寂夜
物寂しい―――
ふと、そんな気持ちになった事など、ございますでしょうか
私にとってのそんな気持ちを、表してみました
またもや駄文で申し訳ないのですが、ちょっとだけ付き合って頂けませんか?
独りでいるのが、寂しい―――
そんな感情は、疾うの昔に忘れてしまっていた
その女を思い出す度に、
共に過ごした時間が、もう手に入らない事を思い知らされる度に、
この心は砕かれてゆくからだ―――
その男は、心の慰めに、花を愛した
鳥を愛した
風を愛した
月を愛した
その心を、感動を、この世に残したいと思った
ふと、そう考えた
男は、筆を執り始めた―――
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死ぬまでに何文字書けるだろうか
ただ、美しい言葉のみを残したい
私が誰かに継いで貰いたいものは、これなのだ
男は短編を書いた
花を愛した男の物語だ
これは、心から求めた相手に求められなかった男、
そんな悲しい男の話だ
どこの誰の話だ?
そんな事は、聞かないで欲しい
私の古傷に障る
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飼っていた猫―――
産まれて1ヶ月も経っていない頃に母が拾い、私に与えた
17歳と数ヶ月
長く生きた方だ
今でも、外で猫の声がすると縋りついてしまう
お前だよな
帰ってきたのか?―――
そんな筈は、無い
だとしたら、この目の前の遺骨は、どこの猫だ
この冬まで、ほんの数ヶ月前まで、私の足元で寝ていたのだ
今はもう、夢の中にしかいない
こんな気持ちまで、いつか私は忘れてしまうのか―――
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今も、船の仲間達は元気なのだろうか?
かつて、私は漁師だった
全霊の力を以って、網に繋がるロープを引き寄せた
一歩間違っていれば死んでいた
そんなものを、何度も、何度も味わった
その度に仲間達に救われ、同じように仲間を何度も救った
死と隣り合わせの恐怖と闘いながら、我々は笑い合って仕事をしていた
我々の絆は、ダイヤモンドのように硬いものだった
私は、怪我をしてしまった
もう元の体に戻る事は、無い
それが分かった時、船頭に、船を下りる決意を伝えた
「本当に、お世話になりました―――」
土下座とは、従うが故に行うものではない
心の底からの気持ちを、相手に伝える為に行うのだ
これから、今から、私はこの絆を断ち切らねばならない
涙が止め処無く、溢れた
今、酒を汲みながら、あの日々を思い出している
もし、もう一度戻れたなら―――
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賢知
正義
愛嬌
顔や姿は見るまでも無い
よく走るという事は、知っている
イベントに出演するという事も、知っている
男は、結果を導いた
この娘と幸せに暮らす
どうすれば、それが叶うか?
望んだ結果から現在までの過程を逆算し、男は愛する者を手に入れるに至った
既に死のうと思っていた男、天地万世はこの世にいない
この名を名乗る男は、愛の為に生きる男へと変貌した
今、何してますか?
寂しいんですけど、構って頂けますか?
ちょっとだけ、後ろから抱き締めても良いですか?
はやく、逢いたい―――
貴女を、愛しています