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第8話 アメリアの無謀な企み

 二人で寄り添っているうちに夜が明けた。

 洞窟の外から「陛下―!」と呼びかける声と複数の靴音が響いている。


(助けがきてくれたのね……)


 アシェリーは名残惜しい気持ちを堪えて、ラルフの胸から顔を上げた。少しウトウトはしたが、岩場と砂場であまり寝心地はよくなかったし、何よりラルフがそばにいたから緊張してなかなか寝付けなかった。

 ラルフも同じなのか、少し目の下にクマができている。


「陛下……そろそろ行かないと」


 そうアシェリーが声をかけると、


「……ああ、そうだな」


 ラルフはそう残念そうな表情で言うと身を起こした。そしてアシェリーに手を差し伸べてくれる。

 アシェリーは抑えきれない喜びに笑みを浮かべて彼の手を取った。


「こんな日がくるなんて嘘みたい……」


 自分は悪女で断罪される立場だったのに。


「俺も未だに実感が湧かない。絶対にお前と結ばれることなんてないと思っていたから……でも嫌な気分ではない。むしろ、とても幸せだ」


 そう言ってラルフはアシェリーの頬に落ちた髪をすくってくれる。そっと唇が落ちてきて、二人は影を重ねた。

 ──その時、何かが落ちるような音が洞窟内に響いた。

 アシェリー達が慌てて身を離すと、洞窟の入り口には兵士達とサミュエルの姿があった。先程の音はサミュエルが持っていた木の棒だったらしく、石の上で棒が揺れている。その場にいる者達は全員唖然とした表情をしていた。


「サミュエル!? あっ、こ、これは、その……っ」


 アシェリーがどうにか言い訳をしようと真っ赤になって何か言おうとしたが、サミュエルは自らの顔を片手で覆って手を振る。


「……もう察したよ」


 その時、救護班がラルフの元へ駆け寄ってきた。衣装はボロボロだったが体には傷一つなかったので安堵した様子だ。


「良かった。アシェリー様が一緒だったので、無事だったんですね」


「まぁな」


 ラルフがそんなふうに従者達とやり取りをしていた。

 手持無沙汰だったアシェリーはサミュエルに近付いた。サミュエルは困ったような顔で笑っている。


「……本当は、アシェリーの気持ちに気付いていたよ。でも付け入る隙を狙っていたんだ」


「サミュエル……」


「アシェリーが幸せなら、それで良い」


 サミュエルがそう言った時、アシェリーは背後から誰かに抱きしめられた。


「きゃっ……ラルフ!?」


 振り返るとラルフがいた。


「もう彼女を不安にさせることはない」


 なぜかラルフはサミュエルにそう宣言した。それが嬉しいのと同時に恥ずかしくて、アシェリーはラルフの手をぎゅっと握りしめる。

 サミュエルは苦笑して「……じゃあ、そうしてください。俺は陛下の代わりなんて務まらないから」と言うと、手をひらひらさせて去って行った。


(サミュエル……)


 アシェリーは心の中でサミュエルに感謝の気持ちを伝えた。

 ラルフに抱きしめられ、その温かさに身を委ねる。晴れ渡った青空が広がる中、アシェリーは幸せを実感した。

 ──しかし周囲の祝福するような生温かい視線に気付き、次第に居たたまれなくなってくる。

 アシェリーはラルフから身を離した。咳払いして話題を変える。


「ところで、聖女様はどうなるのでしょうか……?」


 アシェリーが崖から落ちたのはアメリアを助けるためだった。しかし、その直前に彼女がアシェリーにつかみかかったところをラルフに見られてしまっている。


(さすがに無罪放免とするわけにはいかないかも……)


 相手が聖女とはいえ、アシェリーはまだ王妃の地位にいることはラルフから知らされた。政教分離しているこの国では聖女より王妃の方が立場は上なのだ。アシェリーを害そうとしたなら捕らわれても仕方がない。


「どうやら、夜陰に乗じて逃げたようだ。兵士達が崖から落ちた俺達を捜そうと大混乱に陥っているうちにな」


 苦々しくラルフは吐き捨てる。

 アシェリーは呆然とした。


「逃げた……?」


(確かに素直に兵士につかまるような性格には見えなかったけれど……でも、いったいどこへ……?)


 アシェリーが悶々としていると、ラルフは顎を撫でながら言う。


「神殿か、聖女の養父がいるシュヴァルツコップ侯爵のところが有力だ。どちらにも使いを出す」


「……けれど彼らが簡単に聖女を引き渡すでしょうか?」


 胸に湧いた不安を押し隠して、アシェリーはラルフの胸に顔をうずめた。

 アシェリーの疑問に、ラルフはニヤリと笑みを浮かべる。


「俺に考えがある」



 ◇◆◇



(どうしてこんなことに……っ!)


 アメリアは夜の森を苦労しながら走っていた。途中で何度も転び、頬や手足に傷を作る。


(あの女が勝手に私をかばって落ちたのよ! 私のせいじゃないわ……! ラルフ様だって、あんな悪女を助けようとしなければ崖から落ちなかったのに……っ)


 きっと、二人は助からないだろう。そう思いつつも万が一生きて発見されたら、アメリアは元王妃暗殺未遂容疑で取り調べを受けることになるかもしれない。それは嫌だった。


(いや、考えたくないけれど……もしかしたら国王暗殺の疑いまでかけられてしまうかもしれないわ)


 でも神殿までたどり着けば逃げられるはずだった。


(私は聖女なんだから、神官達は命にかえても私を護るはずだわ……!)


 ラルフ達が亡くなっていれば、アメリアのしわざだという証拠はない。

 アメリアはアシェリーを殺すつもりではあったが、殺せなかったのだ。勝手に悪女がアメリアをかばって落ちただけ。アメリアが野営地からいなくなったことで犯行を疑われても、しらを切りとおせば済む話だ。

 街まで降りると、早朝から出ている辻馬車に乗って数時間かけて神殿に向かった。

 衛兵達はアメリアのボロボロの姿に驚いたようだった。

 アメリアは絶対に誰が来ても面会しないと告げて、豪華な食事をし、お風呂で体を磨き、ゆったりと広い浴槽に身を沈める。そうすると、あの森でのことが嘘のように思えてきた。


(まあ、ここにいたら安全よね。だって私は聖女だもの。この聖女の証がある限り、神殿は私を王宮に渡すはずがないわ)


 そう思いながら、アメリアは右手の甲にある聖女の紋章に触れた。それはアメリアを貧民窟から救ってくれたもの。神に選ばれたという証明だ。

 ──しかし、その紋章が昨日よりも薄くなっているような気がした。


「あら……?」


 見間違いかと思って目をこするが、紋章はみるみるうちに消えようとしていた。


「聖女様? どうなさいましたか?」


 その時、浴室でアメリアの体を洗う手伝いをするために控えていた女性神官が不思議そうに声をかけてきた。アメリアは慌てて右手を湯につける。


「なっ、何でもないわ! もう良いからここから出て行って!」


「しかしまだ汚れを落としておりませんが……」


「自分でやるから良いわ! 何度も言わせないで! この愚図!!」


 アメリアがそう叫ぶと、女性神官はきゅっと唇を引き結び深く頭を下げて出て行った。

 肩で荒い息をしながら、アメリアはそっと右手を持ち上げる。


「なんで……」


 昨日まで確かにアメリアには聖女の証があった。けれど、もう完全に消えてしまった。

 聖女の資格を失ったのだと気付いても、それを認めることはできなかった。


「い、いや……大丈夫。紋章の形は覚えているもの。部屋に同じ色のインクもあったはず。自分で描けば良いのよ……!」


 必要以上に人に見せないようにすれば疑われることはない。

 アメリアは急いで部屋に戻り、人払いをして手の甲に紋章を描いた。何度も形が崩れそうになりながらも記憶の中のそれを再現する。近くで見られたら危ういが、遠目には違いは分からない。これでもアメリアは前世で美術部員だったのだ。


「……で、できた。私は聖女よ……聖女なんだから……」


 アメリアの手は震えていた。青ざめた顔で、髪を掻きむしる。


「あの悪女のせいだ……っ! 私の未来を、あの女が壊したんだ!!」


 息荒く拳で机を叩きつけた時、遠慮がちに扉がノックされる。


「せ、聖女様。総主教様がいらっしゃいました」


「総主教様が!?」


 アメリアの顔が歓喜で輝く。

 総主教は神殿の最高位の老人だ。聖女であるアメリアを崇拝しており、神官達の信頼も厚い。


(やったわ、総主教様なら私の無罪を信じてくれるはず。悪女とラルフ様が生きていようが死んでいようが、もう心配いらないわ)


「お通しして」


 アメリアがそう言うと、総主教がたくさんの武装した神官達を連れて入ってきた。その物々しさに目を丸くする。


「総主教様、どうなさったのですか? とりあえず、おかけください。今お茶を……」


「いや、お茶など飲んでいる場合ではないからいらぬ」


 その言い方にアメリアはぎょっとした。彼はアメリアに対してこれまで丁寧な言動を欠かさなかったというのに。


「ど、どうなさったのです? 総主教様……何だかお怒りのご様子ですが……?」


 アメリアは内心苛立ちつつも、そう猫なで声で言った。総主教には味方になってもらわねば困るから下手に出たのだ。

 総主教は眉間に深いしわを刻んで、これまで聞いたことがないような重々しい声で言った。


「陛下が聖女の行方を捜している。大変なことをしてくれたな。王妃様に害をなそうとするなど……」


 その言葉にアメリアは目を剥き、事態を理解した。


(ラルフ様と悪女は無事だったのね……)


 ギリリと奥歯を噛んだ。


(死んでくれていたら死人に口なしで面倒もなかったのに……)


 それに味方してくれると思っていた総主教の態度にも腹を立てていた。今までは聖女だからとあんなにこびへつらっていたくせに。期待外れも良いところだ。


(いや、まだ私は聖女よ。万が一私の罪が暴かれたとしても、聖女である私の罪はそこまで重くされないはず。相手は嫌われ者の元王妃なんだから……)


 長い袖に隠れている紋章を片手で押さえるようにしながら、アメリアは汗を浮かべながら尋ねる。


「王妃様? それって、あの悪女のことですか? もう陛下とは離婚したから、ただの子爵令嬢でしょうに」


「いいや。お二人は離縁なさっておらぬ。巷では、なぜかお二人が離婚なさったと噂されているが……」


「え……? うそ……嘘よ、そんなの……!」


「本当だ」


 愕然とした。

 現王妃の殺害を試みたことを知られたら、一般人なら処刑は免れない。たとえ聖女でも、ただでは済まないだろう。

 アメリアは総主教にすがりついた。


「総主教様、私は何もしていませんわ! 信じてください!」


「……ならば、どうしてお一人で戻ってこられたのだ」


「それは……あんな場所にずっといるのが嫌になったからですわ。そのくらい別に良いでしょう?」


 事も無げにそう言ったアメリアを、総主教は苦々しげな表情で見つめる。


「……こちらの神殿で働く者達から、あなたの振る舞いが聖女にふさわしくないと聞いている。我が儘放題で、神官達に手を上げると」


「わ、私は上に立つ者です! 時には下の者を正すために必要なことですわッ!」


 叫ぶアメリアに、総主教は重々しくため息を落とし自身の顔を撫でた。


「なるほどのう……ワシは聖女の証に目が眩んでおったようだ。正しいこととそうでないことの区別もつかないほどに」


「そ、総主教様……?」


 アメリアは嫌な予感を覚えた時、神官達に取り押さえられた。


「な、何よ! あなた達! 私を誰だと思っているの!? わたしは……っ!」


 地面にうつ伏せにされたアメリアに向かって、総主教は冷たく告げる。


「あなたは教会の権威を失墜させた。せっかく神からいただいた力を使わず、自分本位に振舞った。それゆえに神殿から追放を命じる」


「そ……そんな! 私は間違いなくヒロインなのに!! 落ちぶれるなら、あの悪女アシェリーのはずでしょう!? 総主教様も陛下もどうして、あの女を捕まえないのよ!? 皆して頭イカレちゃったの!?」


 そうわめくアメリアに、周囲を囲っていた神官達がざわめく。


「悪女って、王妃様のことをおっしゃっているのか……?」


「なんと不敬な……」


「王妃様、思っていたより気さくな御方だよな。俺、毎週治療してもらっているんだ」


「あっ、俺もだ! え、お前もアシェリー様のファン?」


「医療革命を起こしたんだよな。それで騎士団での死者が激減したらしい。偉大な御方だ」


「私も息子を王妃様に救われたんだ」


「民のために自ら街で慈善活動をなさっていらっしゃる……なんと素晴らしい心根だろう」


「悪女の噂は確かにあったが、真っ赤な嘘だったみたいだな」


「それに引き換え、うちの聖女は……」


 口々にそう言いながら白い目でアメリアを見る神官達。

 アメリアは狼狽した。

 人々の向けてくる視線がこれほど冷たかったことなどなかったのに。


「どっ、どうして!? 悪女はあの女よ! 皆騙されてるわッ! 聖女を捕らえるなんて天罰が下るわよ!」


 さすがにその言葉は敬虔な信者達には無視できなかったらしい。表情を強張らせている。

 総主教だけは肩の力を抜いて大きくため息を落とした。


「あなたを引き渡さなければ、陛下は宗派を変えるとおっしゃった」


「宗派を変える……?」


 ヴィザル教カトツリクがこの国で一番信じられている宗教の宗派だ。

 しかし同じ神を信仰しながらも解釈の違いによって生まれた別のヴィザル教の宗派もある。


「そう、同じヴィザル神を信仰する宗教は他にもあるゆえ。……しかし、そんなことをされては我がカトツリク教は大打撃だ。王族が信奉するという後ろ盾がなくなれば、信者も他の宗派に流れてしまう。そうなれば聖女がいてもいなくてもカトツリクは終わる」


「そ、そんな……」


 アメリアは呆然とつぶやいた。

 自分がいる聖女の地位がそれほど簡単に崩れてしまう土台の上にあると知らなかったのだ。

 総主教はアメリアを捕えている者達に「連れていけ」と命じる。

 ガックリとうな垂れたアメリアを神官達が引き連れて行った。




「……私は終わったの?」


 神殿の一室に監禁されたアメリアはつぶやいた。室内には誰もおらず鍵のかかった扉の外には見張りの神殿兵士がおり、窓には鉄格子が嵌っている。

 聖女の証を確認されなかったのは幸運だった。そうでなければもっとひどい待遇を受けていただろう。


「こんなの小説にはなかった……! おかしいわ!」


 苛立ち、扉を叩く。


「誰か! 私をここから出しなさい!! 私にこんなことしてタダじゃ置かないわよ! 髪の毛を一本一本抜いてハゲにして、指と足の爪を剥いでやるんだから!!」


 しかし扉の外にいる者は返事もしない。最初こそ「ご容赦ください」と申し訳なさそうに言っていた神殿兵士も、アメリアのしつこい暴言に嫌気が差したのか返事もしなくなった。

 アメリアが怒り狂っていた時、扉の外からバタバタと何かが倒れるような音が響いた。

 仰天して扉から退くと、間もなく鍵が開く音がして扉が開く。

 そこに立っていたのは養父ヴェルナー・シュヴァルツコップ侯爵とその執事フィリップだ。二人とも四十ほどの年齢だが、シュヴァルツコップ侯爵は細身で受ける印象は鋭利で冷たく、執事は鍛えられた体躯の大男だった。


「お義父様! 助けにきてくださったのですか!?」


 アメリアの顔に驚きと喜びが広がる。


(てっきり利害が一致しただけの冷えた関係だと思っていたのに。優しいところもあるのね!)


 シュヴァルツコップ侯爵は道端の潰れた虫でも見るような嫌そうな表情で言う。


「しくじったな。陛下を射止めると大口を叩いておいて、悪名高い王妃に負けるとは」


「わ、私だってあの悪女さえいなければ計画通りにできたんですよ」


 アメリアは慌てて言い繕ったが、シュヴァルツコップ侯爵からは凍った目で見られただけだった。


「まぁ良い。計画は変更する」


「……変更?」


 戸惑うアメリアは、その時にようやく扉の外に誰かが立っていることに気づいた。


「あっ、あなたは……」


 そこにいたのは王弟クラウスだった。


「なぜクラウス様がこちらに……」


 戸惑うアメリアに、クラウスが朗らかな笑みを浮かべて言う。


「どうやら、総主教は聖女であるあなたを軽んじているようだ。とても総主教の地位にふさわしくないから退任していただくことにした」


「退任……?」


 その不穏な響きにアメリアは眉を寄せる。


(まさか総主教様を殺して……?)


 それに思い至り血の気が引いたが、アメリアはブンブンと頭を振った。


(私を冷遇した者達だもの! 天罰を受けて当然だわ!)


「しかしなぜクラウス様が……」


 アメリアはそう疑問を口にする。

 クラウスはラルフの懐刀と言っても良いくらいの側近であり兄弟だ。ラルフとアシェリーに敵対しているアメリアにとって、決して味方とは言えない。


(原作では主人公がクラウス様に想いを向けられて三角関係になりそうなシーンもあったけど……)


 最後にはラルフと気持ちを確かめあって主人公は結ばれるのだ。クラウスは寂しそうに微笑みながらも「おめでとう」と二人を祝福したが、主人公を忘れられず放浪の旅に出る。その一途さに心打たれる女性読者も多い。


「ラルフ陛下は魔力は強いが、いつ暴走をしてもおかしくない爆弾を抱えている。幼少時は父上が兄上の魔力暴走を隠ぺいした。王妃……母上は病気で死んだと噂されているが……事実は違う。兄上の魔力暴走に巻き込まれたんだ。いくら有能でも周囲をいつ危険に陥れるか分からないような者に従うことはできない」


 その淡々としたクラウスの物言いにアメリアは違和感を覚えたが、感情を映していない彼の瞳からは真意を読み取れなかった。

 シュバルツコップ侯爵はクラウスの肩を叩く。


「私はクラウス様を支援している。新しい総主教には聖女に忠実なものを立てれば良い。ヴィザル神にはもっと敬虔な信徒もいる」


 クラウスはうなずいた。


「頼りにしているよ、シュヴァルツコップ侯爵」


「……アメリア様も、私を支持してくれるなら悪いようにはしない」


 クラウスの言葉にアメリアは居住まいを正す。


「もちろんでございますわ、クラウス様」


 ラルフに似た面差しのクラウスに微笑まれて、アメリアは胸をときめかせる。


(そうよ! 別に結婚するならラルフ様でなくても良いわ。クラウス様が王位を得れば……そして見初めてもらえたら私は王妃になれるんだもの……!)


 聖女がクラウスの後ろ盾になる──神の名の元に彼に王位を授けると宣言すれば、それを無視できない民や有権者も出てくるはずだ。


(まだまだよ。私はやり直せる……! 私を馬鹿にしたラルフ様も悪女アシェリーも地面に這いずりまわらせて苦しめてやるわ)


 アメリアはクラウスに媚びを売るように笑みを浮かべて、そう無謀なことを企むのだった。



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2024年11月11日、書籍2巻が発売します! 読んでくださると嬉しいです!

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