ってんだよ!! そもそもなぜ人類を滅亡させる! 魔族にだけ悪影響で人類には無害なウイルスでいいじゃねえか!」


「カズ, you're a gen(天才)ius! その発想は全くなかった!」


「最初からそうしろよ! 召喚エンジンもそういうのにしておけよ!」


「じゃあ、ウイルスは人類に対しては共生関係を結ぶって設定にしてさ、 魔族に入った瞬間だけ毒性を発揮。細胞構造を分解し始めるとかどう?」


「都合良すぎるだろ! っていうかもうそれ、兵器じゃねーか!」


「召喚特典でちゃんと魔族特効タグつければproblem sol(問題なし)ved!」


「タグで済ますな!!」


「ほら、魔族限定pandemic(パンデミック)って響き、ちょっと厨二っぽくてよくない?」


「ダメだこいつ、楽しんでやがる……」


「ここまでは、さっきまで考えてたネタなんだけどさ。カズと話してて思いついた。

 召喚者って、 coming ba(魔王を)ck once he (倒したら)beats the Demon(帰ってくるだろ) Lord, yeah? 」


「待て。言いたいことはわかるけど、聞きたくない。」


「あっちの世界でThe virus t(文明を)hat ende(滅ぼした)d an er(ウイルス)aがこっちに帰ってきたら――どうなると思う?最初の有害なのはいいや。魔族特攻のやつだとしても、あっちで変異した後こっちで無害な保証はないだろ?」


「……それ、もうSFホラーの域だぞ。」


「現代に戻ってきたら元々人類には無害なんだからZero immu(免疫ゼロ)nity、だから爆発的に広がる。

 でも最初はただの風邪みたいな症状で、誰も気にしない。病院行っても原因不明、CT撮っても異常なし。」


「で、気づいた時にはもう――ってパターンか。嫌なリアリティあるな。」


「異世界帰還ウイルス。通称E.R.V.(Extra Return Virus)――そのうち論文出るよ。」


「やめろ、それっぽい略称つけるな。」



 通話を切ったあと、なんだか妙に眠れなかった。


 考えてみる。

 ウイルスが異世界に召喚されたとしても、こっちの世界の誰も気づかないだろう。

 でも――もし、帰ってきたとしたら?


 中世のペスト。スペイン風邪。エボラ出血熱。新型コロナ。

 突発的に現れ、世界を揺るがせたウイルスたち。

 あの中のどれかが、かつて異世界で文明を滅ぼした帰還者だったとしても……

 たぶん、誰も気づかない。


 そして今度戻ってくるそれが、もう少しだけ人類にとって致命的だったとしたら――。


 ……うん。

 手洗いうがいは、ちゃんとしておこう。

書きためたネタが尽きました。また思いついたら続けます。

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